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17, 2年前 ②
そこからは記憶が途切れ途切れだ。黒いネクタイをしたおじさんが 私に声を掛ける。
「ゆっくりでいいから 乗り越えるんだよ。」「変な事を考えてはだめだよ。」と。
何人も何人も。視界がはっきりしない。ぼやけて見える世界の中に 太い縁のある写真が2枚ならんでいる。
この景色は見たことがある 実母が亡くなったときだ。当時 私は妊娠中の大きなお腹を抱え 夫に支えられていた。離婚後 苦労して私を育ててくれた母は 長く闘病していた。
亡くなったことが悲しくないと言えばウソになるが やっと苦しい病気の日々から解放してあげられたと思った。それに 今の私には 守るべきものができた。そう今 私の中にいる ちいさな男の子。
よし この涙が止まったら 笑って過ごそう。前向きに 母に恥じないように 生きていこう。
そんな回想シーンを考えながら 現在の私はといえば 何を考えればいいのかわからない。そうか これまで少しでも不安なできごとがあると話を黙って聴いてくれたのは夫だ。が、どこにもいない。
そうそう ヒーローが好きで 四六時中どこでも 変身をしては 家族を笑わせてくれた息子もいない。 どこにもどこにも。
なにもない。なにも。 今の私には なにも。




