感動の再会
シズカちゃんに連れられるがまま身を潜めつつ歩くこと十数分、周りの風景とは似ても似つかない随分とノスタルジックな雰囲気を醸し出す居酒屋の前にやってきた。
「お兄ちゃん、着いたよ!」
「ん、ここが言ってた店なの?」
「ううん、ここは私たち家族がお世話になっているおじいさんがやってるお店なの!たぶん、ここにパパもママもいると思うの!」
そう言ってシズカちゃんは扉と向き合う、そしてドアノブに手をかけ扉を開く。
バタンッ!
勢いよく扉を開けるシズカちゃん。両親との再会を前に逸る気持ちが抑えられない。
「ただいまぁ!パパァ、ママァ・・・?」
店内全体に響き渡る程の大きな声で両親を呼ぶ少女。しかし少女の欲しかった声は返ってこない。少女は何度も繰り返して両親を呼ぶ。すると奥の扉が開き一人の初老の男性が出てきた。
「シ・・・ズカ・・・なのか?」
その男性は少女の名を呼ぶ。顔見知りらしい。
「ジャルおじいさん?ただいまぁ!」
「お主・・・よく生きて帰ってきてくれたな」
「うん!あと少しでねゾンビに食べられちゃいそうだったんだけど、そこにいるお兄ちゃんが助けてくれたの!」
垂れた目尻が優しさを感じさせる小太りのおじいさんがシズカちゃんに歩み寄り言葉を交わす。この人がさっき言っていたお世話になってるおじいさんか。
おじいさんが視線を僕に向けて頭を下げた。
「お前さんがこの子を助けてくれたのか。ありがとう。わしからも礼を言わせてくれ」
「いえいえ、当然の事をしたまでです」
「・・・そうか。お前さんみたいな人間が増えてくれればいいのだがなぁ」
意味ありげな事を呟くおじいさん。だけど、僕はあまり興味が無いので深く追求はしない。
「おじさん、それでパパとママはどこ?」
シズカちゃんが尋ねる。顔見知りと会えて嬉しいだろうが少女が一番に望むのは両親との再会だ。
キラキラとした瞳を直視出来ずにおじいさんは少女から目を逸らして告げる。
「連れてかれてしもうた・・・」
「え?」
「ついさっきな、魔族軍の連中がここに押し入ってきてシズカの両親を拘束して連行したのだ。」
「明日の正午に処刑する、奴らはそう言い残していきおった・・・すまん、わしに力があれば・・・」
申し訳ないような己を責めるような表情を浮かべ謝罪するジャルさん。少し太っているはずなのに心なしかその背中は小さく見える。
「う、そでしょ・・・?」
ようやく少女の脳がジャルさんの言葉の意味を理解する。そして・・・。
「いやあぁぁぁぁぁ!」
悲鳴をあげた。やっと会えると思っていた両親が魔族軍に連れ去られ、しかも処刑されると聞いて正気を保てる子供なんてまずいない。
「すまない・・・本当にすまない・・・」
おじいさんも同様に涙を流す。目の前で連れ去られた、助けられなかった悔しさは少女の悲しみに匹敵するだろう。
僕たちがこの店に辿り着くよりも数刻早く、魔族軍にはもう既に門兵殺害の件は知れ渡っていたのだろう。入れ違いで僕たちはここに到着したんだ。
・・・ちょっと待て、もしかしなくてもシズカちゃんの両親が連行されたのは僕が門兵を殺したからなんじゃ・・・。
あっ、これダメなやつだ。
「あのぉー、もし良かったら僕が助けに行きましょうか?」
重い空気の中、僕は二人に提案する。
二人が元凶に気付く前に上手いこと流れを変えて僕に任せて貰えるように仕向けなければ。
「いいの!?あっ・・・でもこれ以上お兄ちゃんを巻き込むのは・・・」
「気にしないでここまで来たら最後までやり遂げたいんだ」
「わしらとしては有難いのだが、なんせ相手はあの将軍じゃからのぉ。いくらお前さんと言えども・・・」
それにさっきから耳に入る、その将軍って奴と是非とも戦ってみたい。
助けを申し出た理由のおよそ8割を占める。残りは門兵を殺したのは僕だから、そして単純にシズカちゃんがいい子だから、が1割ずつ。
「大丈夫ですよ。僕、強いんで」
僕の宣言に呆気にとられるおじいさん。数秒の間をおいて豪快に笑うと改めて助けを求める。
「・・・・・・ぶほぉっ!わっはっはっはぁ。これはとんだ勇敢な勇者様なこった。素直に甘えるとしようか。頼む、この子の両親を、この国を救ってくれんか?」
おじいさんは僕の肩に手を置き何かを託すように言った。
「もちろん、僕に任せてください。あと勇者じゃなくて超越者です」
僕は胸を叩いて了承の意を告げた。
「お、おう、そうか。超越者か、若いっていいのぉ!」
「あっ、おじいさん。この国で今一番大きな服屋ってどこですか?」
誤魔化し成功、会話もひと段落したところで僕はおじいさんに尋ねる。
「服屋か?・・・それならこの店を出て北に歩けば”メイリンの服屋”ってのがある。そこが品揃えも悪くないし、俺の一推しの店だ」
「ありがとう」
僕はお礼を言って扉を開け、店を後にした。
なぜなら決戦の前に超越者活動用の服を揃えなければならないから!
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積もる話もあるだろうし、服屋に行くついでに店に二人を残して僕は店の外に出た。そしてとりあえず言われた通りに北に向かって散策していた。
僕はこういった気遣いも出来る男。超越者には必要なスキルだ。
でも妙だなこの国、どこも店は閉まってて人通りも少ない。やたら空気が重く冷たい雰囲気を感じる国だ。ほんとに服屋はやっているのか?
などの疑問がちらほらと浮かぶがそれは後回し、僕は先程の門兵たちとの戦闘の振り返りをする。
「・・・・・・最高だったなぁ」
そう、最高、これに尽きる。
一人は真横に真っ二つ、一人は頭部破壊、一人は突き刺し。実に強者っぽい戦い方、敵に何もさせなかった。これに大きな意味があるのだ。
しかも、何気に初めての人殺し。でも違うか、魔族だから人殺しじゃない。
あれ?めちゃくちゃラッキーじゃないか今の状況は、罪に問われずに満足ゆくまで戦えるって最高じゃん!
楽しかった事は鮮明に記憶に残り、またやりたいとなるのが人間の性。僕は無意識のうちに魔族を探していた。
「また、どっかにいないかなぁ。殺しても問題ない都合のいい魔族とか・・・・・・・・・おや?」
と僕が考えながら歩いていると、どこからか罵声と人を殴りつける音を僕の聴覚が捉えた。ついでに涙をすすり必死に辞めてもらうように懇願する少女の声も。
「・・・行くしかないか」
入り組んだ路地に入ってまた道に迷わないか心配になったが、片付いてから考えることにして僕は声がする路地裏に急いだ。
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到着した僕が見たのは、男四人組が僕と同じか少し歳下くらいの女の子に暴行を与えているという構図。
「お前のせいだ!お前の親のせいでこの国はっ!」
「穢れた血め・・・ここで消しておくべきだ」
「あなたたちの勘違いです!父は何も悪い事をしてません!」
「うるさい!」
罵声を浴びながら背の高い男が女の子の髪を乱暴に掴む。
「辞めてください・・・きゃっ!」
「お前の親はなぁ、はっきりと言って害だ。死んで当然の存在なんだよ!」
事情は後にしてとにかく女の子の身の安全が第一。僕は一気に加速し、距離を詰め、もう一度殴ろうと手を振りかざす男とそれに怯えしゃがみこむ女の子の間に割って入った。
「男が寄ってたかって一方的に女の子を虐めるのは、いただけないなぁ」
男の手を掴んで言う。
「な、なんだお前は!?」
「いきなり登場して王子様気取りか?」
突然の乱入者に困惑する男たち、そして僕の背後に匿った女の子。
「王子様じゃない、超越者だ」
僕はお決まりのセリフを言い放ち、掴んでいた男の手を捻りあげた。
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