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これは私の物語  作者: 桜楽ぬぬ
4/12

♣ホームレスのはなし(第4話)

私ひとりの力では完成できなかった作品です。

コロナはいま日ごとに収束に向かっていますが、執筆当初は日本は、世界は大変なことになっていました。

少しでも共感して読んでいただけたらうれしいです。


続いては、ある老人のお話。

「寒い……」

 坂口秀毅は寒さで目が覚めた。

 吐く息は白く、まるで自分の魂が抜けていくようだ。


 ワシは、このまま死ぬしかないのか……。


 眠気まなこで空を見上げると、東の空がだんだん明るくなっていた。

 慣れないホームレス生活のなかでも、ただひとつ得られたものと言えば〝太陽〟だ。

 日が昇れば自然と目が覚めるし、日が沈めば寝るしか選択肢はなくなる。

 いま何時かわからないが、時間の拘束もいまの自分にはない。

 秀毅はうつろな目をしてもう一度空を見上げると、またふたたび眠り始めた。



 ガラガラと音を立ててすりガラスの戸が開くと、たみが「いらっしゃいませ、何名様ですか?」と客に声をかけた。

 入ってきた先頭の客は「よう、たみさん。3名でお願い」と言って口角を上げると、「よう、大将」と秀毅に向かって手を挙げた。

 それを見て秀毅は「山ぐっちゃん、お疲れさん。いらっしゃい」と歓迎する。

 秀毅はこの居酒屋『十兵衛』の店主で、妻のたみとふたりできりもりしていた。

 ちなみに十兵衛という店名は、秀毅が好きな池波正太郎の時代小説『編笠十兵衛』から取ったものだ。

 山口を含め入ってきた客3人は、さっそく生ビールを頼むと乾杯した。

 ごく、ごく、と喉を鳴らす子気味のいい音が店内に響き渡る。

「かぁ~っ!やっぱ仕事のあとの1杯はウマいな~!」

 山口は顔をくしゃりとして気持ちよさそうに声を上げると、

「今日は部下を連れて来たんだよ」

と自慢げに秀毅に紹介した。

 紹介された若い男性ふたりは秀毅に軽く頭を下げる。

「ゆっくりしてってくれ。山口の話は力が入り過ぎて、すぐに熱血になっちまうから多少絡みづらいところもあるが、いい奴だってことはワシが保証する。だから、これからも見捨てずに慕ってやってくれ」

 秀毅の言いように

「そんなこと大将から言われなくても、お前ら俺に一生ついて来るわなー?」

 と山口は両肩に若い部下たちを抱えると、その顔に急接近した。

 若い男性2人はどう返答したらよいのかわからず、苦笑いをしてその場をごまかす。

「こりゃパワハラだな。何かあったらいつでも店に来てくれ。ワシが説教してやるから」

 と秀毅は笑った。

「冗談きついなぁ~」と山口も笑う。

山口はサラリーマン時代の同期で、秀毅が働いて貯めた金でこの居酒屋を開いてから、ずっとここの常連客だ。

 年配2人で盛り上がっていると、料理が運ばれてきた。

 手羽元にチーズの肉巻き、もつ煮込みにポテトサラダなどがテーブルに並ぶ。

 山口は手羽元を一口食べると「うん」と大きくうなずいた。

「やっぱ、おかみさんの料理はウマいわ~!酒にもよく合うし、言うことない!」

 山口からの絶賛に

「ありがとうねー。そんなに上手言ってくれるなら、だし巻き玉子プレゼントしちゃう」

 とたみはうれしそうに口角を上げた。

「よっ!待ってました!」と山口は合の手を入れる。



 思い切って脱サラしてから店を開くこと約3年……。

 常連客も次第に増えていき、売上も好調。営業時間も大幅に長くし、朝まで飲める店にした。

 それは秀毅の些細な夢だった。

 酒を片手に語り合う。その場にいる客同士が個々で繋がっていく——。

 十兵衛はもはや、ひとつのファミリーだった。


お読みいただき、ありがとうございました!

よかったら、感想を訊かせていただけると幸いです。


こんばんは。

ぬぬです。

来週の23日は勤労感謝の日ですね。

みなさん、日ごろお疲れ様です!

祝日でお休みの方は、どこかへおでかけに行ったりするのかな??

休みの日なのに、なにも予定がない私は、さみしさをバネに、小説をがんばって書こうと思います(泣)

(誰か、友達になってください 切実)

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