再会
僕の名前は佐藤純一、またの名を超越者・ウラノス。
僕は先日訪れたアルテ王国にて自己満の超越者活動を行った結果、見事その国を支配していた将軍・デュラを倒し、アルテ王国を五年にも及ぶ魔族の支配から解き放ったのだ。
誰も成し遂げなれなかった快挙に僕は国民から称えられ、敬われた。
で、国を発つ前夜に国民からこう言われたのだ。
ありがとう超越者・ウラノス様、と。
僕の全身に電気が走った。今まで生きてきた中での最上位に食い込む程の快感であったのだ。地球にいたボランティア団体の存在意義が少しだけわかったような気がする。何の見返りも求めずにただ人々の力になり、生活をもしくは人生をも支える団体。あの時はなんでそんな事するのか僕には理解出来なかったけど今ならわかるよ。
めちゃくちゃ気持ちいいんだ。手を差し伸べると、ほんの些細な手助けであっても、感謝され向けられる羨望の眼差し。
なんて言うかな?
自己肯定感が高められるような・・・うーん、表現しにくいけどそんな感じ。
僕の場合は超越者って言ってもらえたからだけどね。
とまあ、そんな具合で今僕は麒麟っていう新しく僕の従者となってくれた魔物の背に乗っかってパラディン王国を目指している最中だ。
ゼラルカちゃんが僕に渡す地図を間違えた事で運良く見つけた掘り出し物。
勇者専用伝説の剣改め、絶剣・グラディウス。
ラテン語で剣という意味。翻訳しただけでそのまんまだけど響きが超かっこいい。日本で授業中に僕がずっと考えていた、異世界で超越者の使用する武器名!案の中の一つを満を持して名付けた。
この剣はいずれ勇者が魔王討伐のために使うとか麒麟が説明してたけど勝手に持ち出して良かったのか。
いつか勇者が僕に返せと勝負を挑んできたらそれはそれで面白い。
でもね、ちょっと魔力流したら変形しちゃったから多分バレないと思うんだ。元の形からは見る影もない形状になってるし。
まぁ、イベントで勇者が必要!ってなった時に本気で困ってたらこっそり戻しておこう。
なんてぼんやりとした頭で考えていると麒麟が何度も僕の名を呼んでいることに気付いた。
「ご主人様!大丈夫ですか!」
鬼気迫る様子な麒麟。いったいどうしたというのだろうか。
「ん?僕はなんともないけど。そんな慌ててどしたの?」
「いえ、ご主人様にご報告がございましたのでお呼びしたのですが返事が帰ってこなく、振り返ったらご主人様の思い詰めた顔を目にしまして・・・取り乱してしまいました」
「そうなんだ」
基本的にいい子なんだけど心配性が過ぎるのが玉に瑕。
「それより報告って?」
「はっ!?そ、そうでした!わたしとしたことが。ご主人様、どうやらこの辺りで大規模な戦争が起きているようです」
「戦争?どこ対どこ?」
「あの魔力はパラディン王国軍と魔族軍のものと思われます」
戦争かぁー、どうしようか。
本来なら一刻も早くパラディン王国に行かないとリンスが怒るのと待ち受ける長ったらしい説教は正直だるい。でも僕はまだ戦争を経験してないからね、そそられるよ。
「迂回されますか?」
僕は悩んだ。悩みに悩んだ。で悩んだ末に回答した。
「いや、このままでいいよ。ていうか僕も参戦したい」
僕は欲望に負けたのだ。
だって人間だもの。人間とは欲望に忠実に生きる生き物だから仕方ない。
「流石はご主人様です!世界の平和を願い、自らの手で武器を納めさせるのですね!」
「うん?まぁ、そんな感じかな」
訂正するのもめんどうなので適当に肯定しておく。
僕は麒麟に指示を出して戦場へと向かってもらうのであった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
突然だけど私は今、戦争に来ている。
日本からこの世界にやって来て約二ヶ月が経った。その期間、私たちは基本的な戦い方、そしてスキルの使い方などを学び、来る対魔族との決戦の準備を入念に行っていた。
そんな中での急な魔族軍の襲撃。
近年の魔族軍との争いで疲弊しきっていたパラディン王国軍が頼りないとの事で、まだ実践演習を始めたばかりの私たちだというのに既にスキルを充分活用出来るとお偉いさんが見込んでの参戦決定らしいわ。
見切り発車もいいとこよね。
「おらぁ!殺してやる!」
「押せ押せ!」
「くっ!つ、強い!」
幾ら訓練をした、と言っても所詮は訓練に過ぎない。殺し合いには待った、や休憩、なんてのは存在しないのよ。敵は好機と見るやいなやそれを逃さずに仕留めに来てあっという間に戦場の命は散ってゆく。
みんなはそれなりに奮戦している方だと私は思う。実際わたしたちのクラスからは一人の死傷者も出ていない。
そんなわたしたちでも懸念材料がある。初めて対峙する魔族の正面から伝わる威圧感、死に対する恐怖心が凄まじくどうしても動きが硬くなってしまっているの。
二ヶ月前までは学生として青春を楽しんでいたわたしたちに、いきなり人外の者との殺し合いを求めるのはあまりにも酷くじゃない?
でもね中には例外、才能を持つ人もいるのよ。
まずは勇者スキル持ちの桜井くん。
「はぁぁ!」
勇者スキルの特性の一つ。
他者と比べレベルが上昇しやすい
を遺憾なく発揮して彼のレベルは既に40に到達している。
そしてもう一つの特性
勇者特有の剣技
これがまた凄いの。荒々しい剣さばきで相手を蹴散らす。その切れ味は鋭く、普通の剣でこれなのだから、いずれ入手すると王様から伝えられている勇者専用伝説の剣・ライゼンと呼ばれる剣を使えば彼はこの世界で敵無し状態になるんじゃないかな?
そして次が純一の親友、鬼塚瑛太。
彼のスキルは剣闘士。防御無視の攻撃特化型らしいの。
「ていやぁぁぁ!」
力任せに振り回しているように見えるけどその剣の威力は魔族の兵たちに劣らず力強い。
ちょっと不器用気味な彼にピッタリのスキルね。
次は鬼塚くんの彼女兼わたしの親友、笹川萌。
彼女のスキルはビーストテイマー。
魔物を使役して指示を出し戦うとても可愛らしいスキル。
ただし今はまだ使役する魔物が周辺にいないから今回の戦争ではわたしの補佐的役割を果たしてくれてる。
そして最後は聖女スキルの私。
《ヒール》
聖女の力で皆の傷を癒す。いわゆる後方支援ね。
後方支援は基本、敵と相対する機会は少なめでわたしみたいな魔族と言えど生き物を殺す覚悟の無い女のベストポジション。
純一がいたらどんなスキルだったのかなぁ?彼だったら・・・聖騎士とか。うん、似合うわね。それとも騎士と書いてナイト、とか!え、待って。めちゃくちゃイイ。我ながらセンス抜群!
妄想プラス後方支援で安全だと高を括り気を抜いていたわたし。
そんな慢心が危険を呼んだのかわたしは背後に忍び寄る魔の手に気付かなかった。
「聖香ぁ!危ない!!」
突然に萌がわたしの名を叫び危険を伝える。
「っ・・・!?」
何者かの気配を感じて振り向くと、 いつの間にかわたしの死角から迫って来ていた魔族が一気に距離を詰めて剣を振り上げていたのだ。
ああ、もうダメだ。
走馬灯のように脳内に流れる日本での友達との思い出、家族との思い出、そしてここに来てからの厳しい訓練、衝撃を覚える日々の記憶。
で、最後に浮かぶのは大好きな彼の顔。
「純一・・・会いたかったなぁ・・・」
わたしは目を瞑った。
が、いつまで経っても痛みはやって来ない。
恐る恐る目を開くと視界には真っ白なローブを着込んだ謎の青年がわたしを襲った魔族の首を跳ね飛ばしているシーンが映った。
「あ、あなたは・・・?」
助けてもらったお礼を言うのを忘れ、わたしは尋ねていた。
「ふっ、我は超越者・ウラノス。全てを超越し」
青年は低い声で言った。でもどこかで聞き覚えのある声だ。
「お前、純一か!?」
「へっ?」
フードを取って見えたのは、会いたくて会いたくて恋焦がれていた少し大人びた幼なじみの青年の顔であった。




