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天使の悪戯 01

双子が小学1年の冬の話です

そっと頭を撫でる







そっと額に唇を寄せる








祈りながら









ぎゅっと手を握りしめた








clarity love 天使の悪戯 前編











七海の家に電話がかかってきたのは双子が学校へ向かい香南も仕事へ出かけてすぐのころだった。

『もしもし、私●×学校で瑠唯くんのクラスの担任をしております鈴木と申します』

「はっはい!いつもお世話になっております。」

どうしたのだろう。何か瑠唯に起こったのだろうか?突然のことに七海は不安になった。

『実は瑠唯くん体調が悪いと保健室へ向かわせたのですが熱が38度ありまして…』

「さっ38度!?」

落ち着いて考えてみる。

朝、起きてきた時は具合が悪そうでもなかった。

ただ少しだけいつもより明るかった。もしかしてそれが信号だったのだろうか…?

七海の頭で様々な考えが渦巻く。

『それで瑠唯くんを早退させようと思うのですが…』

「すいません。ご迷惑おかけしました。今迎えに行きますので」

とにかく家にずっといるわけにもいかない。

今年はインフルエンザが流行っている。

おそらくどこからかもらってきてしまったのだろう。

とにかく早く病院に行って薬をもらってこなければならない。

ところが先生の話は続いていた。

『はい。あとすみませんもう一つ要件がありまして』

そして向こう側で違う人にかわる音がしていた。

『すみません。美羽くんの担任をしております増田です。』

「は、はい。」

もしかして美羽もインフルエンザなのか…?

七海の不安をよそに意外な事を話し始めた。

『実はうちのクラス本日休んだ生徒が三分の二以上おりまして、4日間学級閉鎖になりまして…』

「え?!」

学級閉鎖。七海だって今まで経験したことのないことだった。

『美羽くんは元気なのですが、瑠唯くんの話を聞くと…』

話を聞いているともしかしたら美羽もうつされているかもしれない。しかし今元気だと聞くとまだ菌はもらっていないのではと感じる。

そうなると一緒に家にいると美羽にも移ってしまうのではと不安がよぎる。

「えっと、すみません瑠唯は今すぐ迎えに行きます。美羽に関しては少しお待ちいただいても良いですか?」

もう一度電話をかける旨を伝えると七海はとある電話番号の番号を押し始めた。









香南の電話が震えだしたのは本日一本目のラジオ収録が終わった頃だった。

この一週間anfangは新曲発売の宣伝のためのテレビやラジオ出演、雑誌インタビューの仕事ばかりだった。

前の様にではないが、なるべく雅に携帯を預けるようになっていたためその電話に気付いたのは雅だった。

休憩と言うこともあり雅は携帯を持って香南に近付く。

「香南、電話。ななちゃんから」

突然の電話に驚いたのだろう。七海は普段このような仕事真っ最中というような時間には電話をしてこない。

何か緊急事態があったのだろうかと急いで香南は電話に出る。

「なな、どうした?」

『あ、香南さん、お仕事お疲れ様です。』

凄く申し訳なさそうに言葉を述べる七海に香南は優しい声を出す。

「いや、ちょうど一本目が終わったところだ。どうした?」

『それがその、瑠唯が38度の熱を出してるらしく早退させて欲しいと電話が来たんですけど…』

「38度!?大丈夫なのか?!」

香南から見ても瑠唯はそんなに具合が悪そうではなかった。

子供のことだから突然熱が高くなることもある。

香南も心配そうに唇をかむ。

『えっと、これから迎えに行こうと思うのですが…実は美羽のクラスが学級閉鎖になりまして…』

「が、学級閉鎖?!」

学級閉鎖とは話でしか聞いたことがない。

確かにテレビで最近多いと聞いていたがまさか近くでそのような事が起こるとは思っていなかった。

『あの、香南さんのおうちに美羽いさせてもいいでしょうか?それでできれば香南さんに美羽の面倒を見ていただければと…まだ元気だと聞いているのでおそらく移っていないんだと思うんです。けど瑠唯の傍にいさせたら移ってしまいそうで…無理なのはわかっているのですが…』

心配そうにか細く呟く七海。

きっと香南に迷惑はかけたくなかったのだろう。

しかし琴乃に頼むと言っても限度がある。

香南と一緒に双子を育てていこうと決意して結婚したのだ。

少し無理でも香南に声をかけてみたのだった。

「何言ってるんだよ。無理じゃねえ。」

『え?』

「瑠唯と一緒のところにも置いとけねえし、俺んところも学校から遠いし迎えに行くから。」

『香南さん…』

「なな一人のことじゃねえんだ。俺にも協力させてくれないか?」

『ありがとう、ございます。』

七海は少し泣いているようだった。

どうしたらいいかわからず香南は七海を慰めると電話を切った。










「双子ちゃん、どうしたんだ?」

雅が不安そうに香南を見ていた。

「瑠唯が高熱、美羽のクラスが学級閉鎖、だそうだ。」

「えー!?るいるい大丈夫!?」

後ろの方で耳を立てていた夏流が驚く。

「学級閉鎖とか本当にあるんだ。」

「すげー美羽貴重な経験じゃねえか」

後ろの二人は全く違うことを考えていた。

「瑠唯は七海が迎えに行く。雅さん、昼休憩抜けていいか?美羽迎えにいきてえんだ。」

「うーん、迎えに行くのは良いけどずっと美羽くん家に一人でいるのか?今日だって帰れるの夜遅いぞ?」

「けど、移って欲しくねえんだ。我慢してもらうしかねえ。」

香南が悔しそうに言うと夏流が手をポンとたたく。

「ここに連れてきたらいいじゃん!移動多いけどみうみうなら大人しくしてくれるし」

ね~いいでしょ~と雅に夏流が頼む。

「まあ、美羽くんならね。君たちのやる気もあがってくれるだろうしね。」

「おう!美羽連れてこいよ!この4日間は俺たちが可愛がってやるよ。」

「たくさんのおじさんに囲まれて美羽くんも忙しいだろうね。」

「お前ら…」

香南は胸の奥に感じたことのない感情を抱くと思わず泣きそうになる。

必死にこらえながら頭を下げる。

「ありがとう。」












香南が雅の車を借りて学校へ迎えに行く。

正面玄関に行き自分の名前と美羽の名前を伝える。

玄関の事務員はマスクにサングラスと言う不審者極まりない恰好の香南を不審に思うが名前が一致しているため上がらせる。

そんな不審に思っていたなど香南は露にも思わず急いでクラスへ向かう。

すると迎えが最後だったらしく美羽は担任と二人だけで作業をしていた。

「すみません。遅れました。」

「いえいえ。こちらこそお忙しい中すみませんでした。」

「にーちゃん!」

担任に礼をすると美羽は一目散に香南のところへやってきた。

そしておでこを触り熱はないか確認する。

「調子がおかしいところないか?」

「うん!おれげんきだよ!」

いつものようにニコニコ話し美羽のほっとすると途中で買ってきた子供用のマスクをつけてやる。

万が一移らないようにするためだった。

「じゃあ美羽くん4日後元気に学校でね」

「はい!せんせいさようなら!」

ランドセルを背負うと香南と手をつなぎクラスを離れる。

「瑠唯が熱を出したらしいから移らないように俺としばらく二人で暮らすことになった。」

「うん!ななちゃんおれのクラスにきたとき言ってくれた。」

七海は瑠唯を迎えに行く前に美羽に会いに行ったようだった。

美羽の手をぎゅっと握る。

「大丈夫。夏流も周も燎もお前と会うの楽しみにしてるから。しばらく楽しく暮らそうな。」

「うん!」

美羽にとっては七海と瑠唯と離れて暮らすのは初めてだった。

どんなに心細いだろうと心配していたが、元気な美羽の姿を見て少しだけ安心した香南だった。

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