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勇者?いやいや超越者でしょ!!  作者: 他仲 波瑠都
第1章
16/25

超越者の力


デュランは戦慄していた。


目の前で繰り広げられる一方的な殺戮に。


デュランは元より徹底した下準備を行った上で作戦を実行する。体格に似合わず非常に几帳面な性格の持ち主であった。


前日に届いた差出人不明の謎の手紙。内容はこう記されていた。


”明日、処刑台にて民衆へと紛れ貴様を殺す”


自分が圧政を敷き絶対服従をさせたアルテ王国の民。絶対的な力による、恐怖による支配で屈服した者のなかから、悪戯でこんな事を出来る者をデュランは知らない。


だとすれば差出人はあの門兵三人を虐殺した犯人に違いない。


その為、デュランは用心深くこのアルテ王国に駐屯させている兵。総数一万全てを投入し、敵に備えさせた。


だが、結果はどうだ。ウラノスと名乗る者は剣すら握らず素手で。一撃一撃を確実に兵の頭部目掛けて打ち抜き見事に粉砕している。


一度のミスも無しで、だ。


確かに駐屯しているのは怠慢行動が目立つ者たちで、五年前友軍が剣聖の率いるパラディン王国軍を粉砕して以降。すっかり弱体化した人間族の軍に勝利を重ねる内に慢心して訓練を怠るようになった。魔族軍の中でも序列が下に属する。言ってしまえば最底辺の兵たちなのは認めよう。


しかし、腐っても魔族。


人間如きの力で瞬殺されるほど脆い体ではない。生まれ持った屈強な肉体こそが魔族が誇る武器であるのだ。


・・・あるはずなのだが、奴はその魔族の屈強な肉体を遥かに上回る力を持っていると認識せざるを得ない惨状。


そしてこいつには人間族特有の”甘さ”が皆無だ。


一切躊躇わずに頭部を吹き飛ばしては目にも止まらぬ速さで移動し、また吹き飛ばす。


その間隔は一秒以下、コンマ何秒の世界。


「ん?」


デュランはある事に気付く。


「・・・数多の強敵を葬った将軍・デュランが震えているだと?」


そう、体が震えていたのだ。


久しく訪れなかった自分に匹敵、下手をすれば自分をも凌駕する力を持つ強者との対峙。


恐怖から来るものか。


それとも武者震い。


あるいは・・・。


ただ、確実に言える事がある。


自分は数刻先の未来に訪れるであろう強敵との戦闘に高揚している、と。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


真っ白な生地に金色のラインが入ったローブ。ゆったりとしていて着心地も良く、なんか超越者っぽくて即決で購入した。


ちなみにゼラルカちゃんのお墨付きなのでセンスも良しだ。


空気中に存在する微細な魔力の粒子に僕の魔力を共鳴させて光を放つ。僕が編み出したこの演出、めちゃくちゃ超越者活動が捗る。攻撃魔法でも防御魔法でもない戦闘において全く無意味な技だが、僕のお気に入りだ。


なんかもう帰っちゃってもいいかな?と思ってしまうほどに大成功を収めた超越者・ウラノスの登場シーン。


雑魚を一人残さず殺した後に改めて最高の形で決まった登場演出に大満足していると、配下の骸が無惨にも増えていくのを眺めていた大将的な奴が僕を呼んだ。


「おい、貴様は何者なのだ」

「・・・」


僕は答えない。超越者は基本的に寡黙なのだ。


時折、意味深な事を呟くがその言葉自体にも大して意味はないんだよね。


「我は将軍・デュラン。魔族軍四天王の一角を担う者である」


僕が答えないので痺れを切らした将軍が先に名乗った。


へぇー、こいつが噂の将軍さんかぁ。


そんじゃ、お決まりのスキル透視っと。


将軍・デュラン

Lv80

HP 5500 力5500 素早さ 1000 防御力 4000

魔力 3000


僕は思わず奴のスキルを二度見する。


「あれ?君・・・弱いね」


あっ不味い。


拍子抜けし過ぎてうっかり素の声で話してしまった。


「なんだ・・・と・・・?」

「・・・」


僕は黙ったままデュランを見つめる。なんとか上手いことさっきの素の声はスルーしてくれないかな。


「貴様!我を愚弄するか!?」


成功だ。


と呑気に考えていると、相手の・・・えーっと、デュラン?が一気に踏み込んできた。


煽り耐性はレベルに比例しない、これは僕が異世界に来て得た教訓。


僕はデュランの動きを先読みし軽く後方へと跳躍する。そして置いていた剣を拾い上げ、ローブを素早く身に纏うと一転して前に突っ込んだ。


「っ・・・!?」

「ふっ・・・」


遂に交わった両者の刃、しかし反応は全く異なる。


デュランは予想以上に重い僕の剣圧に怯む。


そして僕は予想以上に軽いデュランの剣圧に肩透かしをくらう。


数回の剣戟を交わし、再び距離を取る僕とデュラン。


「貴様、どうやら口だけではないらしいな」

「ふっ、お前は口だけのようだな」


強者っぽく意味ありげに笑う僕。


「くっ!どこまでも我をコケにしおって!!」


怒りに身を任せ剣を振り回すデュラン。僕はそれを的確に最小限の力でいなし、奴の攻撃パターンを予測しては先手をうち徐々に追い詰める。


「お前か、あのゾンビたちを作ったのは・・・」


戦いに没頭していた僕は慌ててもう一つの作戦を実行する。


唐突な僕の問いにデュランは心底アルテ王国の人々を見下すような笑みで答えた。


「あぁ、その通りだ。あの薬はヘル・アスダークのお方が作られた代物。それを王族が逃げ出す為の口実と偽り、馬鹿な人間共を騙したのだ」

「ほぅ・・・」

「自分たちが忠誠を誓ってきた主を簡単に諸悪の根源だと信じ込むのだからな傑作だったぞ」


高らかにゲスな声で笑うデュラン。生粋の悪役である。


「ふっ・・・随分ペラペラと語ってくれるのだな」


僕は哂った。”笑った”なのではなく”哂った”のだ。


ここ重要ね。


「なんだと?それはどういう意味だ!」

「お前には関係の無い事だ。知る意味も無い・・・どうせお前に明日など訪れないのだから」


僕はそう呟き、一気に加速する。デュランの剣を受け止めそれ以上の力、洗礼された剣技でデュランの剣を弾き、奴を斬りつける。


僕の剣がデュランの鎧を捉える度に当たった箇所は砕け、破片が周囲に凄まじい速度で飛び散る。


「くそ!このままではいかんな。情けない、頭に血が上って冷静な判断力を失っていた」


出力を上げるデュラン。


今度は冷静に無駄のない動きで剣を振るう。


反省してすぐに修正するのは良い事だ。


対戦相手は戸惑って後手後手に回り君の勝機が見えてくるだろう。


まあ、それは僕以外の相手ならの話。


僕は剣に流す魔力を2割程度増やし、少しだけ力を込める。


そして左手に持つ剣の剣身を逆手に持ち二の腕にぴったりとつけ、デュランの剣を払いのける。


動揺する奴の隙を逃さず、すぐに重心を前に移してデュランに近づき右手に持つ剣の切先で奴の喉元を突いた。


当然デュランは避ける為に大きく仰け反る。


僕の狙い通りだ。


仰け反った事でガラ空きになった奴の懐に潜り込み魔力を込めた渾身の蹴りを奴にお見舞いした。


デュランの身体はくの字に曲がり、強烈な僕の蹴りによって吹き飛ばされると建物に衝突。しかし勢いは失われずに五、六軒の建物を突き破りながら奴は倒壊する建物の下敷きとなった。


「さぁ、今のうちに行け」


前を向いたまま背後に立つ彼女らに言う。僕の指示通りにゼラルカちゃんは三人を急かしながらこの場を後にする。そして去り際に一言。


「ありがとうございます!純い・・・ウラノス様!」

「っ・・・!ああ!」


僕はちょっとだけ気分が高揚した。


僕の超越者活動に付き合ってくれた彼女たちの粋な計らいに乾杯。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「はぁはぁはぁ・・・」


かなりの距離を走った。もう危ない範囲は超えたと思う。


純一様がデュランの隙を作って私たちを安全な場所まで逃げる機会をくれた。やはりあの人は凄い。目の前でデュランという強敵と対峙しつつもしっかり私たちの事も気にかけていたのだ。視野の広さ、冷静な状況判断をぜひ自分も見習いたい!・・・というのは建前で本音はただひたすらにあの人の隣で戦いを見届けたい!という可憐な乙女の淡い恋心だ。


そうと決まれば話は早い。私は立ち止まり少し前を行くシズカちゃん一家に声を掛ける。


「おじさん、おばさん、シズカちゃん。この先は三人だけでお進みください」

「えっなんで?ゼラルカちゃんはどうするの?」


私の宣言に疑問を呈するおじさん。昔よくおばさんから聞いていた通りおじさんはこういった色恋沙汰には鈍いようだ。恋人時代のおばさんの苦労が窺える。


「あなた!それくらいわかりなさい!いいわよ。行っておいで」

「お兄ちゃんによろしく!」


シズカちゃんとおばさんは察してくれたみたい。未だにピンと来ていないおじさんの背中を押して運動場へと走っていった。


私は走ってゆくシズカちゃん一家の背中が建物の陰に隠れ見えなくなるまで見送る。そして私は反転すると駆け出した。


「待っててください。純一様!今すぐ、私もあなたの隣に参ります!」

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