共産主義の国
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自由都市ヘルメスは、共産主義である。
シルフィード・アムドゥスキアスとエマ・アイリスは、ヘルメスに向かって牛車を走らせていると、シャーロット軍の騎士がヘルメスまでの道を封鎖していた。
シルフィードは、騎士に問う。
「どうして、ヘルメスを封鎖しているのですか?」
「ヘルメスの政治は、危険だからだ。お前たちは、ヘルメスへ旅行に行くのか?」
「ああ、私たちは、今からヘルメスへ観光に行く。それとも、ヘルメスは国家体形が崩れ去るほどに、治安が悪い国ですか?」
「確かに。なんで周辺の都市守備隊ではなく、シャーロット王国の直属の軍がわざわざ出張って来ているのですか?」
「それは、ヘルメスが抱いている、共産主義と言う考え方を恐れて、その考えを持つ人間が、ヘルメスから漏れないようにしているからだ」
「シルフィード、共産主義とはなんだ?」
「共産主義とは、簡単に言えば、国が全ての産業や富を所有して、それを国民に分配することによって平等な国家を目指そうと言う考え方だ」
「その通り、きみは博識だね」
「しかし、なぜ、その共産主義とやらが危険視されているのだ。国民の全てが平等になるなんて、理想の国ではないか」
「一見そう思えるけれども、違うんだよ。実際、国が産業や富を支配する社会では、国は機能しなくなる。一部の権力者が富をむさぼり、産業はどれだけ努力をしても、産業自体が国のものであるからゆえに、儲けの分配が上がることはないからね。すなわち、経済が発展しなくなるどころか、徐々に徐々に廃れて来る。さらには、給料が皆同じで、競争をする必要がないから、どんどん仕事をしなくなって、悪循環の始まりだ」
「まあ、気になるなら、ヘルメスに行ってごらんよ。どうせ、今からヘルメスへ観光しに来たのだろう?」
「ああ」
そして、いざシルフィードとエマがヘルメスに付くと、共産主義のあり方に賛成していたエマは、すぐに共産主義のあり方を否定した。
その理由は、単純である。
シルフィードとエマは、あるスポーツの大会があると聞いて、その大会を観戦しに言った。
しかし、その大会の結果は、国民全員が平等の名の元にあると言うのが理由で、全員が優勝だった。
その後、シルフィードとエマは、気分転換に劇場で人気と言う劇を見に行った。
しかし、その劇の出演者は、国民全員が平等の名の元にあると言う理由で、全員が主役だった。
その後、シルフィードとエマは、リラックスする為に、ホールでオーケストラを聞くことにした。
流石にそのオーケストラは、演奏者の持つ全ての楽器がヴァイオリンと言うことはなかったけれども、やはり国民全員が平等の名の元にあると言う理由で、全員が主旋律を奏でていた。
いや、確かに音楽には、ユニゾン奏法と言う主旋律を複数で演奏する奏法あるけれども、音楽を司るシルフィードは、いかんともしがたい気分になった。
その後、シルフィードとエマは、口直しの為にレストランに向かった。
そのレストランは、国民全員が平等の名の元にあると言う理由によって、ホールは客を案内しない、また料理を注文するときは、自ら席を立ってコックにお願いしなければならないと言う、そう言うレストランだった。
エマは、レストランを出るなり、シルフィードに言う。
「なんなんだ、この国は? 気持ち悪いぞ」
「これが、共産主義の末路だよ。だから、他の国は、誰も真似したがらない」
「確かに。この国だけは、私が見たい、人間性が全く持ってないぞ」
「まあ、でも、共産主義は、考え方に関しては、全部が全部、悪くないんだけれどもね」
「どうしてだ?」
「この国を例に挙げれば、他の国のように、明らかに他人に虐げられて死ぬことだけはない」
「すなわち、国の在り方と言うのは、バランスが大切と言いたいのだな」
「その通り。エマは、僕の言いたいことが分って来たようだね」
『共産主義の国』を読んでくださった方、本当にありがとうございます。
この小説は、うp主が、高校時代の授業を思い出して、書いたものです。
この小説で登場する、自由都市ヘルメスは、今は存在しないソ連と、まだ共産主義だったころの、昔の中国を題材にしました。
共産主義の国は、昔こそは、貧富の差がない理想の国、すなわちユートピアであると思われていましたが、実際には、労働者がどれだけ働いたところで、国から支給される給料が変わることはないので、労働者は怠慢を働くようになり、それが国を衰退させることが、歴史によって証明されており、現在では、どの国家もその国家形態を真似しようとはしません。ただ、現代においても、中国では過去に共産主義だった名残で、この小説にも書いたように、人は皆平等であると言う名目で、ろくな接客態度の店が、一部であるそうです。
ところで、余談ですが、社会主義の考え方が(戦時共産主義?)、戦時、貧富の格差があった、資本主義の国家形態を構えていたヨーロッパ諸国の人々の耳に入らないように、ヨーロッパ諸国の人々は、ヨーロッパ諸国に入るソ連の人々の出入りを禁止したそうです。
現在、シルフィードとエマが旅をしているシャーロット王国の自由都市は、『仕事の国』を読んでいただければわかるように、ほとんど全て、資本主義の国家形態をしていますけれども、ヘルメスが、他の自由都市から閉鎖されているのは、大昔のヨーロッパ諸国と同じ理由です。
少々、余談が長くなってしまいましたが、これからもじゃんじゃん小説をうpしようと思いますので、応援よろしくお願いします。
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