成長の欠片 前編
美羽&瑠唯小学1年の話です
君の秋は
どんな秋?
clarity love 成長の欠片 前編
「にーちゃん!うんどうかい!」
「ぼく、あかぐみなの!!」
「…うん」
食事中突然の言葉に頭の上にはてなマークを浮かべる香南。
それをみて苦笑いをする七海。
「香南さんを困らせては駄目よ。」
「けどうんどーかい!」
「かけっこ!!!」
「うんわかったわかった」
七海はちゃんと事情を分かっているようだ。
椅子から立ち上がり予定表がたくさん張ってあるところから一枚の紙を取ってくる。
それを香南に渡す。
「来月の最初の日曜日に運動会があるんです。」
「うんどう、かい?」
「二人とも小学校に入って初めての運動会でとても張り切っていて、お仕事だとは思うんですけど、時間が開いてる時間で良いんです。少しでも、見に来てくださいませんか?」
運動会という言葉をいつ振りに聞いただろうか。
前を見ると目をキラキラさせる双子たち。
そして横には上目遣いの七海。
「…明日雅さんに聞いてみる」
「…っ!はいっ!!!」
この笑顔に弱いんだ。
苦笑にならざるを得ない香南だった。
「雅さん」
昼休憩、香南は七海のお弁当を広げ、お茶をマグカップに入れながら隣で昼からのスケジュールチェックをしている雅に尋ねた。
「ん?どうした?」
「来月の最初の日曜って何かスケジュール入ってるか…?」
「最初の日曜…?」
雅さんがスケジュール帳をチェックしてくれている。
それを聴いていたメンバーが集まってきた。
「えーなになに?どうしたの??」
「何かあったのかい?」
「いや、その、」
言おうか言わまいか迷っていると雅が再び口を開いた。
「あ、一応チェックとかの仕事は入っているけど…」
「そうか。」
「だからなんなんだよ。」
とても楽しそうな笑顔に言うのをためらう。
「その日、双子の運動会なんだよ。」
「「「運動会?」」」
「あいつら小学校での初めての運動会だって来て欲しいらしくて…雅さん、夜入るから、朝から夕方までのスケジュールを開けてくれないか…?」
雅は驚いていた。香南が自ら休みたい日を指定してきたのは初めてだったのだ。
もちろんこの業界で休みたい日に休めるなんてことはほとんどない。
それでも夏流はもちろん、周や燎も休みたい日を指定してきたことはあった。
しかし香南は一度も言ってきたことがなかった。
昔雅は一度だけ聞いたことがある。
『香南、お前休みたい日はないのか?』
すると香南はとてもつらそうに笑みを浮かべて雅の方を見た。
『休みたい日って、何するんだ?何もすることがないのに指定しても仕方がないだろう?』
それが今、自ら言ってきてくれる。
日向家パワーは本当に凄い。
雅は改めて思った。
「わかった。じゃあなるべく開けておくよ。」
「ありがとう」
「えー!じゃあ僕も行きたーい!!」
「…は?」
夏流が横から口を挟んできた。
その後ろを見ると周も燎も同じような顔をしていた。
「双子ちゃんの活躍をビデオで撮る係、多い方が良いでしょ?」
「俺らも一緒に手伝ってやるよ!運動会の”お父さん”の役割は大変らしいからな」
「お前ら…」
それからは昼ごはんを食べながら運動会に向けての作戦会議が行われた。
流石にばれたらいけないと思ったからだ。
七海と双子に言うと3人は大喜びで双子は特にはりきって練習に励むようだった。
双子にとっても、メンバーにとっても様々なことがおこる運動会になりそうな予感がした。
続きます(笑