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勇者?いやいや超越者でしょ!!  作者: 他仲 波瑠都
第2章
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甘さそれは弱さ

生き別れた兄弟との再会やてっきり死んだと思い込んでいた親しき友との再会は物語を熱くするための大事な要素だ。


ただしそれは一般的な話。


僕にとっては正直どうでもよくて。生きてたら良かったね。死んでたらどんまい。くらいの感想しか浮かんでこないんだ。


だからこんな状況になった際の正しい行動なんて僕は知らないから素っ頓狂な声を上げ、相手の出方を待つしかなかった。


「純一、純一!今までどこほっつき歩いてたんだよぉ!心配したんだぞ!」


涙と鼻水らしき液体で顔面ぐしゃぐしゃに濡らした瑛太が僕の肩をがっちり掴み割と強めに揺らしてくる。


汚いし、酔うしで辛いから辞めて欲しい。


「や、やあ。元気そうでなにより」

「おい答えてくれよ!お前がいなくて俺は・・・俺は!」


あれ?瑛太ってこんなにめんど・・・おほん。情熱的な人だっけ?


「どうどう。また今度ゆっくり話すからさ。とにかく瑛太も生きててくれて安心したよ」

「当たり前だ!俺は死なねえ!」


僕が瑛太を宥めているとその輪に割って入る女の子が。


「純一、すっごく心配したんだからね?それと助けてくれてありがと。こうやって話すのは久しぶりね」

「あっ、聖香もいたんだ。え、なに?みんないるの?」

「そうよ。私たちはパラディン王国の王様に呼び出された転移者みたいなの。それでねこの世界を救うために毎日王国で厳しい訓練をしてるのよ」


聖香は苦笑しながら言う。


あの頑張り屋の才色兼備の完璧美少女が言うのだから僕の想像を絶するほどの過酷な訓練なのだろう。


非常に興味の湧くその内容はひとまず後回し。


「へぇー、そうだったんだ」

「ええ、そのおかげで初めて戦場に来たけどまだ誰も死んでいないのよ」

「へぇー」

「ま、私はついさっき死にかけたけどね」


とお茶目に舌を出して笑う聖香に、遠巻きで僕たちを観察していたパラディン軍の兵士たちの顔にほんのり朱が差す。


ふっ、堕ちたな。


「瑛太ぁー。なんでそんなに泣いてって・・・佐藤くん!?」


新たに駆け寄って来るのは瑛太の彼女で陰キャな僕にも優しく接してくれるゆるふわ系女の子笹川さん。


「やあ笹川さん。瑛太と仲良くやってる?」

「う、うん、もちろん。私たちの仲は永遠だよ!でもほんとに良かった、佐藤くんが無事で。みんな心配してたんだよ?瑛太もこの通り・・・」


僕の肩に顔を埋めて涙と鼻水を流す瑛太を一瞥し言った。


僕のお気に入りの一張羅を汚していく彼氏を見て彼女は何を思うのだろう。


「笹川さん。とりあえず瑛太を引き剥がすの手伝ってくれない?」

「うん!」

「純一・・・純一!!」


いい加減鬱陶しいな。


なんだ、僕は君の恋人か?


君の彼女は目の前で若干引いてるこの子だろう。


「・・・ちょっと待ってて」


僕は話を中断すると懐に忍ばせていた鉛玉をある方向へ投げた。


「えっ?」

「はっ?ぐはぁ!!」


僕の放った鉛玉が魔兵を殺すのを躊躇していた誰かさんの横をすり抜けて、片腕を失い跪く魔兵に直撃。


すると魔兵の体内にめり込んだ鉛玉が爆発を起こす。


魔力をやや過剰に流したせいか魔兵の体は炎に包まれ、たちまちそこには魔兵の丸焼きが一つ出来上がった。


何の変哲もない鉛玉は微量の魔力を付与するだけでそれは大砲へと変貌する。


雑魚狩りにはとても便利な代物なため僕はアルテ王国で大量に仕入れておいたのだ。


「純一!?今のお前がやったのか?すげえよ!」

「佐藤くんってどこかで修行でもしてたの?」

「純一・・・かっこいい・・・」


僕は聖徳太子じゃないから三人同時に話しかけられても全部を聴き取れない。


その証拠に最後の聖香の呟きは僕には届かなかった。


「佐藤!」


殺すのを躊躇していた誰かさんが僕の名を荒々しく叫ぶ。


おや?派手派手な勇者感溢れる衣装を身に纏う彼は・・・


「俺だ!桜井だよ!」


これはこれは、The・イケメン陽キャクラスの人気者の桜井くんじゃないか。


「やあ久しぶり。元気にしてた?」


僕は努めて爽やかな挨拶をおくる。


「ああ、俺は元気だよ。お前も無事で良かった。・・・じゃなくて!俺が聞きたいのは今の行為についてだ!」


桜井くんは関西人だっけ?と錯覚するノリツッコミを見せてくれた彼。


「今の行為?」

「そうだ!なんで殺したんだ?あいつはもう俺が片腕を切って投降しそうな魔兵だったんだぞ!?」


桜井くんは僕に詰め寄り問いただす。


なぜ彼は怒っているんだ?助けたお礼を言われるならまだしも戦場で殺すなって。


「ダメなの?」

「は?」

「だから、なんで殺したらダメなの?」


彼の眉が吊り上がる。僕は脳内で彼の激おこ状態へのカウントダウンを始めた。


「お前、本気で言ってんのか?」

「うん」


3。


「殺すのが当たり前だと?」

「まあね」


2。


「投降しそうな兵士をか?」

「ですね」


1。


「ふざけんなあぁぁぁぁ!!!」


はい、大爆発。


桜井くんの怒声が辺りに響き渡り腰を抜かす情けない兵士やらガキの戯れかとため息をつく兵士。そしてぞろぞろと集まってくるのは元クラスメイトと思わしき者たち。


こら!見せ物じゃないぞ!


「お前は命をなんだと思ってんだ!魔族だからって戦う意思の無い奴を簡単に殺していい訳無いだろ!?」

「戦う意思?」

「そうだ!」

「桜井くんはこの戦争で何を見てきたの?」

「は?」

「魔族が人間を殺した後なにするか知ってる?僕は知ってるよ。彼らは冷めきった人間の死体を剣で刺してぐちゃぐちゃにして笑うんだ。心の底から楽しそうにね」


青ざめる桜井くんを他所に僕は話を続ける。


「それに僕が殺した魔兵はまだ投降してないでしょ」

「だ、たが!あいつの腕は既に俺が・・・」


彼は投降しそう、と言った。つまりそれは彼の主観での感想であり実際あの魔兵の目は死んでおらず、相打ちにしてでも桜井くんを殺そうと彼に隙が生じるのを虎視眈々と狙っていたんだ。


「逆に質問するけど。君は魔族が本気で腕一本斬られたくらいで諦めると思う?」

「腕を斬ってんだから痛みで・・・」

「そんなの興奮状態の魔族が痛みでいちいち怯んだりしないって」


第一アドレナリンドバドバなんだから腕を失ったとか関係ないでしょ。


「戦場でそんな甘い考えしてたら、いつか痛い目見るよ?」

「ぐっ・・・!くそっ!もういい!」


僕に論破されてばつの悪くなった彼は乱暴に剣を収めると一足先に馬車へと乗り込んだ。


「珍しいな桜井があんなにキレるなんて」

「うん、私も初めて見たかも」

「初めての戦争で疲れちゃったのよ、きっと」


思春期の男子生徒だからね。頭に血が上りやすい時期なのだろう。


失敗しながら成長してゆく。うん、若いっていいね。


そんな感じで雑談を始める僕たちの元へ一人の男が近づく。


「聞け、お前たち!なんでかわからないが魔族軍が引き始めた。これより城へと帰還する」


他の兵士とは少々異なる色の甲冑を着た隊長格的な男が僕たちに告げた。


魔族軍が退却するのはたぶん僕のせいだ。


合法的に戦闘が出来るとなってついつい夢中で殺し回ってしまったんだよ。


潰した部隊の数はだるくなって途中から数えるのを辞めたくらいだ。


「了解です!」


敬礼する瑛太。


「じゃ、行こうぜ!純一を連れていきたいなって思ってた場所めっちゃあるんだよ!」


と今度は砕けた言葉で僕に話しかける瑛太。


オンオフの切り替えが大変上手な彼は社会に出たら、みなから好かれて出世コースまっしぐらであろうか。


「それは楽しみだな」

「私も行きたい!」


聖香が食い気味に申し出る。


訓練でストレスでも溜まっているのかな?


「私も行っていいかな?」


笹川さんが視線をさまよわせ緊張気味に話す。


友人の彼女を無下に する訳にもいかないし、断る理由もないから僕はそれを快く了承する。


「もちろんいいよ」

「そんじゃ、馬車に乗ろうぜ?さすがに疲れた」

「そうね」


僕たちは良い気分で歩き出した。


しかし、それを邪魔する者が。


「待て。そこのお前」

「へ?」


威圧のある声で僕を呼び止める隊長格さん。


「お前にはいろいろと聞かねばならぬことがあるゆえ。王国に到着次第尋問を行い、終わったら王との謁見を行ってもらう」

「いえっさー」


これ拒否したら不味いやつだと悟った僕は素直に隊長格さんに従った。


「待ってください!なんで純一が連れてかれるんですか!?」

「ち、ちょっと!」


なかなか余計なことをしてくれる瑛太を僕はキッと睨んむ。


「なんで、だと?突然このような戦場に現れた素性の知れぬ者を、何の取り調べもせずに王国で過ごさせると思うのか!」


隠すことなく怒気を帯びた声の隊長格さん。


察するに特別な力を持つ僕たち転移者に自分のお株である武力で劣ってしまい嫉妬しているのだ。


その気持ちわからんでもないよ。


「お前たちは先に宿へ戻っているがいい」

「いや、俺たちも一緒に行きます。だって俺たちは純一のクラスメイトだから」

「鬼塚くんの意見に私も賛成します。彼は私の好き・・・大切な幼なじみなんです。聖女の私の願いを気無視するなんて出来ないですよね?それに、みんなも気になるでしょ?」


振り返ってクラスメイトたちに問いかける聖香。


彼らも満更では無い様子で「そうだな」とか「クラスメイトだもんね」とか言っている。


異世界のファンタジーな雰囲気に見事に流されるクラスメイトたちを横目に僕はため息をついた。

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