表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/48

はじめてのおつかい 03

儚い絶望







立ち上がる勇気








僕はきっと







負けない








clarity love はじめてのおつかい












「しまっちゃった…」

「しまっちゃ、った…」

景色を見てもただ流れているだけで目的の場所から離れているのは事実だった。

瑠唯ははっとすると美羽の手を見る。

「みう、だいじょう、ぶ?」

「あ、ちがでてる…」

床でこすったのかてのひらは血だらけだった。

瑠唯は小さな悲鳴を出し自分のリュックをあさりだした。

瑠唯のリュックにはいつも傷の手当てをする者が常備されているからだった。

しかし焦っているからかなかなか見つからない。

どうしようと思っていると後ろから女性が話しかけてきた。

「あの、大丈夫?」

「あ、みうが、おてて、ちでいっぱいで…」

「みせてごらん?あら…これは一度手を綺麗にしてから処置した方がよさそうね」

床に座っているのは邪魔だからと女性が椅子に座るのを促す。

「君たちはどこまで行こうとしてたの?」

女性の質問に二人ははっとする。そう、水道橋は過ぎ去ってしまったからだ。

「すいどう、ばし…」

「おべんとう…」

二人の沈んだ声に女性は明るく話しかける。

「じゃあ一度次の駅で降りましょう。私も一緒に降りるから駅員さんに話して手綺麗にしてもらおう?」

「おねえさん、いくばしょあるんじゃねえの?」

「ぼくたち、ふたりで、いけるよ?」

双子の少し拒否を感じる言葉に女性が苦笑いをする。

「実は私も水道橋で降りるつもりだったの。anfangのコンサートに行くために」

「「え?」」

「けど他の人たちの迫力に押されちゃって…結局降りそびれちゃった…」

はははと頭を書きながら説明する女性に双子は驚く。

「そうなの?」

「おれたちといっしょだな!」

「だから水道橋まで一緒に行かない?」

「あ、けどななちゃんが…」

思い出したように瑠唯が下をむく。

「ななちゃん?」

「うちのおねえちゃんが知らない人についていくなって…」

どうしようといったように女性を見る美羽。

女性は少しだけ考えるとにこりと笑って双子を見る。

「それじゃあ私があなたたちに連れて行ってもらおうかな?」

「「え?」」

「私が後ろからついていくから、間違ったらもちろんヒントを出すし、どう?」

着いて言ったら駄目だけど自分についてくるなら…

双子は顔を合わせて頷く。

「「おねがいします!」」

その返事に女性も頷いた。













チェックが終わった後戻ってきたメンバーはもちろん弁当が来ないことに気付いた。

「あれ?ななちゃん今日来ないの?」

「いや、朝はちゃんと来るって言ってた…弁当の準備も始めてたし…」

「なにかあったのかな?」

「…」

不安そうな香南は一目散に雅の方へやってきた。

「雅さん、携帯。」

雅は一瞬悩み、覚悟したように携帯を渡した。

不審に思いながらも香南が携帯を見ると特に何もない様子だった。

「何もきてねえ…」

どうしてだ?と不思議に思い携帯から電話をかけようとする香南に雅が声をかける。

「香南、かけても七海ちゃんは出ないんだよ。」

「は?」

香南は雅を睨みつけるように見る。

「雅さん、さては事情知ってるな?」

燎の言葉にため息をつくとメンバーの方を見る。

「皆落ち着いて聞いて欲しい。」

そして今日先ほど七海が怪我をしたこと、病院に行くから代わりに双子が今電車でここに二人で向かっていることを説明した。

香南は最初はちゃんと聞いていたが、徐々に手をにぎりしめているのが震えていた。

説明の最後には部屋から出ていこうとする。

「ちょっと香南!だから言いたくなかったんだ!」

「何言ってんだよ!七海が怪我してるって聞いて何もしないわけにいかねえ!それにあいつら二人だけで電車なんてしかもこんな都心にあぶねえじゃねえか!」

「ちゃんと携帯持たせてあるようだし万が一何かがあった時にはかけてくるだろ?それにちゃんとメモも渡しているらしいし、万全を期しているそうだ。だからお前はちゃんとここでメイクをして、リハーサルしなさい。他の3人も、いいね?」

「えー?双子ちゃんGPSで探してさ、撮影しに行こうよ!はじめてのおつかいじゃん!」

「だよねえ。こういった細かな記録を残しておいた方が後々思い出しやすいと思うんだけどねえ…」

「なあ本当に今日時間ねえの?」

そう、こうなることをわかっていたから七海の言葉にすぐ頷くことができなかったのだ。

「だからお前らはちゃんとスケジュール通りに動きなさーい!!!!」

久々のおかん雅のさく裂だった。













「うんそうです。ちょっと色々あって今水道橋の次の駅です。もう少ししたら行けると思うので待っててください。すいません。ええ。それじゃあ。」

女性はそう言うと携帯を切った。

駅員室まで来た3人は早速事情を説明し美羽の手当てをしてもらうことになった。

手当ての間、女性は待ち合わせをしていた人に電話をかけていた。

「おねえさん、だいじょう、ぶ?」

「うん大丈夫よ。コンサート一緒に行く人に遅れますって伝えただけだから。」

「そっか、」

瑠唯と二人で会話をしていると手当てが終わったのか美羽が戻ってきた。

「まったく、最近の若い人は危ないね。僕たちも、ちゃんと周りを見て動くんだよ?」

「「はーい、ありがとうございました!」」

ちゃんとお礼をすると3人は駅員室を出ることとなった。

「さて、二人はどこに連れて行ってくれるの?」

「「すいどうばし!」」

「うんそれはわかってるから…どっちの方向に行く?」

「えーっとみぎ!」

「えっ、ひだり!」

二人が発した言葉はてんでバラバラ。女性は苦笑いすると右を指す。

「水道橋行きは右のあの黄色い看板らしいわよ?」

「ほら!」

「うう…じゃあ、みぎ!」

二人が進むのを後ろから女性が追いかけた。

「ところで、二人はなんで水道橋に行くの?小学生二人で危ないよね?」

「おれたちおべんとうをとどけるんだ!」

「にーちゃんが、まってるから!」

「へえ…あんなところに…」

女性は不思議に思いながら二人の後ろをついていった。













電車に乗っている中双子は女性に話しかけていた。

「おねえさんはanfang好きなの?」

「私?うーん実はあまり知らないのよ。」

「しらないのに、いくの?」

「今日一緒に行く人がものすごいファンなの。私もともと人ものにそんな愛情注いだことないからそしたら一緒に行こうって言われていくことになったのよ。」

「「…ふーん…」」

まるでわかっていないと言った様に双子が生返事をする。

「まあ、小学生にはわからないよね。二人はanfang知ってるの?」

双子はびっくりしたように肩をあげるが、二人で顔を見合わせて女性の方を見る。

「しってる、けど…」

「だいすき、なの」

先ほどと打って変わって少し警戒心を持った言葉だった。

「そっか。二人は今日のコンサート行くの?」

「「うん!」」

これに関してはとても可愛い笑顔で返事をしてくれた。

「そうなんだ。じゃあどこの席かはわからないけど一緒の空間で楽しもうね」

「「うん!」」

3人はそれぞれの小指をつなぎ合わせて約束をした。

『次は~水道橋~水道橋~』

「あ!すいどうばし!」

「よし、今度こそこけないように注意しながら降りようね。」

「みう、きを、つけて!」

「るいもな!」

二人の真剣さに女性は微笑ましく後ろから傍観していた。

ドアが開くとファンがまたもやすごい勢いで出ていたが3人で力を合わせ何とか外へ出ることができた。

そして人が少なくなった頃を見計らい水道橋の改札を出たのだった。










「ふう、なんとか水道橋に出れたわね。」

「うん!」

「よかった!」

出口から外へ出るとドームへはわかりやすく表示がなされており、よっぽどの事がない限り迷わないようだった。

「それじゃあ、ここでお別れね。」

「おねえさんありがとう!」

「ありがとう!」

双子は女性に向かって笑顔で挨拶をした。

「こちらこそ連れてきてくれてありがとう。楽しい冒険だったわ。」

二人の頭を撫でるとじゃあねと手を振りドームの方へ向かっていった。

しばらく女性が去って行った方を向いていたが美羽がよし、と瑠唯の手を握る。

「よし、るいあとすこしがんばるぞ!」

「う、うん!」

二人も手をつないでドームの方へ向かいながら七海から渡されたメモを見る。


―ついたらまずどこでもいいからいりぐちをさがす。

そのいりぐちのひとにじぶんたちのなまえをいってチケットをわたす。―


指令ではこうなっていたためドームについて最初に入り口を探した。

「うーん、みつからないなあ…」

「すたっふ、さんに、きこ?」

「そうだな…」

きょろきょろスタッフを探していると道案内しているスタッフを発見した。

双子はそのスタッフの元へ向かうとチケットを見せた。

「ぼくたち、ひむかい、るいとみうっていいます、あの、」

「にーちゃんにべんとうとどけにきたんだ!」

「ひむかい、おべんとう…ああ、君たちか!」

スタッフは笑顔でちょっと待ってねと言うと携帯をかけ始めた。そしてしばらく待っていると雅が迎えに来た。

「「みやびさんだ!」」

ようやく顔みしりに会えたと言うのもあってか双子は駆け足で雅に近付く。

「よく来たね。さあ、香南がお腹をすかせて待ってるよ。早く行こうか。」

「「うん!」」











向かった場所は客席だった。メイクも終わりリハーサルを行っていたようだった。

こっそりと前の方へ行きリハーサルを見ていたが双子は首をかしげる。

「にーちゃんげんきない?」

「な、い?」

その言葉に雅が苦笑すると双子の頭を撫でた。

「香南ね、きっと二人が声を書けたら凄く元気になると思うよ。ほら、MCの部分まで来た。二人で声かけてごらん?」

双子は顔を合わせ頷くと香南の方を向いた。

「「にーちゃーーーーん!!がんばれー!」」

一生懸命出した声は香南に聞こえていたらしい。香南は目を見開くと急いでステージを飛び降り双子の元へやってくる。

「美羽、瑠唯…」

「にーちゃん、またせてごめん!」

「はい、おべんとう、もって、きた!」

双子たちが笑顔でお弁当を指す出すと香南の目から涙があふれ、気がつくと双子を抱きしめていた。

「良かった…ほんとうに、よかった…」

これに悲鳴を上げたのは雅だった。

「香南っ!!メイクが!!メイクが落ちてる!!」












リハーサルを一時中断してステージの上で弁当を広げる。

すると美羽が一度こけたからか弁当の中身はぐちゃぐちゃだった。

「あ、にーちゃんごめん…」

「大丈夫、食べられるよ。」

そして香南は一口お弁当の中身をほおばる。

「「どう?おいしい?」」

「ああ、おいしい。お前らが運んでくれたお弁当は最高だな。」

「「やったー!!」」

二人は手を挙げて喜んだ。そして気が抜けたのか鳴り響くのは二人の腹の音。

香南はクスリと笑うと二人に隣に座るよう促す。

「一緒に、食べようか。」

「「うん!」」










これにて双子のはじめてのおつかいは終わった。

双子は満足したのかステージが始まる前に寝てしまい結局コンサートを見ることはなかった。

起きた後「どうして起こしてくれなかったんだ」「おねえさんとのやくそくが」と七海や香南たちを責めるのであったがその寝顔を見て、誰も起こせないなと感じる大人組であった。

ご飯を食べた後美羽がすりむいた理由を聞きまたもや香南はぶちぎれ。

コンサート中に注意を呼び掛けたそう。

そしてこの出会った女性と言うのは池上の連れです。

そこらへんも妄想して楽しんでいただければなと思います。






いつもお気に入り登録、拍手ありがとうございます。

双子人気にびっくりです!

これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ