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少女



 少女の世界はいつも黒くて黒くて黒かった。少女自身に対して具体的な何かを向けられた訳ではない。ありがちないじめや男女の盛りあいはいつも少女の斜め前で行われてきた。誰かが傷つき、嘆いている姿を見るのは少女にとって苦痛だった。何かしたいと思って、声を掛けた。だけど。

「あんたはいいよね。かわいいから」

 自分の容姿を誰かと比べてきれいだと感じたことはない。優越感に浸っているつもりもない。むしろ少女はとても自分の顔がきらいだ。それでも慰めの言葉を誰かに向けると決まってこれが返ってくる。痛かった。小さな黒達は少しずつ少女を傷だらけにする。

 少女は探していた。少年でもなく、青い目をした猫でもない。自分が生きていていい理由を探していた。どこにあるかはわからない。手がかりさえない。だけどどこかにきっとあるはずだと信じて、少女は塾をサボってみる。いつもの生活を少しだけ変える。

 帰宅のための社会人がわんさか詰め込まれた駅、どこかでギター、人の声、携帯電話のボタンを叩く、誰もが通り過ぎていく。「ドアが閉まります」のアナウンスがただでさえ焦っている人々をまだ急かす。あの電車はどこへ行くのか。それは電光掲示板を見ればすぐにわかる。地名だけを知っていて中身を知らないどこか。

逃げ出したい?

 自分に問いかける。答えはノーだった。少女はいつも戦ってきた。だから少女の色は赤だ。自分の血で、真っ赤に染まっている。



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