正直羨ましい
「部外者はすっこんでろ!」
最初こそ戸惑っていたが数的優位の状況を認識した男は態度を一変し、怒り心頭といった様子で捲し立てる。
立ち振る舞い、加えてその口調といいまさしく日本で頻繁に見かけたチンピラそのもの。傍から見たらダサいことこの上ないがそれが彼らのアイデンティティ。否定するつもりも肯定するつもりも僕には無い。
「男四対女一の構図は倫理的にダメでしょ。お兄さんたちは恥ずかしくないの?」
僕はわざとらしく挑発する。
最近のマイブームとなりつつあるこの挑発行為。
さっきの門兵相手にも、そしてリンスとの修行期間ではあの森の魔物相手にも幾度となく試した。相手が激昂すれば必ず僕を殺すつもりで襲いかかってくる、僕はそれを圧倒的な力でねじ伏せるのが大好きなんだ。
「生意気なガキだな。あんま舐めてっと痛い目見るぞ?」
「それに超越者だって?頭おかしいんじゃねぇのか?いいぜ、お前らやるぞ!」
僕に突き飛ばされたリーダーらしき男の合図で一斉に向かってくる男たち。
まんまと挑発に乗ってくれる小物キャラ。
それにしてもこの世界の住人はあまりにも沸点が低い。現代と異なり常に身近に存在する戦争の影響を受けながら思春期を過ごすせいで喧嘩っ早く育つのか。
まぁ考えても仕方がない。僕にとっては簡単に特訓相手の確保が出来て有難いからどうでもいいね。
己の力を信じ超越者道を突き進むのみ。
でも今度は人間だしなぁ・・・魔族だったなら喜んで殺すのだが流石に女の子の前で同じ人間を殺すのは倫理的にアウトだと思う。
誰もいなかったら躊躇せず殺すけどね。
僕は一考する。
脳をフル回転させ、辿り着いた戦法が・・・。
「おらおらぁ、お・・・らぁ・・・」
「いく・・・ぜ・・・」
「なっ・・・!こ、こいつ・・・ぐはぁっ!」
バタバタとあっという間に倒れる三人の男。
しかし、死んではいない
なぜなら、僕がとった戦法とはそれぞれの男の背後に瞬間的に移動して、手刀で軽くチョップを決め気絶させる。
王道バトル漫画で見るアレだ。
首を吹き飛ばさないように手加減しながら絶妙な力加減で調整するのは思ったよりも面倒だと知れた。思わぬ収穫があり僕は大満足、女の子も助かりwin-winだ。
そして残った男一人に僕は忠告する。
「どうする?僕は君もやっちゃっていいけど、これ以上この子に危害を加えないと約束するなら見逃してあげるよ?」
少し脅す感じで告げると男は身をガタガタと震わせながら言う。
「ひ、ひいいぃぃぃ!ご、ごめんな、さあぁぁぁいいぃぃぃ!や、約束しますぅぅぅ!」
大の大人がそう泣き叫んで男三人を引きずりながら一目散に逃げていった。
僕はやり遂げた超越者ムーブの余韻に浸りながらその様をしばしの間眺める。そして完全に男たちの姿が見えなくなったら女の子に手を差し伸べ言った。
「君歩ける?」
「は、はい!」
「だったら着いてきて」
「わかりました!」
綺麗な黒髪に気品溢れる佇まい。おっとりとしたタレ目は歳不相応の色気を醸し出す。うん、美人だ。そんな大和撫子感満載の女の子を連れて僕は歩き出した。
僕は人助けがしたいわけじゃない、超越者活動を行った結果、副産物でついてくるなら。超越者活動に支障をきたす面倒事に巻き込まれないならば。ちょちょいっと助けてあげるくらいはする。
今回も結果的にそつなっただけでたまたまだと僕は自分に言い聞かせる。人助けを主としては超越者の道に反すると僕は考えるからだ。
だから超越者業務完了、騒動解決の延長線で勝手に助かっといてくれるのが理想だね。
そんなことを考えながら僕は女の子を導き歩く。そして路地裏を抜けて僕は辺りを見渡す。
「あれ?ここどこだっけ?」
と、案の定さまよいながら僕は歩いてきたはずの道を探した。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
途方もなく歩くこと約一時間。
道中、僕はこの女の子をどうするか悩んだ。そして行き着いた答えが、とりあえずあのおじいさんの居酒屋に連れてけばなんとかなるだろ!という選択肢であった。
道中で女の子があれっ?この道って・・・、とか呟いていたが僕は聞こえていないフリをして歩く。
そして四苦八苦しつつも心許ない記憶を頼って再び戻ってきた居酒屋の扉を開けた。
来客に驚いたシズカちゃんがその正体が僕だと知るやいなやドタドタと慌ただしく駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん、どこ行ってたの?急に居なくなったからビックリしたよ!また何か問題起こしてないよね?」
「大丈夫大丈夫。少し外を散歩してただけだから・・・うぉ!」
開口一番にこれだ。改めて自身の信用の無さに少なからず落胆していると入店してから僕の背後で微動だにせず立っていた女の子が急に僕を押し退けて前に出た。
「えっ・・・その声は・・・シズカ・・・ちゃん?」
驚愕で目を見開く女の子。
「ゼラルカちゃん!」
「生きてたのね・・・・・・ぐすっ・・・よがっだぁ・・・ほんとうによかっだぁ・・・」
「うんうん、私もまた会えて嬉しい!ただいまゼラルカちゃん!」
「ひぐっ・・・ぅ・・・おかえりシズカちゃん・・・!」
抱き合う少女。
その綺麗な友情は普段ドロドロとした昼ドラばかりを視聴する主婦層には大変受けが良いと思う。
「ん?誰か来たのか?・・・おぉ、ゼラルカじゃないか。どこに行ってたんだね?」
「おじいさん・・・いえ、少し外の空気を吸っていただけです」
「・・・」
奥から出てきたおじいさんが尋ねる。ここも知り合いみたいだ。僕だけが仲間外れ感が否めない、まぁ別にいいけどさ。
でも彼女の返答に疑問を抱く。虐められていたのを隠してるのかな?でもおじいさんは凄く辛い表情してるし絶対に気付いてるよね?まぁ、部外者の僕が口を挟むのは野暮ってやつだ。
「この娘はゼラルカ・アルテ。今は亡き王国の第二王女と魔族の男との間に生まれた子なのじゃよ。そしてこの娘はスキルを”二つ”持っておる。この世界でたった一人のな」
「わしはこの子の親とは古くからの知り合いでな。幼い頃から親しくさせてもろとるのだ」
と彼女の説明を始めたおじいさん。
「へぇー」
と僕は相槌を打つ。
「ただいま、ご紹介にあずかりました。ゼラルカ・アルテと申します。歳は十二です。助けて頂いた身ながら自己紹介が遅れてしまったことは本当に申し訳ございません」
スカートの裾を軽く持ち上げお辞儀をする彼女の仕草は、あぁ王族なんだな。と思わせるには十分だった。
そしてさり気なくおじいさんから明かされる衝撃の事実。バレないように僕はすぐさまスキル透視を行った。
ゼラルカ・アルテ
Lv20
HP 1050 力 321 素早さ 386 防御力 517 魔力5750
スキル 結界、干渉
ふぅ。
僕は一息つくそして・・・。
え、何それ超超ちょ━━━━━うらやましいんですけどぉ!なんだその生まれながらにして強者確定ルートはぁ!えっズルくね?僕なんかSMだぞ?この格差は許されていいのか?しかも魔力がレベルの割にめちゃくちゃ高いし!
心の中にて大発狂した。
「へ、へぇー。それは凄いじゃないか。う、羨ましいよ」
引きつった笑顔で僕は言う。
「で、でも・・・私はまだこのスキルを上手く扱えなくて・・・一回も発動したことないんです・・・」
「だ、たから純一様のお役に立てるかどうか・・・」
頬を染め上げ照れるゼラルカちゃん。
はて、お役に立つとは?などと考えている僕におじいさんが話しかけてきた。
「のぉ、お前さんや」
「はい、なんでしょう」
「時間があるのならしばしこの老いぼれの話を聞いてはくれんか?」
「まぁ、短めな」
「少女の悲しい運命、五年前この国で起こった惨劇じゃ。少し・・・いや、かなり長くなるがよいか?」
えっ、長いの?じゃあ聞かなくていい。興味無いもん。僕は明日のシミュレーションで忙しいんだ。
「遠慮しとき」
「わかった。では話すぞ」
「あ、はい。どうぞ」
有無を言わさぬ威圧感に僕は柄にもなくたじろぎ渋々カウンター席に腰を下ろした。
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