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不完全少年
夜は心地よく僕を蝕んだ。背中から伝わる冷たさが丁度いい。理バッグを枕に眠っているとどこからか歌が聞こえてきた。ひどくバカげた理想を歌った歌だ。
「僕らのエゴになんて意味はなくて、欲張る必要も飢える必要もなくて、みんなで世界の全てを分かち合うことができたら。」
そんなのはもちろん安全圏から物を言ってるやつの余裕の歌だ。だけど歌われて初めてそれに気づく人もいるのかもしれない。
僕らの頭の上には空が広がっている。足元には地面が続いている。
目を開けると一面の優しい灰色が僕を包んでいた。天国なんかじゃなくてましてや地獄であるはずのない世界。白でも黒でもない、あまりにも現実な灰色。生きることほど美しくはなく、死ぬことほど悲しくはない。惰性の生存。誰かの弱い悲しみ。それはあるいは世界の色だったのかもしれない。僕だけじゃなくてみんな色を持っていてそれに気づかなかっただけなのかもしれない。僕はベッドから出ようとした。灰色に触れたかった。そして自分の体が動かないことに気づいた。
それから目を覚ました。朝日は高く、街はギラギラと輝いて誰かを急かしている。僕は誰にも気づかれずに少し泣いた。あの優しい灰色はどこにもなくて、世界はどこまでも白かった。




