”奴と俺”
まさか俺がこいつと闘う時が来るとはな…
俺は拳を固く握り、目の前の相手と対峙する。背は同じくらい、最も俺も背丈は高い方だから185はあるだろう。白い学ランを羽織り、その着き手とは似つかない純真無垢な帽子を被っている。手にはメリケンサックを着け、俺を悪魔の様に見ている。
…さあ、どうしたものか…
俺は駆け出した。まずは一発横腹にジャブを投げ込む。無論相手もだ。空いた左手でジャブを受け流す。相手もそうした。ならば頭狙い、アッパー。だがやはりバックステップで回避する。そして手に着けていた…メリケンサックを顔面向かって投げてきた。少し動揺しながらキャッチ。と奴が距離を詰めボディにストレートを叩き込まんと腕をしならせる。だが俺もメリケンサックを顔面に投げ付ける。驚き怯んだ所に飛び蹴りを食らわせた。
「ふふ、お前のその足癖の悪さは相変わらずだな。普通拳でやってる時に足はないだろう」
「お前こそ俺の動きをほぼ全部読みきって動いてたくせに。とんだ冗談だ」
互いに笑い合い、まるでお菓子パーティめいた暫し朗らかな雰囲気が漂う。
だがそれを破るものがあった。
「お前、やっぱり昔と…!?」
「うるせえな。俺だって今まで散々やって来たんだ、色んな事に手を染め足を浸からせてきたさ」
「おま…お前だけは…畜生!」
俺のその渾身の裏拳も両手の中に収められる。
「じゃあな、相棒。今までお世話になったぜ」
「そんな…おい、待てよ!あの約束はもう忘れたのか?あの時の誓いを!」
その言葉を聞いた瞬間、一瞬だけ動きが止まった。もしや躊躇でもしていたのか。だが彼は歩き出した。迷いを噛み潰すように。心を抑えつけ、誰にも入れないように。その意思は固かった。
そして、誰にも叶わぬ約束があった。
時は遡るーーーーー