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雨の日パーティ

ぽつりぽつり







それは君の涙ではなく








僕の涙








神様からの許された証










clarity love










「むいーきょうもあめー」

「おそと、いけない」

六月に入り、日本が一番湿気に纏われる季節がやってきた。

毎日降り続ける雨にとうとう双子たちが不満を抱き始める。

外で遊ぶのが大好きな美羽はもちろんのこと、もともと外で遊ぶことが好きではない瑠唯までも残念そうに眉を下げる。

久々の休みにゆっくりしていた香南は学校から帰ってきて残念そうに嘆く双子を見て思わず何とかしてやりたくなるが、香南でさえも天気を変えることはできない。

二人の傍によりただ頭をなでてあげることしかできなかった。

「天気がよくなったらたくさん遊びに行けばいい。」

「ぶう。いまがいい」

「ぶらんこ!きょう、そう!」

「…そうか…」

流石にかなえてあげられない願いに香南もほとほと困り果ててしまった。

そんな時洗濯をたたみ終えた七海がお菓子を携えリビングにやってきた。

「二人とも!そんな残念な顔しないの!ほら、雨がたくさん降り始めたらやることがあったでしょ?」

お菓子を机の上に置きながら七海が話す。その言葉に双子が反応をした。

「あっ!あめのひパーティ!」

「パーティ!」

「「するする!!」」

「雨の日パーティ?」

何だそれはと香南も七海の傍により尋ねる。

「私の小さいころからやってたんです。多分私も双子と同じようなこと言っていたのを両親が何とかしてあげたいと思ったんでしょうね。…まあ、防災バックの中の食べ物を変えるパーティなんですけどね。」

「みんなでかんぱんたべるの!」

「やき、とりも!」

「二人ともお菓子食べたら準備してね。」

「「はーい!」」

「香南さんもよければ、一緒に行きませんか?」





行くってどこに?






香南青年はとりあえず首を縦に振ることしかできなかった。











「あーっ!ななちゃん!にーちゃん!かたつむり!」

「かたつむり!」

「ホントだね。ほら、角のところ触ってごらん?」

「どうしてつのさわったらへっこむの?」

「うーん、瑠唯みたいに恥ずかしがり屋なのかな?」

「ぼくと、いっしょ!」

お菓子を食べた後双子は黄色のカッパを着て玄関に集合していた。

七海も七海で傘を持ち濡れてもいいような軽装をしていた。

香南もなるべく濡れてもいい恰好をしてほしいと言われていたためジャージに着替える。

外に出ると濡れないように、ではなく濡れるように歩き始めた。

双子たちもそれをわかっているようで長靴をはいているとはいて水たまりに勢いよく入っていく。

最初は心配した香南だったが、七海がくすくすと笑いながら水たまりに入る。

「雨の日パーティの日はびちょびちょになってもいいんです。それが雨の日パーティの原則なんです。」

「…なるほど。」

香南は目の前の大きな水たまりを見渡す。

最初はゆっくりと足を踏み入れる。次第に靴に水がしみてくる。

何か心がワクワクしてきた。

やってはいけないことを、こっそりやってしまうような、そんな感覚。

今度はもう片方の足を勢いよく水たまりに入れる。すると水しぶきが足にかかる。

何が面白いのかわからないが、笑いが込み上げてきた。

「ははっ、面白いな。」

「そうでしょう?双子たち、ほら、えいっ!」

七海が足をけり上げると双子たちに水がかかる。

「「わーっ!!」」

「ななちゃんくらえっ!」

「にーちゃん、も!」

双子たちは反撃と言うように香南と七海に足をけり上げてくる。

四人の水たまりでの遊びは空に晴れ間が見えるまで行われた。









家に帰りタイマーでセットしておいたお風呂に香南が双子を入れる。

素早くお風呂に入ると今度は七海も急いで入る。

それらが終わるとメインのパーティの始まりである。

乾パンや缶詰の焼き鳥、お水など防災グッズに入れておいたものを開封し始める。

「わあっおいしそう!」

「乾パンにつけるシロップもあるからね。もちろん、何もつけなくてもいいわよ。」

「おみず、このままいいの?」

「ええ。今日だけはペットボトルがぶ飲みしちゃっていいからね。」

「全部食っちまっていいのか?」

「もちろんです!今年の分は昨日買ってきましたから。」

そう言って後ろの方にあるスーパーの袋を見る。今食べているのより量の多いそれらに香南は心が温かくなるのを感じた。

「はい!それでは今年も無事にパーティ開くことができました!今年も楽しかったね。また来年できるように自然にお祈りして…かんぱーい!」

「「かんぱーい!」」

「…かんぱい」

災害が起こった時のために用意しているものだ。災害が起こってしまっては食料が残るはずがない。

また来年もできるようにと願わずにはいられない。

水のペットボトルを重なり合わせる。

まるでビールを飲むようにぐびぐびと勢いよく飲んだ。

「ぷはーっ!うめえ!」

「おい、しい!」

「ねー。たまにはこういうことも大事ね。」

「…そうだな。」

それからはぼそぼそと四人で楽しく食料を食べ始める。

いつもより質素な食糧だったが、何か悪戯をできる様なそんな気分にさせてくれるちょっと変わった食事となったのだった。









後日談-------------------------------

梅雨も終わりに近づいてきた頃。

もう終わりだと示すようなひどい雨が降った。

香南はレコーディングから抜け出し外を見上げる。

屋根のあるところから一歩外に出る。

雨が全身に降りかかる。





『雨の日パーティはびちょびちょになっていいんです』






大きな水たまりに勢いよく足を入れる。




「ふふっ。」





来年も、こんな風にできたら。

そんな願いも許される。






香南は喜びをかみしめながらひたすら雨に打たれた。

数分後、雅にこっぴどく怒られるのは未だ知らないまま。

久しぶりの番外編更新です!



そして今年も投票しております。ぜひご参加お願いします!

☆投票の仕方☆

拍手を一度クリックしていただいてお礼の下の方にある「簡単メッセージ」のところにいくつか項目があると思いますが(例:双子と周)該当するところをクリックしてもらい「もっと送る」ボタンを押していただくだけです。



皆様の投票お待ちしております!

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