どうでもいい現実と幻想友人
子供のころは神様が居ると純粋に思っていた。
夢は強く思えば叶うと思っていた。
作り話でも現実に在ったことだと勘違いしていた。
でも今は、神様は都合の良い言葉ようなもので居ても居なくてもどうでもいい。
夢は寝れば体験できるが起きていると触れることが出来ないもの。
ニュース番組も人が作るもので誤報とかがあり完全には信用できない。
『主様、おはようございます。』
「おはよう。」
夢から覚めると、歪んだ視界の中で自分の作った幻想だけだハッキリ見える。
枕元にあるメガネを手に取り瞳にレンズを被せる。
『現実は嫌ですか?』
「......いや、嫌では無いけど、好きでもない、どうでもいいもの。」
『主様は全部どうでもいいで済ませますね。』
「実際、そうだし。」
居るはずもない人物、ふれることの出来ない幻想に何気無い会話を交わす。
味のしない栄養食品を口に頬張り、個性を殺す制服に腕を通す。
そして、なぜ通っているか上手く答えられない学校に行く為に空っぽの家の扉を開ける。
朝なのに透き通った青い空が眩しい。
『今日は最高温度が35度を超えるそうですよ。』
「梅雨明けなのに憂鬱な天気だな。」
遠くから聞こえてくる蝉の声と隣で騒音を撒き散らす自動車の音を聞きながら、幻想と一緒に通学路を二人で歩く。
学校に行く途中の道には赤い鳥居が列になって並ぶ[五目稲荷神社]がある。
私は学校に行くついでにほぼ毎日この神社に参拝している。
『主様、私はここで待ってますね。』
「あぁ。」
幻想は何故かいつも鳥居の前に待機して、神社の中には入ろうとしない。
私は手水舎で手を洗い口を漱いだ後に賽銭箱の前に行き財布から10円玉を一枚取り出し、賽銭箱の中に投げ込み。
鈴を鳴らし手を二回叩き頭を下げる。
私は別に神様を信仰する気持ちは無い。
だが、願い事だけは言う。
「神様が存在するなら確認したい。」
神様は居るとは思っていないが、居ないとは思っていない。
居るなら死ぬ前に姿を見たいだけだ。
しょうもない願いは今日も叶うはずも無く、何重にも重なった鳥居を潜り幻想の元へと帰る。
『神様は見えましか?』
「今日も何時も通りに何も無かった。」
『そうですか。』
「そう言えば、狐花は何で神社に入らないのか?」
『それは、た、ただ単に居心地は悪いからです?』
「何故、疑問形で答える。」
『私はよくテンパるのは主様が良くご存知でしょう!』
幻想が当たるはずの無い拳をポカポカとぶつけてくる。
私の日常はどうでもいい事とイマジナリーフレンドで成り立っている。
メガネを外せば何もかも歪む曖昧な世界も悪くはないと思っている。
『何笑っているんですか?』
「いや、じゃれ合うのが面白くてなぁ。」
『主様、私と喋る時は周りをよく見るのをお勧めします。』
「?」
幻想に気を取られて、周りを歩く通行者がいることに気付けなかった。
他から見れば、私は一人芝居しているあやしい不審者である。
読んでくれてありがとうございます。