成長の欠片 中編
このレンズの向こうには
君の笑顔が
華やいでいる
clarity love 成長の欠片 中編
運動会の前日、七海は双子を早めに寝かせる。
そう言えば昔、自分が小学生のころも両親に同じことをしてもらったのを思い出した。
思わず苦笑いをする。
懐かしさと共に下のリビングへ降りると香南が真剣な顔で運動会のプログラムを見ていた。
七海がリビングに入ってきたのに気付くと手まねきをする。
ぴょこぴょこ香南の方へ向かうとプリントを一枚渡された。
「なんですか?これは。」
「運動会当日効率よく動けるように作戦を考えてきた。」
よくよく見ると一番上に『祝☆運動会!がんばっちゃおうね☆作戦』と書かれていた。
いつの間にこんな作戦会議をしていたのだろうか。
そして下にはメンバーの名前と七海の名前の横に何やら役割が書かれていた。
七海は昼ごはんを作る係だったが他のメンバーがどうもわからなかった。
「えっと、この雅さんの横に書いてあるのは…」
「ああ、それ場所取り係。場所取りって大変なんだろ?」
七海は小学生のころを思い出す。
運動会の当日、確かに朝お父さんはすでにいなくて、学校に行って運動会をしているといつの間にビデオ撮影をするお父さんがいた。
そしてお母さんに場所取りが今年はどれだけ大変だったかを語っていた気がする。
なにより先日琴乃の親に運動会がどのようなものか聞いていたのだ。
『うーんそうねえ。場所取りが大変なのよ。小学生のころって親がはりきるでしょう?七海ちゃんのお家と連携して頑張ってたわねえ。』
この言葉に実際メンバーが来てくれるのに場所取りに失敗したらどうしようかと思っていたのだ。
ご飯も作るし、場所取りもとなると起きる時間に恐怖を感じていた。
「はい。何やら大変そうで…ですから雅さんに頼むのは…」
「いや、大変だからこそ雅さんに頼んだ方が良い。雅さんはこういうのにかけては天才だから。」
確かに、マネージャーという職業で様々な良い仕事を効率よく隙間に入れる能力にはたけているのだろう。
場所取りでもその能力を発揮してくれるかもしれない。
いい場所をきちんと見分け、そこに全員がくつろげるレベルの広さの場所を取る。
「まあ、雅さんがこれなら俺に任せてって言ってたし。」
「そうなんですか…では、お言葉に甘えて…」
そしてさらに下を見る。
「えっとこの夏流さんと周さんのビデオ係とは…?」
「ああ、それこれ。」
机の下でガサゴソしたかと思うと机に箱が二つ置かれた。
「うちにビデオカメラってないだろ?だから雅さんに空き時間に買ってきてもらった。二つあったら美羽と瑠唯どちらとも平等に取れるだろうし。」
「えええっ!?」
何事もないように箱を開け中からビデオカメラを取り出し説明書を読む香南。
七海は雅さんに明日謝ろうと思いつつ香南を見る。
香南がこんなに気合を入れているとは思わなかったのだ。
呆然としているとカメラの使い方がわかったのか香南はビデオカメラのスイッチを入れた。
「なな、テストするからそこに立ってくれないか?」
「えっ今からですか?」
「そう。」
真剣に画面を見つめる香南。
本当に、美羽と瑠唯の”お父さん”を一生懸命やってくれている。
いや、香南だけではない。バンドのメンバーが一丸となってやってくれている。
七海が一人だったら今ごろどうなっていただろう。
お弁当作って、下手したら仕事が入ってそれだけで終わってしまったかもしれない。
自分が経験してきた思い出を作ってあげれなかったかもしれないのだ。
本当に、本当によかった。
思わず涙が出そうになった。
「なな…?どうした・・?」
香南が画面からふと顔をあげる。
七海は瞬きをすると首を振る。
「いいえっ何でもないです!!続きをどうぞ!!」
「…ああ。じゃあいくぞ。3・2・1はい」
ぴぴっという音に録画が始まったと緊張してしまう。
香南も最初は何も言わず七海を撮り続けていた。
しかしそれではいけないと質問をし始める。
「なな、えっと、明日はお弁当何を作りますか?」
「うわっはいっ!!明日は、たこさんウィンナーいっぱい作ります!」
「うさちゃんもか?」
言わずもがな林檎の事である。
もちろんというように笑みを浮かべ頷く。
「うさちゃんもいっぱいです!あとはお楽しみです!この日のために訓練してきました!」
「そうか。それは明日が楽しみだな。」
香南も思わず笑いながら答える。
それでは明日をお楽しみにという声とともにぴぴっという音がし、録画が終了した。
「これは使いやすいと思う。流石雅さんだな。」
「そうなんですか?あっではもう一つは私がテストしても良いですか?」
そう言いながらもう一つの箱を取り出す。
二つとも同じ機種の色違いを購入しているため使い方は一緒のはずである。
箱から機械を取りだすと早速準備をする。
「そこスタートボタン。」
「はい!!えっとでは香南さん!立ってください!」
まさか今度は自分が被写体になるとは思っていなかったのだろう。
香南は驚いていた。
「あっもしかしてテレビ以外で写るのはいやですか?」
「いや、その…」
香南はまさかホームビデオに自分が写ると思っていなかったのだ。
照れくさそうにそれでも少し嬉しそうに立ち上がる。
「録画はこのボタンですね!それではいきますよー!3・2・1すたーと!」
ぴぴッという音と共に録画が始まった。
七海は香南と同様ズームなどの動作チェックをしているようだ。
それが終わった後いそいそと質問をし始める。
「えといよいよ明日運動会です!意気込みをお願いします!」
「え?俺が?」
「はい!作戦では応援係やその他もろもろ係となっていますが、どうですか?」
「うーん…」
質問の答えを考えながらもこの心地よさに酔いしれる。
いつもの記者のインタビューはいやだけれど七海のインタビューはとても心地よい。
いつもインタビューする人が七海だったらいいのに。香南はついつい思ってしまう。
「あいつらが楽しめるように最大の努力をする。例えば、うさちゃん林檎を一緒に作ったり…?」
その言葉に七海が驚く番だった。
「え?」
「俺も一緒に作るから。たこさんウィンナーとうさちゃん林檎は任せろ。」
「・・・はい!!はい!!!」
七海は満面の笑顔で返事をする。
「香南隊長!明日はよろしくお願いします!!!」
「ああ、まかせろ。」
そして七海のビデオカメラを持つ手を下へ向けると七海のおでこにキスをする。
突然の事に七海は顔を真っ赤にしヘタリと座りこむ。
「明日のご褒美、先にちょっとだけくれ。」
「・・・卑怯ですよう」
七海が録画を消すとおでこをこすりながら言う。
香南はにこりと笑うと七海を抱きしめ今度は唇にキスを送る。
今度は明日の成功を祈って。
すいません。また続きます(笑
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