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君色のマグカップ

新聞に挟まっていた一つのチラシ。




そこから出来事は始まった。





clarity love 君色のマグカップ






とある夏の日、今日も香南は七海の家に遊びに来ていた。

双子は一日中おもちゃで遊んだり、テレビを一緒に観賞したり楽しい時間を過ごした。

テレビ鑑賞の途中で双子がお昼寝をしてしまい、途端二人でテレビを見ることとなった。なんら楽しくない番組だったがとあるファミレスのCMが放映された。

「あ、ここ、明日開店するんです。」

七海が興味深々にCMを見ていた。

「へえ。」

一緒にじっとCMを見ていると七海が少し嬉しそうに新聞の広告チラシを持ってきた。

「これです!」

ニコニコしながら見せるそれは、そのファミレス開店を知らせるチラシだった。

『開店当日に来店された方にネズミーマグカッププレゼント!』

「明日、琴乃と行ってくるんです!ネズミーのマグカップゲットしてきます!」

その意気込みはまさにタイムセールに向かうお母様方のようだった。

マグカップぐらいいくつでも買ってくるのにと思いながら良かったなと香南が微笑むと、七海の携帯が突然鳴りだした。

「もしもし?あ、琴乃?」

まさにタイムリーに琴乃から電話がかかってきた。

最初は笑顔で答えていたが徐々に顔が悲しそうに眉を下げる。

「あ、そうか。それじゃあ無理だね。ううん。大丈夫!また行こう!じゃあね」

ピッと切ると七海が苦笑しながら香南の方を向く。

「残念ながら、明日中止になっちゃいました。」

「そうか。」

七海の顔は本当に残念そうで、香南は見ていられなかった。

そして思わず。

「それなら、俺がついていく。」

そう言ってしまった。





「いってらっしゃーい☆楽しんできてね。」

「「いってらっしゃーい」」

夏流が七海のうちの玄関から双子と一緒にお見送りをしてくれる。

次の日夜の少し遅い時間にメンバーを引き連れ香南が七海の家にやってきた。

昨日の約束を果たすためである。

香南はサングラスをかけ、深く帽子をかぶり下はジーパン上は黒のTシャツと何ら変わり映えしない姿だったが少し緊張しているようだった。

「大丈夫ですか?」

ファミレスは人が多い場所であり香南にとっては行く気もしない場所だと思ったからだった。

「大丈夫。早く行かねえと閉まっちまうし、行くぞ。」

この夏、香南はいろんな所へ行った。

もちろん気分が悪くなったりしたこともあったがそれなりに人ごみに慣れる努力はしたのだった。

そしてなにより七海が傍にいるとそれだけで気分が悪くなることが少ないということを知っていた。


気分が悪くなったら帰ればいい。


そう覚悟し、香南はファミレスに向かった。





「いらっしゃいませー本日はありがとうございます」

閉店1時間前ぐらいに来たからか客はだいぶ減っており、心配するほどの人ゴミでもなかった。

「…二人だ。タバコは、すわねえ」

「っかし、こまりました!」

香南のかっこよさにあてられたのか、女の店員は顔を真っ赤にさせながら案内する。

しかし香南は全く気付いておらず、むしろ店員であろうと女と会話ができたことにほっと安堵していた。

七海はその女店員から早速ネズミーのマグカップをもらった。

「ありがとうございます!」

中を開けると一つは黄色の一つは青色のおそろいの可愛いデザインのマグカップだった。

「よかったな」

「はい!!可愛いっ!来てよかったです。」

七海の笑顔に香南も柔らかく微笑んだ。




ここに来る目的を果たしたもののやはり注文しなければならないと香南はコーヒーを、七海はケーキを頼んだ。

「ふふっ今度は双子もつれてこないと、怒られちゃいますね」

七海がメニュー表を見ながらくすくす笑う。

ファミレスと言うだけあって子供のためのメニューも多い。

お子様セットもA、Bなど種類が豊富だった。

「そうだな。このメニューにはハンバーグも入ってるし、あいつら好きそうだな」

香南も一緒にメニュー表を覗く。

よくよく考えると香南と七海が二人で出掛けると言うことは今まで全くなく、これが初めてのことだと言うことに気がつく。

途端に顔を真っ赤にし七海に心配される。

「どうかされましたか?」

七海はマグカップのことで頭がいっぱいのようでまるで気づいていないようだった。

「いや、なんでもない」

お冷をごくごく飲み干す。何故か喉がからからだった。

いつもは双子が一緒にいてワイワイ過ごしてい手それも楽しいと思っていたが、七海と二人だけの世界はとても穏やかで時間を忘れてしまいそうになる。

この気持ちも悪くない、と香南は口端をあげた。






しばらくすると店員がコーヒーとケーキを持ってきた。

それぞれを香南と七海に渡していたが何とも言えないぐらいじろじろと顔を見られた。

七海ははっと気づく。


もしかして、香南さんがきていることがばれているのでは…?


香南の方を向くと薄々感ずいていたらしく眉をひそめていた。

「あっあの、」

七海が声をかけると香南が一気にコーヒーを飲み干し店員を呼ぶ。

「このケーキテイクアウトにするから箱頂戴。」

「は、はい、かしこまりました。」

徐々に周りの客からもヒソヒソ話が聞こえてくる。

『あれって、もしかして…』

『えっうそまさか…』

店員が箱を持ってくると急いでケーキを詰め、店員に金を渡す。

それはコーヒーとケーキの値段を足しても多すぎる金額だった。

「迷惑かけたな。」

香南は七海の手を引っ張ると颯爽と店から出て行った。





早歩きで出てくると近くの公園まで戻ってきていた。

その頃には少し息が上がっており、うっすらと汗も出てきていた。

「ここで、少し休むか。」

二人で近くのベンチに座る。

空を見上げると満天の星達が自らを主張するために光り輝いていた。

「綺麗、ですね」

「ああ。」

二人で夜空を見上げ続ける。

「今日は、悪かったな。」

香南が空を見上げながら言う。

「いいえ。私も考えなしでした。」

七海が下をむくが香南の方を見つめる。

「けど、こんなに素敵なものをいただけたので満足です。」

青いマグカップの方を香南に渡す。

香南は驚いて目を見開く。

「七海の家で使わなくてもいいのか?」

香南が返そうとするが七海はさえぎる。

「いいえ。これは香南さんのものです。今日は本当にありがとうございました。」

七海の笑顔に思わず顔を真っ赤にする。

「っありが、とう。」

香南は少し照れながら、それでも嬉しそうにマグカップを受け取った。





それから香南が録音するスタジオには青いネズミーのマグカップがいつも傍にあった。

まるでそこからエールを送っているように



リクエストをいただきましたので書かせていただきました!

どうでしょうか…?



リクエストありがとうございました!

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