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不完全少年


 受け取ったいろいろを持って僕らは二人で公園に行った。

 半分はゴミに出して、もう半分は大切に抱える。

 女の人は早々に僕をほっといて歌い始める。その歌声は濁った灰色をしている。僕はでたらめにギターを鳴らした。何が上手で何が下手なのかもわからない。だからただでたらめに。

世界は僕たちを抱えて廻り始める。音は洪水で白を押し流す。手にしたギターはいろんな色を振り撒いて、だけどまとまった何かを残すことなく消えていく。もっと上手になれたら違うのかもしれない。僕は興奮を自覚する。

「……およ?」

 心地いい歌が途切れた。女の人を見る。視線の先には誰かがいた。男だ。

「二人か。片方でいいな」

 男は言った。男は黒い。黒くて黒くて黒い。何もかも塗り潰して呑み込んでしまうように。背筋がぞっとする。冷たい。月明かりが男だけを避ける。光は彼を照らさない。誰も彼を照らさない。

「……困ったクン。走れ」

 灰色の女の人は言った。僕はできなかった。恐い。足が竦んでるのだ。

「っ……」

 街灯に照らされた女の人が唇を噛むのが見えた。そのまま走って公園を出て行った。逃げた。仕方ない。

「悪いな。不運だったと思って諦めてくれ」

 気づかないうちにナイフが握られている。刺されるのかなと思った。逃げなきゃとも思った。足が縺れて後ろに倒れた。真上をナイフが通過していった。僕は生きた。でもそれはほんの数秒で、男の人はもう一回ナイフを振り下ろす。

「わああああああ」

 めちゃくちゃな奇声を挙げながら誰かが走ってきた。黒い男は振り返ってそれを刺す。胸に刺さった。昼間のフラれた人だった。転がって、死んだ。

「……前言撤回だ。運がよかったな」

 男はそれの髪の毛を掴んで引き摺り、街灯の明かりの届かないどこかに消えた。


 少し遅れて、「困ったクン、大丈夫!?」

 懐中電灯の明かりと何人かのおまわりさんを連れて灰色の女の人が戻ってきた。僕はなんだか頭がガンガンなって、視界がぐるぐると廻り始め、やがて黒くなった。




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