男の日っ!~スタンプラリー編~
双子が小学一年のころの夏の話です
僕の知らないことを
君たちはなんでも教えてくれる
天使よ
今日は何を知る?
clarity love 男の日っ!
日向家には男の日と言うものがある。
「本当にお昼の準備もいいのでしょうか?」
「ああ。休みなんだからゆっくり遊んでこい。」
「「たのしんできてね!」」
七海は365日休みなく家事をし、双子の世話をしている。世間で言う主婦である。
そんな彼女のために一ヶ月に一度日向家の男だけで過ごす日を作った。
その日七海は家事を一切しなくて良い。その日は日向家の男性軍が全てしてくれるのだ。
その間七海にはなるべく外に出てもらい家のことを忘れてもらおうという考えである。
提案されてたのはつい最近であった。
家で見ていたテレビ番組でたまたま芸能人が普通のお宅へお邪魔して子育てや家事を体験すると言うものであった。
それを見て何か考えるところがあったのか次の日、香南が突然提案したのだ。
「なな、一ヶ月に一度俺が双子の面倒みるからななは遊んでこい。」
「…え?」
「男同士で遊ぶのも良いと思ったんだ。どうだ?」
確かに七海は女で男である双子の気持ちがわからないこともあるかもしれない。
それに七海も女である。友達と服を買いに行ったり、遊びに行きたい気持ちもないわけではない。
「…いいんですか?」
「ああ。」
それから双子にも伝えると初めは驚いた様子であったがしだいに嬉しそうにはしゃいでいた。
早速七海も琴乃に連絡を取り遊びに行くことになったのである。
「お土産買ってきますね。いってきます!」
「いってらっしゃい」
「「らっしゃーい!」」
3人は笑顔で七海を見送った。
七海から事前に一日のスケジュールをもらっていた。
初めは洗濯と掃除であった。
洗濯機ぐらいは独り暮らしの長い香南にとってお手のものだったがその中身がその頃と全く違う。
小さな靴下、Tシャツ、女性の下着、スカート…
本当に自分は家族を得たんだ
香南は改めて思った。
掃除をしようとリビングへ行くと双子は仮面Xマンを見ていた。
香南はクスリと笑うと双子の傍へ寄る。
「美羽、瑠唯、今日はどこへ遊びに行く?」
なるべくたくさんの人がいる場所へは行きたくなかったが、双子が行きたいところ優先でどこか連れて行ってやりたかった。
双子に問いかけるととても悩んだ様子だったが途中のCMを見て指をさす。
「にーちゃん!おれ、これいきたい!!」
「これっ!」
「これ?」
眉をひそめテレビを見ると某コンビニでスタンプラリーが行われており、複数店舗にて違う種類のスタンプを4種類以上集めると景品がもらえると言うものであった。
「コンビニか…」
「「だめ?」」
上目遣いの双子に言われては香南も降参せざるを得ない。
それにコンビニならばそれほど人が集まっているわけでもない。
「じゃあ昼ごはん食べたら行くか。」
「「やったー!!」」
「それまでは宿題ちゃんとするんだぞ?」
「「…はーい…」」
双子は一気にテンションが急降下した様子だったが昼からの事を思うとわくわくするのか終始笑顔でテレビを見ていた。
それに安心すると香南は掃除機を準備し以前暮らしていたマンションよりも広い家を掃除し始めた。
「よし、準備いいな?」
「「うん!」」
香南の作った野菜の多いチャーハンを食べ、コンビニ巡りの準備を始めた。
夏の日差しがまだまだきついため双子に帽子をかぶせる。
香南自身もサングラスを装着し、帽子をかぶり、準備万端である。
あらかじめ対象のコンビニを検索しており、近いところに複数あることがわかっている。
天気もいいと言うことで自転車で向かうことになった。
小学校入学祝いにanfangメンバーからもらった新しい自転車に乗れると言うことで双子もとても嬉しそうである。
香南は七海のままチャリを借り出発した。
まず入ったところでそのスタンプラリーシートをもらう。
「「すいません!かめんXマンのスタンプのください!」」
店員は双子の笑顔に癒やされ優しく場所の説明をする。
双子は早速スタンプをシートに押していく。
香南もせっかくだからとスタンプを集めることにした。
すると双子がもう一枚シートを取りスタンプを押していた。
「にーちゃん!ななちゃんへのおみやげ!」
「おみやげ!」
そういって七海用にもう一枚シートをもらいそこに丁寧にスタンプが押されていた。
「そうか。ななもきっと喜ぶぞ。」
「「うん!」」
嬉しそうにうなずく双子がふと近くの売り場を見た。
「にーちゃん!!かめんXマンのくじ!!」
「く、じ!」
美羽が興奮したようにその売り場へ走り出す。
瑠唯も美羽についていった。
香南はとうとう来たかと冷や汗をかく。
以前七海と双子とコンビニに来た時双子の欲しいものをなんでも買おうと思ったら七海に怒られた。
そして双子と出かける時に使うお金を制限されたのである。
何かを見に行く時の入場料などは良いのだが、何かお土産や物を買う時にはなるべく無駄なものは買わないことになっていた。
香南は首を振ると双子に近付く。
「おい、まだ数軒回るんだろ?まずスタンプ集めねえと七海帰ってくるぞ。」
「あっそっか。」
「ななちゃんのために、はやくしないと!」
水分補給のためにスポーツドリンクを購入し早速次の店舗へ向かう。
それから数軒回りようやく残りスタンプは一種類である。
スタンプがかぶったりしたこともあり、一番良い商品であるすごろくが欲しかったため時間がかかったがようやく最後を見つけることができた。
各店舗に向かう度に双子はくじの方を見ては香南を見つめ、それに香南は必死に耐えていた。
またコンビニのスタッフにanfangのカナンだとばれそうになったところもあり押してすぐに出てきたコンビニもあった。
本当に何とも言えない満足感を香南は感じていた。
「やった!ぜんぶあつまった!」
「やったね!」
双子も嬉しそうにはしゃぐ。
3人はすごろくをもらい満足していたが、やはり双子が気になるのは後ろのくじのようだった。
「なな、帰ってくるぞ?夕飯の準備もしねえと。」
ここで折れては駄目だと何度も心の中で唱える。
「にーちゃん…」
「くじ…」
香南の中の悪魔が呼びかける。こんなにも双子が欲しがっているしいいのではないのか。
しかし天使が負けじと対抗する。あれだけ七海に何でも買ってやってはいけないと言われたではないか。
どうしよう、どうしようと悩んでいると双子が香南の方をじっと見つめる。
「「にーちゃん…」」
香南は自分の中の何かがプチっとちぎれる音がした。
「ただいまー!」
「「おかえりなさい!」」
七海が琴乃とのショッピングから帰ってくるや否や双子が迎えてくれた。
香南はどこに行ったのだろうとリビングへ行くと目の前に香南が立っていて香南はガバッと腰を折った。
「七海、悪い。約束破った。」
「…え?」
そして机の上にはいくつもの仮面Xマングッズが置いてあった。
「こ、これは?」
「…仮面Xマンのくじをして、良い景品が当たらないから、何度かしたら…」
「な、ななちゃん!!ほらこれ!コップもたくさん当たったぞ!」
「ファイルも、たくさん!」
双子も一生懸命援護しているが七海には聞こえてない様である。
「3人とも…」
ゴゴゴといかにも邪悪なオーラが後ろについている七海に双子と香南は肩をあげる。
「今後、今年の夏はアイスクリーム抜き!」
それ以降男の日は引き続き毎月行われることになったが、この時の七海の鬼のような顔での説教に懲りたのか、双子も男の日だけは我儘を言わなくなった。
ただし、お土産であるすごろくを見せると少しだけ顔をほころばせ仕方がないとアイスクリームは週一で許されることになった。
たくさんのコップやファイルは日向家で使うにはあまりに多すぎる量があったためanfangメンバーにも支給されることとなった。
anfangのスタジオには仮面Xマンのものが多くなったのは言うまでもない。
久々に番外編を書きました。
そしてこの男の日っ!に関してはシリーズものでして、他にもいろんなことしでかす予定です。
また機会があれば書きたいなって思っています。
おまけを活動報告に書いていますのでまた読んでみてください。
いつも拍手ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!