不完全少年
目を覚ませば暖かかった。布団がある。ベッドだ。僕は自分が家出し損ねたのかと思って嫌になった。布団を剥がした。半裸だった。隣に灰色の人が寝ていた。
「はい?」
僕は瞼を擦る。見間違いじゃなく、灰色のお姉さんが寝ている。僕の隣で。……あれ? 何があった? 僕は一体何をしたんだ。公園に行ったことまでは覚えている。雨が降っていて、僕はそれを滑り台の下で聞いていたはずだ。急激に鼻がムズムズしてきた。
「くしゅん」
ティッシュの場所がわからなくて僕は盛大に鼻水を飛ばした。辛うじてベッドからは顔を背ける。板張りの床に粘ついた液体がへばつく。なんとかしなきゃと思う前に女の人の手が僕の腰を掴んでいた。爪が立っていて痛い。
「はれ……?」
女の人は僕を手前に引っ張る。肉に爪が食い込んでぎゃあああなまま僕はベッドに尻餅をつく。
「なんだこれ。……ああ、昨日の困ったクンか」
そう言ったきり、灰色の人はまた布団を被ってしまった。
……ああ、思い出してきた。歌声が聞こえてきて灰色の女の人で寝ちゃったんだ。それで、多分家に連れてきてもらって服はびちょびちょだったから脱がされた、と。
無防備な人だな! 僕、中学生だぞ。エッチな知識あるぞ! 襲っちゃうぞ! ……出来もしないことを思いながらティッシュを探した。テーブルの上に普通に置かれていた。腰の血と鼻水をふき取った。それからベッドの傍に畳まれていた服を着た。ぶかぶかだ。年上のお兄さんが着るような服だ。ズボンはベルトで無理矢理に縛って落ちてこないようにした。すごく変だ。でも僕は青色だから透明に比べて変なくらいが丁度いいのかもしれない。出て行こうと思う。でも僕の服を返して貰わないといけない。見た目は別にいいんだけど、この服すごく動き辛い。揺すって起こそうかなと思ったけれど、女の人の体に触れてしまうのを考えるとすごくギクシャクする。ええっと……。
「ねえ困ったクン、今何時?」
「十一時、八分です」
すごい勢いで布団が飛び上がった。
「ぎゃああああ。遅刻遅刻!」
叫びながら、個室に入っていく。後ろから覗いてみたら、お風呂場かトイレみたいだ。洗面台がついてる。女の人はあちこちに跳ねた髪の毛と格闘してる。でも諦めて出てきて「あ、困った君。冷蔵庫の中の物は基本的に食べていいけどあんまりいっぱい食べるとあたしが困るからほどほどにね」と言って、出て行った。僕は着替えを探した。




