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極上のキュンをあなたに おまけ

虚像を纏いしその姿





天使となるのか






悪魔となるのか








clarity love








都内某所―――




少し広い会議室にてとある人物たちが一堂に集まっていた。

「諸君、本日集まってもらったのは他でもない。『香南君、ちょっと頑張ってななちゃんにキュンしてもらっちゃうぞ☆作戦』に協力してもらうためだよん♪」

「…おい、その言い方やめろ。というか何でこんなところで練習なんだよ。ってかなんでこんなメンバーなんだよ…」

「ふふ、それはね、みなさんそれぞれ役割と自己紹介をしてみて。」

「おっしゃ、まあ俺たちは相談された本人たちだからな。anfangはどこまでも応援するぜ?」

「監視役の雅です。」

雅はニコニコと面白そうに笑っていて、燎は勢いよくマイクを持ち出しポーズまでつけだした。

そんな燎を鼻にティッシュを抑えつけながら見ている青年がいた。

「たっくまーん!次、君!」

「はっはい!!!」

トントントンと鼻の赤いものを拭くと勢いよく立ちあがった。

「今回演技指導を頼まれてやってきました池上巧です。その、今日は、皆さんとご一緒できて幸せと言うかもはや倒れそうというか、光栄の極みです!よろしくおねがいします!!」

早口で話し始め勢いよく頭を下げると机に頭をぶつけていた。相変わらず謎な青年だった。

「俺たちはなんっつーかななちゃん役?あ、美羽です」

「あ、あのななちゃんに、すてきなデートして欲しい、です!る、瑠唯、です!」

休日なため、七海には友達と遊ぶ行ってやってきた双子たちだった。

「私は台本担当でした!女性目線でキュンを見るためにね!あ、琴乃でーす!」

そして台本作家に琴乃が呼ばれていたのだった。

今回のデートは香南のセリフを大体決め、それに沿ってやってもらおうということになっていたのだ。

再び一同を見て香南はため息をつく。これではまるでいつものいじりメンバーではないか。勘弁してくれと目を閉じ眉をひそめる。

「まーまー!プロも来て演技指導してくれるわけだし大丈夫大丈夫!がんばろ!」

「何をどう頑張るんだよ…」










「と言うことでみんなちゃんと台本読んできたー?」

「はっはい!100回ほど軽く読んできました。」

「お前それ読みすぎ」

夏流の質問に巧が勢いよく答え、燎が突っ込む。その突っ込みをも嬉しそうに反応していた。

「で、肝心の香南君は読んできたわけ?」

「…一応」

「俺たちも一緒に読んできたから余裕!」

「だい、じょぶ!」

「おお、いい返事を双子ちゃんたちからいただきました!じゃあさっそく双子ちゃんと香南、読んでみて」

香南はしばらくじっとしていたが夏流を見る。

「ひとつ、言いてえことがあるんだけど」

「どうぞ?」

「この…金髪にするってのはどーすんだよ。雅さん良いのかよ。」

「ああ、それはプロの方にちょっと頼んでね。一日ですぐ落とせるのをやってもらう予定だよ。周りにカナンってばれないようにしなければならないからね」

「あ、最初はホントに外国人っぽくしてね。ななちゃん驚かせるんだから」

「…金髪の香南さん…かっこいいと思います!!」

はあはあと危ない人物になった巧を横目に香南は双子のほうを向く。

「美羽、最初やるぞ。」

「おう!」






「『I'm sorry for being late』」

「『えっ…』」

「『Would you allow me,Lady?』」

「『s…sure』」

「『あの、どうして…』」

「『デート、するんだろ?』」

「ちょ、ちょっと待って!!!」

せっかく読んでいたのに夏流が途中でストップをかける。

「なんでそう、日本語になったら棒読みになるわけ?」

「は?ちゃんと感情こもってるじゃねえか。」

「こもってないー!!もっとさーななちゃんだと思わないと!みうみうにもななちゃんの面影あるんだし。ちょっと演技指導何か言ってあげて」

「はっはい!あの…俺もきゅんとかわかんないんですけど、ここは小声で話した方がばれないのではないでしょうか。あとちょっと嬉しそうに話した方が実は俺も楽しみにしてるんだよっていうことが伝わるかなと…」

「そうそう!ってかもうふりもつけちゃおう!演技指導、ほら!」

「あ、待ってください。そこはこういうことをして欲しいんです。」

夏流を遮って琴乃がいきなり立ち上がり美羽のそばによる。そして美羽に一言断りを述べると手の甲にキスを送るフリをした。

「うっじゅーあろーみー?」

「こ、ことちゃん?」

突然の行為に驚く美羽。

香南が荒っぽい声をあげ琴乃をにらむ。

「無理に決まってんだろそんなの。」

しかし琴乃が負けじと人差し指を横に振りチッチッチッと対抗する。

「きゅんだよ。カナン。さりげなくかっこいいことをするのが大事なの!!キスした後のこの上目使い大事よ。重要」

「…」

「七海絶対きゅんとするんだけどねえ」

「…美羽、わりい。手のひら借りるぞ。」

「…にーちゃん、男って大変だな…」











「もうすぐネズミープリンセス新作の映画が公開されるのは皆さんも周知のはず。」

「「「「もっちろーん」」」」

「けどこれ…」

「かっぷるぶーす?って、何?」

順番が交代したのか今度は香南の隣に瑠唯が立っていた。

「ええええ?!知らないの?!瑠唯とカナンおっくれってる~!」

瑠唯はきょとんとしていたが、香南はそうもいかなかった。

「…柳田琴乃、余計な言葉はいらねえから手短に言え。」

「要はソファみたいなところで一緒に座って見れる場所があるのよ。そこで腰を抱いたりしたら七海なんかきゅんきゅんして映画どころじゃないかもね~!たっくまん!」

にやにやと笑いながら話す琴乃を叩いてもいいのではないかと香南が心の中で思っていると演技指導の巧が入ってきた。

「瑠唯君ちょっとここにいてくれないか?」

「は、はい」

隣にはいつの間にかセットされていたソファらしきものがあった。

そしてその隣に巧が座る。

「『なな、おいで?』この『おいで』のところで首を傾げましょう。先ほど柳田さんと話したところそこにキュンポイントがあるそうです。瑠唯君の視点から少し上目目線を目指して…瑠唯君そう見えるかな?」

「は、はい。見えます。」

「…きゅんぽいんと…?そのブースでその…腰抱くだけでキュンキュンするんじゃねえのかよ」

「もー!キュンはあるに越したことないの!」

「かなーん!これも、ななちゃんのため、だよ?」

「キュンを大事に、ね?」

「ちゃんとやれよ。」

「にーちゃんがんばれー!」

この四面楚歌状態に再び香南はため息をついた。








デザート、それは女性の大好物とされるものだ。

日向家においてもそれは例外ではなく、香南がケーキをお土産に持って帰ると「別腹」と称し夜ご飯を食べた後に食している。

それを横目で見ているだけだったらよかった。

優しい笑顔で幸せそうに食べる姿はまた明日もお土産を買ってこようと思わせる。

毎日はダイエット注意報が出るためたまにのお楽しみになっているのだが…

そういうわけで七海もデザートと言われるものは好きだ。

好きなのだ。


しかし―


「…なんで俺まで食わなきゃなんねえんだよ。」

「え?!香南デート行ったとき一緒に食べてないの?!」

そこには最近おいしいと評判の某ケーキ屋さんのケーキが所せましに並んでいた。

休憩がてら皆でそこのケーキを食べデートに行くに値するか考えようと言うものだった。

夏流が驚いてすぐさま香南に反応する。

「いつもお土産だけ買って家で食ってた。」

「うわひっどーい!デートの時こそそういうところ連れて行ってあげないと」

「まあ、女性はそういうところ好きそうだしねえ。」

「おい巧、お前行かねえのか?」

「へ?!…まあ、俺よりも彼女のほうがそういうところ詳しいみたいなので彼女に行く場所は任せていますが…ついては行きます。」

「ほらー、たっくまんもこういうことしてるんだよ?七海なんか多分楽しみに待ってるよ?あの子ここのお店行ってみたいって言ってたし。」

琴乃が思い出したかのように香南に話す。

確かにケーキを見てみると美味しそうで七海も絶対喜ぶだろうという確信はあった。

しかし、いざ自分が頼むのだろうと思うと躊躇してしまうものがあった。

どれを試しに食べようか悩んでいると隣に双子が立っていた。

「にーちゃん、ここのそんな甘くねえぞ」

「これ、コーヒー味!美味しい、よ?」

にこにこと励ますように味を教えてくれる。

その面影には七海に通じるものがあった。

ちらっと双子たちのケーキを見ると自分が持っていたフォークをまずは美羽の方に刺し、口に入れた。

「…そんなに、甘くねえな。」

「だろ?!これ絶対いいって!」

「ここのはヘルシー志向で考えられてて基本的に甘くないって評判なのよ。だから七海もダイエットにもってこいねって話してたし。」

「なるほどな…」

そして瑠唯の方のケーキも少しだけもらい食べた。本当にコーヒーの味で上のクリームが少し甘いくらいだった。

「うんうん。これだったら行けそうだね~。」

「そうですね!」

夏流と琴乃がうんうんとうなずきながら食べていた。

嫌な予感がし、背中に冷や汗が垂れる。

「おい、何が行けそうなんだ?」

「え?何ってそれぞれ半分こしてあーん♪だよ。」

「七海からもしてもらうんだよ。」

口の中のクリームが一気に甘くなった気がした。

練習にもちゃんとケーキが使われたのは言うまでもない。







それから再び練習が入り、気が滅入るほど甘い言葉を投げかけた。

最終的に巧は感動し「ぜひ一緒に競演したいです!」とまで言われるほどだった。

勘弁してくれと思うと同時にようやくこの練習から解放される嬉しさでいっぱいだった。

あとは本番のみ、七海に喜んでもらえるように頑張るだけだ。

そう思っていたのも束の間夏流からあるDVDが渡された。

「…なんだよこれ。」

「ん?今日の練習を雅さんが一生懸命ビデオに撮ってたじゃん?ちゃんとDVDにしてあげたからこれ見てちゃんと復習してねん♪」

「…」

「あっ!夏流さん!ぜひ俺にも譲ってくれませんか!?言い値で買い取ります!!」

「え~これは香南のためだけに撮ったんだけどなあ~」

お願いします!と土下座する勢いの巧にニヤニヤしながら迷っている夏流。

「美羽、瑠唯、帰るぞ…」





今日はゆっくり七海のご飯が食べたい。

七海の笑顔に癒されたい。






そう思わずにいられなかった。

こうやって香南はしごかれて本番を迎えたのでした。

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