表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは私の物語  作者: 桜楽ぬぬ
5/12

〇女子高生のはなし(第5話)

「こんなアカウント消して、私も消えたい」

ひどい仕打ちにあった芽衣のその後は、いったいどうなったのでしょうか……?

続きはこちら。

 気がついたら夜になっていた。泣き疲れていつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 重い身体をよじるようにしてなんとか起きたら、あのひとが帰って来ていた。

「芽衣、ただいま。いまご飯作るからね」

 母の芳子は腕にかけていた買い物袋をテーブルの上に下ろすと、さっそく夕食の準備にとりかかった。

 じゃがいもの皮をむきながら

「今日は学校どうだった?」

 と芳子が訊いてくるも、芽衣は怒りを押し殺し、そのまま無視した。


 学校なんて、行けるわけないでしょ?

 どうせ行ったって、画びょうで指怪我して、クラスメイトからは白い目で見られて、耐えきれなくなってしっぽ巻いて逃げるしかないんだから。

 その前に、そもそも、こうなったのはいったい誰のせいなのか……。


「芽衣、聞いてるの?」

 と芳子がむき終わったじゃがいもを手にして、こちらに振り向いた。

 今まで爆発しないようにていねいに抱えていた行き場のない怒りが両手からこぼれ落ち、あたり一面に散らばった。

「うるさいっ!あんたのせいで私がどんな目に遭ってるか、知ってるの?あんたのせいで私の人生台無し!あんたの子になんて生まれてくるんじゃなかった!」

 芽衣はいまの気持ちをまくし立てて言うと、もうとうに外は暗くなっているにも関わらず、マスク片手に家を飛び出し、いつもの公園へと走って行った。


 学校のことばっか訊いてきてうるさい!

 私がどんな目に遭ってるか知らないクセに!

 あの人はいつもそう、私のことなんてほったらかしのクセに、親らしいことだけはあたり前のように言う。

 いまさら母親ぶらないで!


 ひんやりと冷えきった透明な空気の中を、頬を上気させて走っていると、たくさんの家々とすれ違った。部屋の中から窓越しに差し込んでくるオレンジ色の光は、〝家庭〟特有のあたたかさを内包していた。

 とても、自分の家とはかけ離れている、と芽衣はうらやましく思うも、隣の芝生は青く見えるもので、このコロナ禍ならなおさら、どの家もそれなりの事情を抱えているに違いないんだろうな、とわかってはいるものの、自分があの家に生まれてきた事実を受け入れられない自分がいた。



 いつもの公園に着くと、いつものベンチに座って、芽衣は大声をあげて泣いた。

まるで、小さな子どもが母親から引き離されてがむしゃらに泣くときみたいに、ただひたすら泣いた。

 その芽衣の泣き声が、暗闇の中、近くの山に反射しては響いて返ってくる。

 それがなんだか不気味ながらも、完璧にひとりになれていないような気がしてうっとうしく感じられ、立ち上がろうとしたところ、ざわざわ、と後ろの花壇から一瞬ひとの気配がした。

「えっ……」

 一瞬にして血の気が引いて、顔面が真っ青になる。

 幽霊かなにかがいるんじゃないかと芽衣はおそるおそる後ろを振り向くも、暗くてよく見えず、あたりを見回せどなにも見当たらない。

 芽衣は気味が悪くなって、さっさと家に帰ろうと走ると、公園の出口の手前で立ち止まった。

 そういえば最近、この公園にはホームレスが住み着いていると聞いたことがある。

 事の真相が判った芽衣は、私だけの場所は、私だけの場所じゃなくなった、と思わず肩を落とし た。

 それと同時に、いつの間にか上気していた頬は冷え、いまになって寒さを感じる。

 身体の芯からがくがくと震え出して、全身に鳥肌が立ったのを感じた芽衣は、寒さに耐えかねると、さっさと家に帰りベッドに倒れ込み死んだように眠った。



 翌朝起きると、テーブルの上にいつもの朝食が置いてあったが手をつけず椅子に座ると、なんだか誰かと話がしたくなって、スマートフォンから従妹の愛実にビデオ通話をかけた。

 そのスマートフォン特有の、変わった呼び出し音が単調に流れる。

 3コール目で電話に出た愛実は、ひどく疲れた顔をしていた。

「愛実ちゃんどうしたの?顔がすごくやつれてる」

 芽衣はいつもの愛実とはまったく違う姿に思わず画面に釘付けになった。

「ちょっと疲れてるだけ。そういう芽衣ちゃんも顔がすごいことになってるけど?」

 芽衣は思わず「えっ」と気の抜けた声を出すと、スマートフォンを見た。画面左上の隅に映された  自分を見て思わず言葉を失い「まあ、色々……」と濁して答える。

「学校は?今日は休み?」

「う、うん、今日は創立記念日なんだ」

「そっか。生きにくい世の中になったけど、お互い頑張ろうね。ごめん、忙しいから切るね」

 愛実との通話は3分もたたないうちに終わった。


 愛実ちゃんは旦那さんも子どももいるから寂しくないだろなぁ。


 芽衣は愛実をうらやましく思いながら、またいつもの公園に行くことにした。


お読みいただき、ありがとうございました!

よかったら、感想を訊かせていただけると幸いです。


こんばんは。

ぬぬです。

寒さが本気を出してきた今日この頃、エアコンをMAX30度にしても寒さに勝てず、冷たい部屋の中でこれを書いております。(さらに冷え込む12月、1月、2月、果たして無事に生きているのか!?)

最近アクセス数がぐんと減ってへこんでいるのですが、どうやったらアクセス数って伸びるんだろう??

やっぱり実力の問題なのかな?なんて落ち込むも、そんな暇はないので変わらず今後も書き続けていこうと思います。

もしよければ、応援よろしくお願いします(^^)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ