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 地味だったろうか。


 僕は自分の身体を見下ろして何度目かの溜息をついた。


 何の面白味もない白地のアディダスのTシャツにジーンズ生地のハーフパンツ。

 まだ暑いからと足を出してみたのだがまばらに毛が生えているにゅるっと伸びた生白い脛ができそこないの大根のようで貧相に見える。

 スニーカーはお気に入りのニューバランスだが、通学にも使っているので薄汚れていてどうにも冴えない。


 仕方がない。


 昨日、急に佐伯と画材屋に行くことが決まって服を買いに行っている時間がなかったのだ。

 そういう言い訳で自分を納得させてとりあえず今のところは待ち合わせの駅の切符売り場前から逃げ出さないでいる。


 しかし、時間的に余裕があったとしても恰好良い服装を調達できたかどうかは甚だ疑問だった。

 どういったものが女子に受けが良いか皆目見当がつかない僕が時間に追われ一人で買い物に出かけたところで良い結果につながるとは思えない。

 普段から外見にもう少し気をつかっていればこういうことにはならなかったのだが。


 せめて靴紐ぐらいは、としゃがみ込んで一度ほどいてからきれいに結び直す。

 ここに来て三度目の仕種だ。


「仁科君、早いね」


 呼びかけられてハッと顔を起こすとミニのワンピースから伸びた柔らかそうな白く輝く脚が目に飛び込んできた。

 さらに視線を上げるとそこには……沙織の笑顔があった。


「こ、こんちは」


 素早く立ち上がると頭がフラッとした。

 緊張で血の気が失せる。

 盆の窪辺りが寒くなる。

 気を抜けば遠のきそうになる意識の尾を必死に手繰り寄せ何とか挨拶代わりに白目を剥くような状態だけは回避した。


 これまで一緒のクラスになったことのない沙織と話をするのはこれが初めてだ。

 彼女が僕の名前を知っていたことが嬉しくもあり不可解でもある。


 それにしてもどうしてここに沙織が?

 偶然?

 それとも……。


「私、隣のクラスの栗山沙織。今日はよろしくね」


 ぺこりと頭を下げる。僕もつられて同じ動作をした。


「くぇ?」


 頭を起こすと同時に僕は思わず鶏が首を絞められたような素っ頓狂な声をあげていた。


 事態をうまく理解できない。

 よろしく、ということは彼女も一緒に画材屋に行くということなのか。


 佐伯が彼女を呼ぶはずがないから、誘ったのは陽平ということになる。

 何のために……と考えたところで僕はカッと胸から首筋が熱くなるのを感じた。

 陽平が言っていた「何とかしてやるよ」がおそらくこれなのだ。

 あの野郎、余計な真似を。


「顔赤いよ」


「そ、そう?」


 僕と沙織は切符売り場とジュースの自動販売機のわずかな隙間に並んで立った。


「やっぱり陽平君はまだよね」


 沙織が確認するようにあたりを見回す。

 僕は黙って大きく頷いた。


 腕時計を見ると待ち合わせの時間までまだ十分もある。

 時間にルーズなところのある彼が現れるにはまだ間があるはずだ。

 そう考えると沙織と二人きりの時間がすごく重いものに思えてきた。


 沈黙が続く。

 秒針がゆっくりと進む。


 沙織が現れてからのどが渇いて仕方がない。

 舌の奥が粘って声が渋滞してしまう。


 陽平が現れるまでどんな会話をすれば良いのか。

 佐伯が到着したらますます何を話せば良いのか分からない。

 こんなことなら僕も時間ぎりぎりに来れば良かった。


 とりあえず近くの自動販売機でコーラのペットボトルを買う。

 蓋を捻るといつものシュワッと炭酸が弾ける爽やかな音がしてそれだけで少し救われたような気分になる。

 何となく耳からの刺激で脳の動きが活性化された感じがしてくる。

 可愛いワンピースだね、ぐらいの月並みではあるが僕にとっては歴史的な褒め言葉がするりと口をついて出てきそうだった。


「私ね、陽平君のことが好きなの」


 占いにはまってるの、程度の軽い口調で沙織はさらりと僕に重大なことを告白した。


「そうなんだ」


 僕は一瞬蓋を開く手を止めたが、自然な相槌を打っていた。

 不思議と心は冷静だった。


 やっぱりね、そりゃそうだよね、という気分だった。

 悔しいとか残念とかいうネガティブな感情は一切なかった。

 気持ち良いぐらいの感覚すらある。


 それはきっと僕が沙織に対して抱いていた淡い好意の正体が遠巻きに眺めて知っている彼女の外見に対してだけの薄っぺらい好感でしかなかったからなのだろう。

 テレビに映るアイドルに覚える気持ちと同じだ。僕はまだ栗山沙織という女性を確固として好きだと想っているわけではなかったのだと思った。

 それとも時間が経つにつれてこの告白がじわじわと麻酔が切れた傷口のように僕の心に痛みをもたらすのだろうか。


「だから、仁科君がもし私のことを……」


「違うよ」


「え?」


「陽平に俺が栗山さんのことを好きだみたいなことを吹き込まれたのかもしれないけど、それは陽平の早とちりと言うか一人合点なんだ」


 僕はコーラを口に含む。

 冷たい火花のような刺激が喉を潤していく。

 自棄に見えないようにゆっくりと口から離したペットボトルの蓋を閉める。

 同時に沙織への気持ちにもかたく栓をする。

 しっかり閉めたペットボトルはうっかり手から滑り落ちても中身は一滴も零れることはない。


「そう。だったら私失礼なこと言っちゃった。ごめんなさい」


 彼女は僕に深々と頭を下げた。背筋を伸ばしたきれいな姿勢で。


 僕は誰かからこんなにきちんと謝罪されたことがなく、しかもあの校内一美人の栗山沙織に許しを乞われる状況に漸くあたふたと慌てた。


「ちょっと、そんなに謝らなくてもいいよ。元はと言えば陽平が悪いんだし」


 顔を起こしても沙織は申し訳なさそうな顔を崩さなかった。

 九回裏にサヨナラエラーをしてしまった甲子園球児ぐらい悲壮感が漂っている。


「陽平君は悪くないの。昨日陽平君に誘われたときにメンバーを聞いて私が勝手に想像しちゃったの。私こそ一人合点」


「メンバーを聞いただけで僕が栗山さんのことを好きだと思ったの?」


「だって、陽平君は佐伯さんのことが好きなのにわざわざ私を誘うってことは、そういうことなんだろうなって」


「え?知ってたの?」


 僕は思わずそう訊いてから、しまった、と唇を噛んだ。

 今、僕は陽平が佐伯に好意を持っているということを暗に認めてしまったことになる。

 しかし、引き金を引かれた銃弾のように一度発した言葉は取り戻せない。

 僕の不用意な言葉は沙織の胸に深く突き刺さっただろうか。


「陽平君はサッカー馬鹿だから考えてることはすぐ分かっちゃうのよ。佐伯さんが転入してきてからあの人変わったもの。でもね、私の気持ちはそう簡単には変えられないのよ」


 そう言って虚空を睨む沙織の顔は同学年とは思えないほどきりりと引き締まっていて格好良かった。

 これが人を好きになっている人の顔かと思った。

 どこか不安げで、だけど退くことはできないという必死さと気迫が漲っているようだ。

 そこには男には真似のできない芯の強さがあるようだった。

 よくテレビ番組なんかで「男は女には敵わない」という言葉を耳にするけれど、その意味が分かったような気がする。


 それにしても彼女の鋭い観察力と洞察力には脱帽だ。

 沙織は熱いだけでなく冷静さを兼ね備えている。


「ね、ね、ね。じゃあさ、じゃあさ」


 急に彼女が何か楽しいことを思いついたようなキラキラ輝く瞳で僕の顔を覗き込むように見つめてくる。


「何?」


 その上目づかいのまっすぐな瞳があまりに澄んでいて僕は初めて陽平に嫉妬を覚えた。

 至近距離でそんなに見つめてこないで。

 僕は目を合わせていると石にされてしまいそうな感じがして慌てて視線をずらす。

 畜生。

 目茶苦茶可愛いじゃないか。


「仁科君は佐伯さんのこと好き?」


「は?それはない」


 僕は少し鼻白む思いでコーラをぐびぐび飲んだ。


 あんな勝気な女、好きなはずがない。

 僕のことをストーカー呼ばわりしやがって。

 そもそも何であいつの買い物に付き合わなくてはならないのか。

 陽平もあんな傲慢な女よりも沙織と付き合った方が楽しいに決まっているのに、本当に馬鹿だ。


「そっか、残念」


「どうして?」


「だって、もし仁科君が佐伯さんのこと好きだったら、佐伯さんを陽平君に取られないようにしたくなるわけじゃない?それって私と利害関係が一致するもん。仲間になれるところだったのに」


 沙織と仲間か。

 それって悪くない。

 いや、すごく楽しそう。


 僕はたった数分の会話で学年のアイドルとの距離がぐっと縮まった感じがして嬉しかった。

 沙織と恋人同士になるなんて想像するだけで気後れしてしまうが、彼女の方から仲間だって言ってくれるなら僕は喜んで彼女の援護射撃をするつもりだ。


 僕は残ったコーラを一気に飲み干し清涼感たっぷりで沙織に向き直った。


「俺、栗山さんのこと応援するよ」


「ほんと?ありがと!でも、仁科君は陽平君にも同じようなこと頼まれてるんじゃないの?」


 陽平が僕みたいなイケてない凡人に何かを期待するはずがないし、もし頼まれたら頼まれたで僕も何をしたら良いのか分からず困ってしまう。


「そんなこと言い出すような奴じゃないよ。自信満々だもん。それに陽平には栗山さんがお似合いだって。あいつなんかより断然」


 僕の中の沙織のイメージが変わりつつあった。

 清純派の世間知らずのお嬢様だと思っていたのだが、恋の駆け引きみたいなことに挑戦しようっていう姿勢は僕よりも断然大人だ。


 しかし恋愛の成就のためにひたむきな姿勢を見せる彼女は僕の中で今までとは違うベクトルにだがなお一層好感度が上昇した。


「あいつって?」


 低い声に振り向くと自動販売機の陰からぬっと佐伯が姿を現して僕は背筋を鉄柱で貫かれたように直立不動で立ちすくんだ。

 今度こそ本当に石になりそうだった。

 まともに佐伯の顔を見ることができない。


「い、いつ来たの?」


 思わず訊いてしまっていた。


 いつからそこにいたのか。

 どこから話を聞かれていたのか。


 互いの心音が聞こえそうなくらいに隣り合っている沙織も表情を失っていて声を出すこともできないでいるようだった。


「今よ。時間でしょ?」


 反射的に腕時計を見る。

 確かに待ち合わせ時間にジャストのタイミングだ。


「丁度だね」


「ほんと、ぴったり」


 ハハハ。

 フフフ。


 僕と沙織は顔をぴくぴく引きつらせながら何もおかしくないのに見つめ合って笑い合う。

 互いに笑うしか術がなかったようで僕たちは何度も何度も頬の筋肉を持ち上げた。


 挙動不審の僕たちに冷ややかな視線を送りながら佐伯はゆっくりと切符の券売機に向かった。


 スキニーなジーンズに胸元が大きく開いたベージュのカットソー。

 色合いは地味だが彼女のスタイルの良い身体のラインをすっきりと見せていて中学生とは思わせない落ち着きが漂っている。


 彼女と二人きりで買い物にならなくて良かったと心底思う。

 僕と佐伯が並んで歩いていたら道行く人にはどんな風に見えるのだろうか。

 本当にこいつ僕と同い年かよ。


「いくらの切符?」


 値段を答えようとしたら胃の奥からコーラの香りの大きなげっぷが出てしまった。

 慌てて口を抑えるが時既に遅し。

 僕をストーカーと訝しんだときと同じ冷淡な目で佐伯に睨まれる。

 ああ、もう石にでも何でもしてほしい。


「次の次の駅だから二百十円よ」


 沙織も緊張が抜けないのか少し声が上ずっているように聞こえる。

 私も買わなくちゃ、と明るく独り言を言いながら沙織が佐伯の隣の券売機に小銭を入れる。


「光太郎」


「何?」


「この人どなた?」


 気だるそうに沙織を指した細い指の爪が透明に光っているのはマニキュアを塗っているのだろう。

 それが少しも大人ぶって見えないのが彼女のすごいところだ。


「栗山沙織さん。同じ学年で隣のクラスの」


 切符を手にした沙織が、栗山です、と恭しく頭を下げる。


「光太郎が呼んだの?」


 沙織のお辞儀を無視して佐伯が僕に不機嫌そうに問いかける。


「ごめんなさい。私が勝手に押しかけて来たの。話を聞いて楽しそうだなって思って」


 仁科君は悪くないの、という感じでにこやかに友好的に沙織が僕の前に立つ。


 陽平に誘われたのに恋敵の佐伯に対して陽平のマイナスになりそうなことを口にはしない。

 そこに沙織の度量の大きさと清らかな性格が垣間見える。


「楽しそう?画材買いに行くだけだよ」


「私もどんな画材があるのか見てみたいなって。いいでしょ?」


 別にいいけど、と呆れ気味に許しが出て僕と沙織は一瞬視線を交わし互いに安堵の表情を見せ合う。


「じゃあ行こうよ。光太郎、何分の電車?」


「ちょっと待って。陽平がまだ来てない」


 腕時計を見ると待ち合わせの時間を三分過ぎている。


「いいじゃん。待ち合わせの時間はもう過ぎてるんだし来ない人が悪いんだから」


「それはそうだけど、せっかくだからもう少し待ってあげようよ。ねぇ、栗山さん」


「もうすぐそこまで来てると思うの。私、電話掛けてみるね」


 沙織は肘にかけていた鞄から携帯電話を取り出し僕たちから少し離れていった。


 耳に電話を押し当て、小首を捻り、ボタンを操作しては再び耳に当てる。

 同じ動作を繰り返していることからしてなかなか陽平がつかまらないようだ。


「昨日から理解できないんだけど、マツは何でついてくるの?美術部OBでもなければ絵が好きなわけでもないんでしょ?」


 佐伯が責めるような口調で僕を問い詰める。

 マツとは松本陽平のことに違いない。


「言ってたじゃん。画材屋のそばにサッカーグッズの大きな店があって、そこでスパイクを買うらしいよ」


 僕だって苛立ってくる。

 どうして僕が陽平のために佐伯の攻撃にさらされなくてはいけないのか。

 どうしてあいつは時間どおりに行動できないのか。


「だから、別にあたしたちと一緒に行く必要ないじゃん。スパイクでも何でも一人で買いに行けばいいでしょ?」


「そりゃそうだけど。俺、口下手だから俺と二人でいてもきっとつまらないよ。みんなで行った方が楽しそうじゃん」


「別に楽しくなくていいの。画材買って帰るだけなんだから」


「そう言うなって。部活はみんなでやるもんだよ。これもその練習だと思ってさ」


「光太郎はいつもそういうこと言うけどさ、前の学校じゃそんなこと言われたことないよ。部活動がどうとか、チームワークがどうとか」


「郷に入っては郷に従えってことだよ。うちの美術部はチームワークも重視してる。そういう学校ごとの校風も取り入れるのが部活動なんだよ」


 佐伯はむすっとした表情で押し黙った。


 完全に口から出まかせなのだが部活の一環だと言えば彼女は大人しくなる。

 彼女なりに一応、僕のことを部のOBとして、あるいは美術に敬意を表している人間として尊重してくれているからなのだろう。

 しかし……。

 それも僕が幽霊部員だったってことがばれるまでだ。

 事実が知れたら僕はただでは済まないのではないか。

 何とか中学校を卒業するまでは佐伯の前ではアートを愛する人間の振りをし続けなければならない。


「サオリン、つながった?」


 佐伯がなれなれしく呼びかけると沙織が俯き加減で戻ってくる。


「全然出てくれない」


 しょんぼりを絵に描いたような肩の落とし方だ。

 背中に疫病神が憑いていないか目を凝らしてしまう。


 遠くから踏切が鳴る音が聞こえてきた。

 電車が近づいてきている証拠だ。

 この電車を逃すと三十分近く待たなくてはならない。


「タイムオーバー」


 佐伯は一人で改札を通っていく。

 もはやその背中を引きとめる言葉が出てこず僕と沙織は黙って見送るしかなかった。


 ホームへ向かう彼女の背中を見つめる僕の心に一つのアイデアが浮かんでいた。


 自動改札機が二台しかないこんな小さな駅で待ち合わせに失敗することはあり得ないし、いくら時間にルーズでも陽平は何の連絡もなしにすっぽかすような男ではない。

 とすれば沙織にここに残ってもらって僕が佐伯と二人で買い物に行くというのはどうだろうか。


 今から佐伯と二人きりになるのは肝が冷える思いだが、やがて現れた陽平は沙織と行動を共にすることになる。

 僕たちを追いかけて電車に乗るも良し、諦めて別のデートをするも良し。

 どちらにせよ陽平との仲を深めたい沙織にとって悪い状況ではないに違いない。


「栗山さん、あのさ」


「仁科君」


 沙織も同じことを考えていたのか、僕が何も言わなくても彼女はこくりと頷いた。


 そのとき僕と沙織の間にぬっと黒いものが割り込んできた。


「いい雰囲気のところぶち壊してごめんよ。行こうか」


 陽平だった。

 僕と沙織の肩に手をまわしてまるでいななく馬をなだめるようにぽんぽんと叩く。


「行こうか、じゃねえよ。電車が来ちゃうだろ」


「だから行こうって言ってるんだろ。さ、早く、早く」


 これ、と沙織が陽平に切符を差し出す。

 彼女はあらかじめ二枚買っていたのだ。

 クー。

 何と甲斐甲斐しいことだろう。

 目頭が熱くなるのを禁じ得ない。


 しかし陽平は当たり前のような顔で「サンキュ」と受け取り、さっさと改札を抜けていった。


「陽平!」


 僕が怒鳴るように声を出すと沙織が僕のTシャツの裾を軽くひっぱり、眉を八の字にして小さく横に首を振った。

 その「これも惚れた弱みなのよ」というような諦めに似た表情に僕は何も言えなくなる。


 余裕を持って予定時刻より前に来て待つ僕と沙織。

 精密機械のように時間きっかりに現れた佐伯。

 遅ればせに駆けつけるも電車にはギリギリ間に合わせる陽平。


 とにかく無事出発できそうで一息つくと待ち合わせにもそれぞれの性格が出ていて面白いような気にもなる。


「じゃあ、行こっか」


「仁科君、お先にどうぞ」


「いや、ここはレディファーストで栗山さんがお先に」


 僕と沙織が改札の順序を譲り合っているとホームで陽平の大きな声がこだまする。


「ちんたらしてると置いてくぞ。何やってんだよ」


 ちゃっかり佐伯の隣に身を寄せるように立ってこちらに手を振っている陽平を見て僕と沙織は盛大にため息をついた。


 到着を知らせる警笛が鳴り響きホームに電車が滑り込んできて僕と沙織は慌てて駆けだした。


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