魂燃やすわ
1個10円の10円饅頭。1個500円のキャベツ。1皿2000円のランチプレート。
1枚1900円のズボン。1枚20000円のキャミソール。1着20万のコート。
何が高くて、何が安いのか、分からない。
○十億円の家、想像のつかない自家用ジェット、自分用の、ディズニーを真似たランド。
世界中に通用する、認められた名前。
今日、あぜ道に咲く小さな花が風に揺れるのに、季節の匂いを感じた。
自分の中の価値観が、分からない。
その日一日を頑張れたと思うなら、それで良いのだと。それが全て。その言葉に焦る。
そうやって、過ぎてゆく日々。何に重きを置いて頑張れたと思えば良いのか?
死んでも良いから、魂が燃える瞬間を。スーパーで10円饅頭を手に、遠くを見つめて途方に暮れる。
どこに行きたいのかさえ分からない。
ある日というか今日突然、このままでは死ぬと思った。頭の中は無意識にもその感覚でいっぱいになり、その瞬間死についてのみ回転しだした。多分理屈抜きに必死。ギリギリラインのところでやっと気付いてそれ一色、そんな感じかもしれない。
昔、男の子が喧嘩をするのは、多分殴られたいのだと、勝手に思っていた事がある。相手を殴りたい。ただそれだけでは無く、自分も殴られたいのではないかな。と。死ぬかもしれないという自分の感情に対して出た結論が、それに似ていた。もっと傷付いたり、本当の涙をボウロボウロ玉のように流したり、する必要がある。美味しいはずの、少し高めのケーキ屋さんのケーキとか、ストレス発散の、ブランド買えるとこまでギリギリでも買い尽くしてスッキリとか、ほんの一瞬綺麗になれた気がするけど続かないエステとか。感じない自分がいる。いつの間に居座ったのか。
テーブルの上には1ホール12000円のケーキが、あちこち切り分けられて無残な形となって残っていた。コーヒー片手に有名なお店のケーキのその残骸を、何か別の大した事ない事ぼんやりと考えながらペティーナイフでザクザク切って、ナイフ持った片手で鷲掴み、一応ベランダなんかに出てみてお茶飲み直し。味など感じず食べる現実。そしてこのままでは、死ぬ。と、我知らずキャッチした信号がそれだった。お金で買える物に対する欲に際限は無く、ある程度満たされている位ではもう満足出来ないのか、感動が無くなった。自家用ジェットでプライベートビーチに行ければ、今なら興奮で気絶ものかも知れなくても、それにもいつか飽きる気がした。風になびく、若い女性の美しい髪に、胸がキュンとなるのはなぜだろう。指の隙間をすり抜けてしまう砂粒みたいな時間の流れは誰にも皆平等に与えられていて、皆その上に立っている。その美しい髪も、やがて気付くのだろう。あまりにも短くて儚い、人間にも与えられた生態系があるのだ。生きねばならぬ。このまま年を取るのは嫌だった。胸をえぐる様な何かを求めて心が悲鳴を上げているその事を、30歳の誕生日未婚の今日、自覚した。




