4月1日Ⅰ
はあ…。
何で、何でこんなことに…。
何故私がヤツのお遊びに付き合わなければならないのよっ!!
ありえない、ふざけてるわ!!
「母様、父様…!
私はいつの日か、ヤツの魔の手から助け出してみせます。
ですから…もう少し、もう少し。」
確かヤツは今年で十歳になるのかしら。
ま、どうでもいいのだけれど。
十歳の娘に脅える生活なんて、考えただけでも嫌なものね。
とか言って、私も八つも違う妹に脅える生活を強いられているのだけれどね…。
ほんと、なんてつまらない生活。
そもそも、ヤツは養子のはずなのだけれど。
いつからかしら、ヤツに脅えなければならなくなったのは。
ヤツがうちに来てから一週間ってところかしら。
最初の三日はきっと、ヤツは猫かぶっていたのよ。
もの凄くいい子だと思ったのだけれど、それはただの演技だったのよねえ。
「姉様姉様、私、姉様大好きですわ!!
姉様の為なら私何でも出来る気がしますのよ?」
始まりはこの言葉でしたね。
ヤツが来てから四日目の朝、目覚めの悪い私を起こしにヤツが来て言い残した言葉。
最初は嬉しかった。
自分の妹となった子が自分になついてくれて、とても、純粋に嬉しかったのよ。
でも、その日の夜。
ヤツが眠れないからと言い私の部屋で眠りたいと言った夜。
「姉様、姉様は嫌いな人間がいらっしゃいますか?
もし、いらっしゃるのなら…。
ふふ、私、姉様の為に殺して差し上げますわ。」
私が入っていた毛布にするすると入ってきて、言ったのよ。
その時のヤツの眼と言ったら、怪しげに爛々と輝いていたわ。
私はその時気付いてしまったのです。
コイツは私たちとは違う。
コイツは本当に私が嫌いと言った人間を殺すだろう。
コイツは恐ろしい奴だ。
…と。
そして、私は言ってしまったの。
ヤツが来てから六日後の夕食の時、私はまだ小学生で幼かったから愚痴程度に言ったの。
「あのね、母様聞いてほしいの。
友達の鴉太ソノミちゃんが私のことを馬鹿って言ったのよ!
私、ソノミちゃんが嫌いだわ。」
次の日、ソノミちゃんは小学校に来なかったわ。
そして、ソノミちゃんは行方不明になったらしいの。
最初はわからなかった。
ソノミちゃん家も有名なお金持ちだったから、何かの陰謀にでも巻き込まれたのかと思ったわ。
だけど、ソノミちゃんがいなくなったその日、家に帰ると玄関で私を迎えるヤツの眼はあの日と同じ怪しく輝いていたのよ。
気付いちゃったわ。
ソノミちゃんを殺したのはコイツだ!!
ってね。
ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン。
「あら、もうこんな時間。
ヤツの手先が来る時間かしら?」
コンコン。
玄関のドアを叩く小さな音が聞こえたわ。
私がドアの鍵を開けると、すぐにドアが開かれてヤツの手先がこう言った。
「正力トウカ。
例のブツです。」