余ったパンは冷凍するといい
パスワード忘れて大分久しぶりに投稿できました。
「さあ早く!さあさあ早く!
早くわたくしにコロちゃんを抱っこさせてくださいませぇぇぇーー!!」
身分が高い上にかなり厳しい王妃教育を受けてきたはずのロゼッタ令嬢。
そんな彼女は、今まで周囲からは完全完璧な貴族令嬢と思われていた。
だかしかし今の彼女は
目はとろんと蕩け、口元はヨダレをたらさんばかりにだらしなく緩みイイ笑顔を浮かべ、両手を広げてコロネに猛突進をしてきている。
今まで誰も見たことのない、彼女のイメージをぶち壊す醜態であった。
麗しい女性までも虜にしてしまうとは、なんとも恐るべきコロネの魅惑のむっっちりぼでぃである。
「さあさあ!さあさあ!さあさあ!」
「ひ、ひょえぇぇーー!!」
令嬢のあまりの勢いに、俺様のくせに情けない声をあげる王子。
コロネを奪われないように必死に逃げようとした、そんな彼の前に
「ダメですよ次は私の番です」
「……順番……待ってる」
「ほーらジャーキーもう一本あげるからお兄さんの胸に飛び込んでおいてー」
公爵令嬢よりも先にコロネの抱っこを待っていた取り巻きたちが立ち塞がった。
ーーそう、公爵令嬢と王子と取り巻き達により、我らがコロネの争奪戦が開催されてしまったのである!
『わ、わう……(やめて!ワタクシのためにみんな争わないで!)』
この国の最高峰である貴族の子息令嬢達を組んず解れつの取っ組み合いをさせるとは、なんとも罪な魅惑のむっっちりぼでぃである。
あまりの見苦しい光景にあんぱん令嬢も、周りの観客達も口をパクパクとさせて傍観するしかできなかったのであった。
そんな大混乱の中、
『わふぅ!?』
公爵令嬢の突進を避け、側近候補の令息達に回し蹴りを繰り出し、必死の防衛戦を繰り広げていた王子。その背後からそっと背の高い人物が現れ、彼からコロネを取り上げたのであった。
「なっ!?お、俺のコロちゃんが!」
おのれの宝をまざまざと奪われた愚かな王子は、あまりの手際の良さに驚愕し、瞳に憎しみの炎を宿しながら背後の人物に振り返った。
「……コロネは君たちのものではないよ。ぼくのものさ」
そう、背後にいた人物とは隠し攻略キャラでありコロネの飼い主である学園長であった。
『わふぅーん♪(ごっしゅじーん♪)』
大好きなご主人様に抱っこされたコロネは、おしりをぷりぷりさせながらご主人様の顔をペロペロと舐め回しました。
「ああ、僕のコロネ。なんと可愛らしいんだ。……でも僕以外に愛嬌を振りまくなんて……いけない子だね?」
『わふぅ!?(ビクッ!?)』
ご主人様から醸し出される黒いオーラが会場へと広がり、絶対零度の世界へ誘われる。
むっっちりぼでぃも凍りつき、令嬢も王子も取り巻きもその凍えるような空気にカチーンと身動き出来なくなったのであった。
「そ、そうだわ!こんなことしてる場合じゃないのよ!」
だが、さすが空気を読めないあんぱん令嬢。彼女のKYっぷりは学園長の絶対零度にも負けません。
「……何かね、アン=ブレッド令嬢。僕はこれからこの子のお仕置きタイムで忙しいんだが」
黒いイイ笑顔を浮かべるのはやめてあげて。貴方の手の中にいるむっっちりぼでぃの持ち主がカタカタ震えちゃってますよ?
あんぱん令嬢も冷たい視線をむけられて、一瞬またも冷凍しかけますが、首を横に振って冷気を跳ね除けました。この子強い。
「が、学園長はハーレムエンドを達成してからじゃないと攻略制限解除されないから、そのままその犬とイチャイチャしててください!
それよりも王子!そしてロゼッタ様!お二人は婚約解消してください!」
突然話を振られた王子と公爵令嬢。二人は驚きで解凍されたのであった。