彼女
アルバイトは恐らく現状の彼女にとって一番のストレスの原因だ。彼女は学校の授業が苦手だった。退屈で仕方なかった。だから大抵こっそりとイヤホンを挿して音楽を聴いたり、寝たり、ノートに落書きをしたりしていた。学校自体が中の中だったのでそれくらいは許された。彼女の成績がクラス内でもそれなりによかったことが教師達の黙認に拍車を掛けた。一人だけ、そういうことを絶対に許さなかった先生がいた。いまはどうしてるのかな、と、なんとなく思う。あの先生の言うことをもっとよく聞いておけばよかった気がする。あの頃と同じような退屈を彼女はいま感じている。
人間は後悔する生き物だ。どんな生き方を選んでもあとできっと後悔する。あの頃しかできない何かがあったんじゃないか、もし結婚せずに大学にいっていたら、あんな無責任な人間なんかとさっさと別れていたら。彼女は灰色だ。
黒のように何かを塗り潰せるほど強くなく、
白のように何かに染まるには濁りすぎている。
アルバイトが終わり、彼女は家に戻って求人雑誌を開きながら、スーパーで買った半額のシールつきの夕ご飯を食べる。少年を泊めていたはずだったがいない。無くなってる物も、多分だがない。貸していた服はきれいに畳まれている。捨てられずにいる、彼女の昔の残滓。
帰る前からいないような気はしていた。少年は、外見から察するに中学生くらい。彼女のその時代は周りがみんな敵に見える時期だった。誰でもそういう経験はきっとある。親切なんて簡単に受け取れるものでもない。
「さぁて、今日も行きますか」
昨日と違って今日は晴れ。少し離れた公園へ、自分の声だけを持って彼女は向かう。そういえば昨日はあまり歌えなかったけど、今日はバイトで失敗しなかったなとなんとなく思った。




