そうだ、免許を取ろう! 02
君の優しい言葉は
僕の新たな一歩へ
clarity love 番外編
免許を取り始めて数日、仮免許も無事合格し晴れて路上へ出ている七海であったが、日向家の食卓風景は徐々に静かなものとなっていった。
というのも七海が徐々に元気をなくしていたからだ。
「「ななちゃん、だいじょうぶ?」」
「へ?」
「なな、お味噌汁こぼしそうだぞ。」
免許を取り始めると宣言してから仕事がひと段落したからか夜には一緒にいるようになった香南。
日に日に元気の無くなる七海をとても心配していた。
香南が声をかけたころにはすでに遅く七海は味噌汁をこぼしていた。
「あっごめんなさい!」
「ふきん、とってくる!」
「おれもっ!」
「ごめんね~」
双子たちが取りに行ったのを見計らい香南が七海の手を取る。
「やけどしなかったか?」
「大丈夫です!」
「「ななちゃんはいっ!」」
双子が二人で持ってきた付近を使いテーブルを拭く七海。
それを香南はどうしたらいいのかわからないような顔で見つめていた。
双子たちが寝静まった後、七海は学科教習で学んだことを復習していた。
香南は七海にココアを作り七海の勉強している机の上に置いた。
「あっありがとうございます!」
「今日はどこまで進んだんだ?」
「今日はですね、S字走行しました!」
「そうか。頑張ってるな。」
「いいえ、」
笑顔を作り返事をするがその笑顔に元気はなかった。
「私、失敗ばかりで…こんな運転の仕方で免許取って走ったら事故を起こしそうで…」
「ななみ…」
七海は無自覚にしゃべってしまっていたのだろう。はっと意識を戻すと時計を見た。
「いけない、もうこんな時間!香南さん明日早いんですよね?もう寝ないとです!」
「ああ、そうだな。もう寝よう。」
七海は香南が持ってきたココアをいただきますと礼を言って少しずつ飲んだ。
香南は隣で作ったコーヒーを飲みながらぽつりと話す。
「なな、俺はお前がしたいことを尊重する。つらくなったり、いやだと思うなら、やめていい。てんとうむしも無理して乗ってほしくないはずだ。」
「香南さん…」
「取らなきゃいけないとかじゃなくて、もっと…楽しんで取ってほしい。難しいと思うけど…」
じっと七海を見つめる香南の目を七海もまた見つめていた。
香南は七海に微笑むとコーヒーを一気に飲み七海に手を差し出す。
「七海なら大丈夫。俺はそう信じてるよ。」
「…ありがとう、ございます。」
七海もココアを一気に飲み干すと香南の手を取った。
双子たちも香南から聞いたのかとある日の夜七海をリビングへ呼び出した。
「どうしたの?」
「ななちゃんみて!くるまのれんしゅうできるゲーム!」
「いっしょに、れんしゅうしよ?」
「え?」
「このハンドルをもってれんしゅうするんだ!おれたちもいっしょにべんきょうする!」
「だから、ななちゃん、がんばろ!」
それは少し前に香南を口説き落とし手に入れたゲームであり、様々なゲームソフトを買ってもらったり、メンバーが買っておいて行ったりしていたのは知っていたが、まさか車を動かすゲームがあるとは思っていなかった。説明書を見るとハンドルの真ん中にコントローラーをはめボタンを押し続けると画面の車のスピードが出てその車たちがレースをするゲームのようだった。。
「美羽、瑠唯…」
双子たちにも心配かけてたこと、それでも一生懸命応援してくれること。
思わず胸がいっぱいになった。
目にたまる涙を拭いて七海がハンドルを持つ。
「どうやるの?」
「んと、この2のボタンをおす!」
「そしたらね、はしりだすから、ハンドルをまわすの!」
「ドリフトとかできるんだぜ!」
「あとね、ウィリーも、できる!」
「へ?」
ドリフト?ウィリー?七海にとって謎な言葉が飛び交っていた。
一通り使い方を説明してもらいさっそく3人ですることとなった。
もちろん本当の車の運転とはまるで違うがそれでも双子が一生懸命自分を励まそうとしてくれているのがうれしく、何度も何度も一緒にゲームをした。
香南の言葉や双子の励ましに肩の重圧がなくなったのかいつもよりもリラックスして教習を受けるようになった。
「本当にすいません。それでは行ってきますね。おそらく6時には帰ってこれるかと思います。」
「ああ、気にするな。行って来い。」
今日は香南の久々のオフだった。突然聞いた休みであったため七海はどうしようかと悩んだ。今日の教習はなかなか取りにくく、キャンセルにするのがもったいなかったからだ。
香南に相談すると「俺のことはいいから頑張ってこい」との返事をもらい七海は教習へ行くことにしたのだった。
香南は七海を玄関でお見送りすると持って帰ってきていた原稿のチェックに取り掛かる。一時間もすると外出の準備をし始めた。サングラスをかけ、車のキーを取ってくるとさっそく出発である。
目的地はそう、今日七海が山岳教習で向かうトンビラ山であった。
以前七海が自分の運転が不安だと言っていたことに対しどうなったか、また変な男が引っ付いていないか、などなど様々な心配、不安が香南にはあった。
そんな時七海が仮免許を取ったころ話していたのだ。
『路上では山岳教習や高速教習というものがあるんですね。今から不安です。』
『さんがくきょうしゅう?』
『こうそくきょうしゅう?』
『山に車でドライブに行ったり高速道路は知ったりするの』
『『いいなー!』』
『それが、自分の運転でなければいいんだけどねえ…』
『おやまさん!トンビラやま?』
『そう!』
『そこそこ高い山上るんだな。』
『そうなんです。しかも火曜木曜土曜の昼からしかしないから今から予約取っておかないといけないんです…既に結構満杯で…慌てて一週間後にとりました。』
『…なるほど…』
香南は車のシートベルトを確認し、ミラーの位置を調整するとエンジンをかけナビを設定する。
「トンビラ山…だな。よし」
少しずり落ちていたサングラスを縁を持って直すと不安をはねのけるようにペダルを踏み込みポルシェを発進させた。
お待たせいたしました。第二話です。
そしてトンビラ山というわけのわからない山まで登場。
それは関東のほうで免許を取る時どの山で山岳教習をするのかわからなかったからです(笑
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