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そうだ、車を買いに行こう! 後編

もっと早く






もっと遠く






駆け抜けろ







君に届くその日まで









clarity love そうだ、車を買いに行こう! 後編









ひたすらパンフレットを眺めた後は試乗を何度も行った。

様々な車の店に行き、パンフレットで良いと思った車に乗りまくった。

双子たちから見れば外国車の方がカッコイイと思ったらしい。

候補も外国車のところが多かった。

「み、美羽くん、瑠唯くん、本当にこういうのが良いの…?」

「うん!!」

「かっこいい、よ!」

今日は外国車めぐりツアーと題し、ひたすら外国車のお店に来ていた。

事前に説明してあったのか、名前を言うと奥の方に通してくれた。

日本車と比べ、輸入車のためどうしても値段が高くなる。

七海は背中に冷や汗が出るのを感じていたが、双子は何も知らないのでにこにこと車を見て回る。

「うーん、やっぱりスポーツカーとなると人数が限られるな…」

「そうですね。やはりカーレース用に作られておりますので…」

店員さんに説明を聞いている香南を横目に七海は双子の相手をする。万が一車を壊すようなことになったら危ないからだ。

香南が店員と話し終えたのか次のところへ行こうと促す。

すると美羽が外を向いて嬉しそうに叫ぶ。

「あっ!!てんとうむし!!!」

急いでそちらの方を向くとすでに車は走り去っており見えなくなっていた。

「てんとう・・・むし?」

「うん。うちにあったくるま!てんとうむし!」

香南が首をかしげるのを見て瑠唯が説明する。

しかしよくわからなかった。

七海は苦笑しながら詳しく話してくれる。

「前家にあった車です。車が赤くて丸いので皆でてんとう虫って呼んでいたんです。」

「へえ、」

「父が宝くじを当てましてお金を使うぞーって買ったものがてんとう虫だったんです。双子が生まれて5人じゃもう乗れないって話をしていたんですけどね。」

「そうか…」

「さっ次に行きましょう!たくさん乗ってどれが良いか選びましょう!」

七海が双子を雅さんから借りた車に乗せる。

今日中にたくさんまわっておきたかったためそれ以上香南は何も言わず次の場所へ向かった。










翌日、スタジオへ向かうと香南は早速雅に昨日の報告をした。

「結構乗ってきたんだね。どうだったんだい?」

「大体決まった。やっぱ4人でってなるとあれがベストだった。」

「そうか。じゃあ早速交渉に今度行こうか。」

外が決まっても中の付属品がたくさんあり、更に特注で中の素材も変えることができる。

これは雅がいたほうが良いだろうと外だけを決めに行きあとは雅と香南、七海で店に交渉に行こうと言うことになっていた。

「ああ、よろしく頼む。それで、その…」

「なんだい?」

「車で”てんとう虫”って言われそうな車ってあるか?」

「てんとう、虫…?」

「赤くて、丸いからてんとう虫って言ってたらしいんだけど」

「・・・あ、もしかして…」











一週間後3人は車の店に来ていた。

香南たちが選んだのはポルシェ911。つい最近新型が発売されたのである。

不具合があると心配されたが、スポーツカーらしい4人乗りと言えばこれぐらいしか考えられなかったのだ。

外国車なため乗り心地に心配があったが、柔らかい素材に変えてもらったり様々な点で乗りやすいようにしてもらいなんとか決めることができた。

「じゃあ、これで。」

「ありがとうございます。」

様々な書類に香南が記入をして行く。

横で七海がはらはらと覗いている。

「か、香南さん本当に良いんですか?」

「…なにが?」

「清水に飛び込む準備は…」

「?」

七海は少し怖い顔で深呼吸をしている。

それをみて雅がくすくす笑う。

「ななちゃん落ち着いて。香南だって無一文じゃないんだ。一応売れっ子歌手だしお金のことは心配しなくても大丈夫だよ。」

「は、はいですが…」

初めてこんな大きな買い物をするのだ。

深呼吸しなければやってられなかった。

「七海、大丈夫だ。買ってしまえばこっちのもんだ。」

「は、はい。」

七海を宥めながらすらすらと記入していく。

記入が終わると懐から財布を出し、カードを出す。

「これで、買えるか?」

そのカードは某有名カード会社のプラチナカードだった。

「はい可能でございます。ありがとうございます。」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

何気なく香南がカードを渡そうとするのを止める。

「わ、私にさせてもらっても良いでしょうか?」

「?ああ。」

香南からカードを借りる。

そのカードは一枚のプラスチックのはずなのにとてつもなく重く感じた。

七海は深呼吸をすると両手でカードを持ち店員に渡す。

「よっよろしくお願いします!」

気分は清水の舞台を飛んでいた。












3カ月後、いよいよ今日は車庫入れの日である。

七海は朝からそわそわしていた。

双子もどこか落ち着きがなく家の中を走り回っていた。

ただ唯一、香南だけがその3人を見渡し笑顔を浮かべていた。

チャイムが鳴ると急いで玄関へ向かう。

「はい!」

「お待たせいたしました。車をお持ちいたしました。」

その人の向こうに見えるのは頼んでいたポルシェ911。

双子の目が一層きらきらし始める。

車庫に入れてもらうのを3人はじっと眺めていた。

「以上でよろしかったでしょうか。」

「ああ、ありがとう。」

車を運んでくれた人は一礼すると去っていく。

すると一斉に3人は車を見渡す。

「かっこいいー!」

「にーちゃ!はやくのろのろ!」

「すっ素敵ですね…!!」

3人の笑顔を見て更に笑みを深める。

「ちょっとまて。もう一つ頼んだものがあるんだ。」

そう言うと香南はどこかへ携帯をかける。

確か頼んだものはこれだけだったはずである。

一体なんだろうと香南を見ていると電話し終えた香南が車道を見ている。

3人も車道の方を向くと向こうの方から見覚えあるものがやってきた。

「え、香南さん…」

「これは、大切なものだと思ったんだ。」

目の前に現れたのは”てんとう虫”ことフォルクスワーゲン社のビートルだった。

「てんとうむしだ!!」

「てんとうむし!!」

「お待たせしました。」

車を持ってきた人が窓から顔をのぞかせる。

「ああ。これの隣に置いてくれ。」

「かしこまりました。」

「これっ…!!買ったんですか?!」

まさか家の物になるとは思ってもおらず七海は驚く。

「中古に出たものを探した。意外と残っていてすぐに手に入れることができたんだ。こういうことしかできないけれど…なな?」

「「ななちゃ??」」

七海を見るとてんとう虫を見ながら泣いていた。

「父がっ、本当にこれに乗るときだけは誇らしそうにでっ、いつも、笑顔だったけれど、更に笑顔で…」



本当は売るのはいやだった。

けれどお金もない。

親戚からの圧力、七海は反対することができなかった。



香南が七海を抱きしめ、頭を撫でる。

「これからは、七海が運転したらいい。…な?」

「は、はい…!」







それ以後、香南が運転する時はポルシェ911、七海が運転する時はビートルに乗ることとなった。

七海が免許を持っているか疑問視する声もあるかもしれない。

もっともである。

七海は後にこれを運転するために免許を取ることになるのだが、その話はまた今度。

と言うことでポルシェとビートルでした!

なんとこの二台ともドイツ車なんです!

選んでいるうちはなんにも思わなかったのですが、選んだ後気付きかなり驚きました。



色々とドイツには縁のある話だなと思いました。

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