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色とりどりの恋物語

ツンデレ女子高生のホワイトデー

作者: 紅204

バレンタインに投稿した『どうしてもチョコが欲しい男子高生とツンデレ女子高生』の続きです。そちらを読んでからこちらを読む事を推奨します。

ホワイトデー前日の夜。竜胆将人は、自室で飴やクッキー、チョコなどのお菓子を大袋から小袋に詰め替えている。


「よし、これでおけ。奈々の分も準備したし、これで終わりだな」


大袋に余ったチョコを口に入れる。


「よし、じゃあさっさと宿題やって寝るか」


そう独り言をつぶやくと、机に向かい、宿題を始めた。




ホワイトデー当日の朝。教室で将人は、バレンタインにチョコをくれたクラスメイトたちにお礼のお菓子を配っていた。


「はい、チョコのお礼。チョコくれてありがとね」

「どうも。まあ市販品だし、別にいいよ」


一通りお礼を配り終え、自分の席に着いた将人の元に、奈々が近づいてきた。


「ね、ねえ」

「ん、なに?」


奈々は頬を赤らめながら、モジモジとしている。


「あの……」

「どうしたの?」

「そ、それ」

「これ?これがどうしたの?」

「あの、それって……」


と、二人が話していると、教室に女子生徒が入ってきた。それを見た将人は、ちょっと待ってて、と奈々に言うと、お菓子の入った小袋を持って入ってきた女子生徒のところに行った。そして、お礼を言いながら小袋を渡した。


渡し終えると、


「待たせてごめんね。で、どうしたの?」

「ね、ねえ、私の分は?」


目を潤ませながら問いかける奈々。しかし、将人は首を傾げる。


「なんの話?」


奈々は将人を睨む。


「もういい!」


そう言うと、思い切り顔を背ける。そしてそのまま自分の席へと向かう。


「ちょっと待ってよ。どうしたの?」

「なんでもない!」


将人は奈々の腕を掴んで止めようとしたが、奈々はそれを振り払う。そしてその勢いで振り向くと、将人を睨みつける。

将人がまだ声をかけようとするが、予鈴が鳴ってしまった。


「ほら、早く座ったら?」


将人は奈々に促され、仕方がなく自分の席に座った。




放課後、奈々は友人と一緒に駅前にあるファーストフード店にいた。


「なんであんなに竜胆くんを無視してたの?」

「結衣には関係ないじゃん」


そう言うと、ジュースを飲み始める。


「今までは普通に接していたのに急にどうしたの?」

「そもそもそれがおかしいのよ。あいつ、本命チョコあげたくせにあれから全く態度が変わらないんだから」


愚痴をこぼす奈々。が、言った後にはっとして口を押さえた。それを聞いた結衣は、ニヤニヤしている。


「へー、あげないとか言ってたのに結局あげたんだ」

「ち、違うから!あいつがどうしてもって言うから仕方なくあげただけだから!」


奈々は頬を赤らめ、慌てている。それを見ながら、結衣はニヤニヤし続けている。


「またまたー。仕方なくだったら本命をあげるわけないでしょ」


図星を突かれた奈々はうめき声をあげる。


「にしても、本命あげたのにお礼をもらってないの?」

「そうよ!あいつ、わざわざ私があいつのところに行ったのに、お礼をくれようとしないんだから!」

「ふーん」


結衣は生返事をする。


「結衣が聞いてきたのになんでそんなに興味なさそうにしてるのよ!」

「いっつも思うけどさ、なんで竜胆くんのことが好きなの?奈々だったらモテるし、他の男でもいいんじゃない?あんなチャラチャラしたやつじゃなくても」


奈々は結衣を睨みつける。


「それ以上言ったら、いくら結衣でも怒るわよ。確かにあいつは馬鹿だし、何も考えないし、鈍感だけど。それでもいいところはいっぱいあるのよ。道端で困っている人がいたら助けようとするし、ゴミが落ちていたら拾って捨てるし、どんな人が相手でも態度を変えないし。……私が理不尽なことを言っても怒ったりしないし。ま、まあ、それがいいことだとは限らないけど!」


ベラベラ話し始めた奈々を見て、結衣はニヤニヤとした笑みを浮かべる。


「ふーん。竜胆くんのことが大好きなんだねー」


それを言われた奈々の顔は、耳まで真っ赤になった。


「い、いや、ちがっ」

「そうなんでしょ?」

「……う、うん」


思わず否定しようとしてしまった奈々だが、もう一度結衣に問われると、こくりとうなずいた。


「いやー、青春だねー」

「結衣だって好きな人いるんでしょ。頑張ればいいじゃない。結衣は可愛いし、絶対好き同士になれるよ」

「うん、そうだね。ありがと」


奈々にそう言われた結衣は、顔を少しひきつらせる。だが、それが気のせいだったかのように、綺麗な笑みを浮かべる。


「よし、もし今日中に竜胆くんが返事をくれなかったら教えてちょうだい。その時は私がとっちめてやるから」

「そ、そんなことしなくていいよ!」

「でもそうでもしないとさぁ……」


「なに?」

「いーやなんでもない。そろそろ帰ろうか」

「あ、ホントだ。もうこんな時間になってる」

「奈々が竜胆くんのことをあんなに語るからだよ」

「そ、そんなにいっぱい喋ってないし!」


そんなやりとりを続けながら帰路につく二人。




夜の八時。奈々はこの時間になっても、将人からお礼を貰えていない。


(いったいいつになったら来るのよ!……もしかして、他に好きな人がいるのかな。いやでも、将人ならもし他に好きな人がいるのなら直接言いに来るはず!)


自宅のリビングで、そのように一喜一憂している奈々を見て、心配した奈々の母親が声をかけてきた。


「奈々、何かあったの?」

「えっ、い、いやなんでもない!」

「そう?でもさっきからずっと考え込んでるみたいだったから」

「嘘!そんなに分かりやすかった?」


思わず自分の頬を押さえる奈々。


「分かるに決まってるじゃない。お母さんをあまりなめないで」


と、奈々の母親が言った時、ちょうど玄関のチャイムが鳴った。それを聞いた奈々の母親は、少し待つように伝えると、玄関に向かった。

奈々がソファに座っていると、将人の声が聞こえた。でも、なにを言っているかは聞き取ることができなかった。

奈々が気になって玄関に行こうとすると、玄関への扉が開いた。扉からは奈々の母親が入ってきていた。


「あ、奈々。将人くんが奈々を呼んでいたわよ!」

「えっ、ちょっ、ちょっと待って!」

「ほらほら、早く行きなさい」


母親に背中を押されて玄関に着いた奈々は将人から顔を背ける。


「な、何の用?こんな時間に」

「何の用って決まってるでしょ?はいこれ」


将人は奈々に紙袋を手渡した。


「バレンタインデーのお返し」


奈々は受け取った紙袋を見つめる。かすかに頬が緩む。が、将人がいる事を思い出し、口を真一文字に結ぶ。そして将人から顔を背けながら、口を開く。


「……で?」

「ん?」


奈々の意図が理解できなかった将人は、首を傾げる。その反応を見た奈々は、目を吊り上げ、声にならない声を出す。


「だから!返事は!」

「ああ、そういう事」


将人は奈々の手を取り、目をまっすぐ見つめる。


「うん、僕も奈々のことが好きだよ」


将人に笑みを向けられた奈々は、顔が真っ赤に染まっていく。恥ずかしくなった奈々は、思わず将人の手を振り払ってしまった。


「あ、ごめん。嫌だった?」


将人は奈々に申し訳なさそうな顔を向ける。


「ち、違う。あの、ごめんなさい」

「そう?よかった」


安心した将人は顔を緩め、ほっと息を吐いた。


「いつもありがとね」

「ん?なんの事?」

「いやなんでもな、ううん。あの、いつも素直になれなくてごめんね」

「え?」

「わ、分からないんだったらいいの!」

「そう?」

「う、うん。そ、それよりこれってなにが入ってるの?」


そう言って奈々が紙袋の中身を見ると、中にはキャンディと綺麗に包装された箱が入っていた。


「これなに?」

「あ、それ?ちょっと貸して」


と言って箱を受け取ると、包装を丁寧に解く。そして箱を開けると、中にはネックレスが入っていた。


「ネックレス?」

「うん。お年玉とか、バイト代とかを貯めて買ったんだ」

「……これっていくらしたの?」


奈々は顔を暗くしてそう尋ねた。


「えーと、一万円くらいしたかな」

「そ、そんなに!」


将人は左上に目線を動かして、そう答えた。その答えを聞いた奈々は驚いた。


「なんでそんな高いのを買ったの?」

「奈々に似合うだろうなって思ったから。値段はあまり気にしていなかったかな」


向かい合う二人は頬を赤らめ、目線をお互い逸らす。


「……ありがとね」


奈々はポツリと呟く。


「どういたしまして」


将人は奈々に満面の笑みを向ける。


「あ、そ、それじゃあ付き合うってことでいいんだよね」

「うん、そうだね。じゃあ早速今週末一緒に出かけない?」

「うん分かった」


そう言うと、将人の手からネックレスを取る。


「じゃあその時にこのネックレスを着けていくね」


奈々は花が開いたような笑みを、将人に向ける。

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