4, 玄関のチャイム
リビングでは 緊張が走る。紘くんが帰ってきたのかもしれない。父親が 玄関に走る。
そこにいたのは 先ほどの女性。母親の背中をさすっていた方の設楽ゆりえと その息子 大斗だった。
紘くんがいなくなった時の状況については 岩井家に移動する前に詳しく話を聞いていた。 設楽は 紘くんを1番最後に確認した“大人”だ。紘くんと同じクラスの大斗と 砂場にいた所をみていた。
彼女は 「やっぱり “ヒロヒロコンビ”は仲良しね。」とほほえましく思ったという。その後 数分のうちに紘くんはいなくなったらしい。
ならば 紘くんと1番最後に一緒にいたであろう“人物”である 大斗にも 状況を聞かなければならない。
北川は 自分ができる最大の笑顔を無理に作って 大斗に尋ねた。
「紘くんが どこに行ったのかを見てたかなぁ?」
大斗は 下を向き今にも泣きそうな顔で 母親の後ろに隠れた。
「ごめんなさい。・・・この子 ・・ちょっと人見知りが激しくて 家族以外の人とは話ができないんです。もし何かを 私に話したらお知らせします。」
はあ まったく子供の生態は謎だなと 衝撃を受けた。
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時間は 20時過ぎ。岩井家の玄関で設楽は 大きな紙袋を 渡そうとしている。聞こえはしないが 数言を交わした後に岩井は 設楽と大斗を招き入れた。
設楽は 食事をとれていないであろうと気を使って いなり寿司をもってきていた。夕方まで公園にいたのに いつのまに準備したのかと思うほど大量に。そしてまた 準備がいいことに 持ってきた紙皿と 割りばしを出し 手早く取り分けている。ソファの須田がそわそわしているのが見える。そういえば この時間まで何も食べていなかった。緊張感がピンと張りつめていたリビングが 少し緩んだ気がした。
設楽が 口を開く。
「皆さん お忙しいかと思って用意したんですけど お口に合いますでしょうか。
そういえば あの後も 息子に話を聞いたんですけど なにも話さないんです。ちょっとおっとりした子なので ごめんなさいね。それと 紘くんママは2階ですか?心配なので様子見ついでに お寿司もって行ってきますね。」