1日目-5
中央病院に着いた。これからどうなるか分からないが、何とかなるだろう。私は病院を見上げた。その向こうの、真っさらな青い空と、立体的な白い雲のコントラストが美しい。
とりあえず、荒宗に大した怪我が無ければ良いが。兎に角、さあ行こう。
私は先にタクシーを降りた。
バタンと、背後でのドアの閉まる音。荒宗を振り返る。
荒宗は車の中のまま、タクシーのドアは閉まっていた。ウィ~ンと、窓が開く。
「すみません。僕この後用事があるので、楠田さんも病院行った方が良いですから、先に診てもらって下さい。僕も後日行きます。結果は連絡しますので、心配はしないで。」
荒宗がそう言うと、再びウィ~ンと窓が閉まり、私が唖然としている中、車はどんどん見えなくなって何処かへ行ってしまった。
・・・・・。
どの位そこにそうしていただろうか、その時の気分を上手く言い表す事が出来ない。太陽の熱に額がジリジリと焼けたが、私の視線は消えて行ったタクシーの方向に向けられたまま止まっていた。
だから荒宗は、私に携帯を取りに行かせたのだ。携帯も無いし、この人困るだろうな。タクシーの中、そんな事を考えていたのだ。
荒。
この仕打ちは何だ?そう思っていたのならタクシーの中でなぜその話をしないのだ。何も言わずにここまで来て、自分だけサッサッと行ってしまう非常識さ。いや、その事については、また後日と、タクシーに乗る前に話が付いていたのだ。それにしても、一緒にここまでタクシーに乗って来る間になぜ話さない。いやそれも、私の方が話を聞く雰囲気では、無かったのかもしれない・・・・・。何よりも、今日会ったばかりだった。
強烈な疲れを感じて、病院前の花壇に座り込んでしまった。すかさず医療関係者と思われる服装の人が近付いてきて「大丈夫ですか?」と声をかけて来た。大丈夫なはずが無かった。
「あ、ええ。大丈夫です。すみません。」微笑む顔に太陽に焼かれた汗が一筋、流れた。
荒宗。あらそう。あら?そう?
理不尽な逆恨みの様な感情がメキメキと沸いて来た。悔しい。情けない。恥ずかしい。そして、何て嫌な奴だと思った。名刺は貰ったので、後の事は保険会社に任せよう。二度と会うもんか。




