隣に立ちたい・・・とは?
魔族軍がこのアルテ王国の地に残していった爪痕は大きく深い。
五年前の侵略から始まり、国民のゾンビ化、王族の処刑。極めつけにデュランと決闘の末に破壊された街並み・・・は僕のせいか。
まあ、如何せんこの国はそしてこの国の民は街だけでなく心にも甚大な被害を受けたのだ。
そんな最悪の現状の中で、新たに国王の座に就く事になったゼラルカちゃん。国民は彼女への罪滅ぼしと言わんばかりの働きっぷりを見せる。それはもう馬車馬の如くって感じだ。
そして、なんでか知らないけど土木工事の知識に富んだジャルさんの元に皆が率先して集い、復興作業に精を出していた。誰のせいかは深く追求されなかったが街はどこもかしこも建物の倒壊、損傷が酷くかなりの長期戦になるみたい。なんでも完全に復興が完了するにはどんなに早くても最低二年はかかるとか、かからないとか。
そんな中でもゼラルカちゃんは再び国が一致団結しているようだ!と、とても喜んでいた。まだ若いけどこの国の女王になる子が喜んでいるのだから僕の感じる罪悪感は少しだけ薄れた。
もちろん、僕もそのままにして帰る訳にはいかず二、三日だけ手伝っていく事に。
そして常人の10倍の作業を終わらして遂にパラディン王国へと出発する日がやってくる。
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「本当に行ってしまわれるのですね」
「そろそろね。友人との約束もあるし」
「純一様・・・」
「この国で生活していく為のライフラインの整備は最低限終わらせておいたからさ。もう安心していいよ」
この先復興の道のりはとてつもなく険しいものになるだろうけど今のアルテ王国なら心配要らないだろう。それに一刻も早くパラディン王国へと行かないと、そろそろリンスが怖い。
「地図から食料までありがと」
「お気になさらず。あなたに対する私たちアルテ王国のお礼みたいな物ですので」
「なら、有難く受け取っておくよ。じゃあ、復興頑張ってね」
僕は彼女に別れを告げてアルテ王国の門を出る。
「純一様!!」
唐突に呼び止められる僕。
「ほんっとーうに!ありがとうございました!あなたは私の恩人です!」
大声で僕に感謝の気持ちを告げるゼラルカちゃん。
「恩人か・・・ちょっと違うな。この結果は君たちのアルテ王国を救いたい、という強い意志が成したものだよ。僕はほんの少しだけ手助けしたにすぎない」
僕は謙遜して良い人感を出す。超越者にはこういった地道に好感度、支持を稼ぐのは大切なんだよ。僕が理想に掲げる超越者とは、誰もが認める実力、加えて熱すぎずかと言ってドライすぎない人柄、周囲からの厚い人望を持つ実力者だからね。
と僕が打算的な考えをしているとゼラルカちゃんが熱い感情の籠った声色で話し始めた。
「自分の存在を否定され続けて、明確な夢を持てなかった私に生きる希望と夢を与えてくれた。私は私に生まれてきて良かった!」
「私を虐めてきた人たちには正直憎く思う気持ちもある。でもそれ以上にお父様、お母様そして私と友達になってくれたシズカちゃんとシズカちゃんのお父さんお母さん、私に優しくしてくれたジャルおじいさん。みんなが好きなこの国を私は導きたい!」
以前のように自信が無い彼女の姿はどこにも見当たらない。ただそこに立っているのは未来のアルテ王国女王、ゼラルカ・アルテその人だ。
さっきまでの僕を殴ってやりたい。彼女の芯のある熱意がこもった言葉に僕の小物感にも拍車がかかった。
「今はまだ世間知らずで未熟な私だけど・・・たくさん勉強して、魔法の練習もします。だから、だから!いつの日かこの国を背負って堂々と皆の前に立つ事が出来るような私になれたら・・・」
「その時は私があなたの、純一様の隣で・・・あなたの人生、夢を支えさせてもらう事を、お許しいただけますか?」
目尻に涙を溜めながら話すゼラルカちゃん。そんな彼女を見て僕は腕組みをし、考える。
人生、夢を隣で支える?
つまりあれかな・・・リンスみたいに修行に付き合ったりしてくれるってことでOK?
でもなぁ、この国の復興終わるの二年後くらいでしょ?あっ!そういえばこの子魔力が異様に高かったな・・・うーん、まぁ気長に待ちますか。
「うん、楽しみにしているよ」
無難な回答だ。誰も傷つかない、寧ろ最適解と言えよう。
「それじゃ、またね」
僕が超越者になった暁には一番初めに凱旋するのはこの国にしよう。僕はそう決心してリンスが待つパラディン王国への道を踏み出した。
「純一様・・・いつの日か、必ず・・・」
「あなたの事を心の底よりお慕い申しております・・・」
少女は青年の後ろ姿をいつまでも眺めていた。
その様はまるで愛しい者を見送るような・・・ママが仕事に行くパパを見送る時のようであったと、後にシズカちゃんは語った。




