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4日目-2

 全力の掃除も、淡々と熟す文書整理も、帰宅時のほぼ20KMの、もう歩いているのだか走っているのだか、下手すれば引きずっているのだかも分からないマラソンも全て、現実の苦痛を忘れるには持って来いの方法だった。でもそこには、終わってしまえば元通りの現実が残る。事故の事もあり、店の事もあり、インフルエンザもそろそろ期限切れが来そうだった。だけどこのまま帰る訳にはゆかなかった。私はここに気晴らしに来たのでは無く、このまま家に帰るにはまだ心構えが出来ていない。ここでの生活は平和だったが、すぐに壊れてしまいそうな平和の下には溶岩が流れている事を、私自身が感じていた。そういうものを振り払う為に毎回走って帰るには、体力的に限界がある。私の問題は何なのか。茂希さんはその道の専門医だ、相談すれば良い。マスターもその意で私をここに寄越したのかもしれない・・・とは、あまり思えないが。


 ここには分からない事が多すぎる。というか、分からない状態の私を受け入れてくれていると言った方が正しい。考えても分からない事についての欲求を満たす為に知りたい欲が湧く。上手く行けば医者や弁護士になれるし、悪くすれば盗撮などの犯罪を犯す変態と化す。私はその中間辺りで手を打つことにしよう。頼りは例の、先輩である。

 夕方文書整理が終わった頃、ロッカー室でおばちゃんを待った。

 おばちゃんは、なかなか戻って来なかった。何となく、おばちゃんがやっている事は掃除だけでは無いようだ。

 そんな事を考えていたら、おばちゃんが戻って来た。

「あれ、お疲れ様。帰らないの?」

「聴きたい事があるんです。マスター・・・聡子ちゃんは病室に入る事が出来るのはなぜですか?聡子さんは特別な知識でも・・・資格とか、病室に入る事が出来る何かがあるの?」

「そんな事は本人に聞くべき事かもしれないね。」

 そうかもしれない。でも食い下がった。

「病室を通れないのは、患者さんが危険だからなんでしょう?皆ハッキリ言わないけど、空間は開放的に見えるけど、その実閉鎖されている。あんなに慎重な場所に、なぜ聡子さんは入れるの?」

 おばちゃんは、ただ単に私の勢いに押されたのでは無い。少し考えて、ハッキリ答えた。

「あの子も医者の卵なんだよ。」

・・・!

「何故か途中で諦めてね。いい成績だったんだけど。」

 マスター・・・マスター・・・

「でも・・・」

 何でおばちゃんはそこまで知ってるの?内容よりも、おばちゃんの言葉尻には、お手伝いに来てくれる院長の妹についてのそれとは違うものがある。

 おばちゃんはあははと笑った。感が良い。

「あの子は私の娘でね。」

 !!!!

 言葉も、思考も無くした。

「何だい。そんな顔して。」

 おばちゃんの、方こそ・・・・。


 






 

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