掃きだめに聖女
バカだらけの話を書きたくなったので初投稿してみました
「クラウディア、おまえとの婚約は破棄する」
うん、知ってた。
ここが前世でやってた乙女ゲームの世界だって。
私の転生先は王太子と婚約している悪役令嬢。
そしてまさに今日、学園の卒園式で、婚約破棄される運命だって。
◇◇◇
私が前世の記憶を思い出したのは1年前。
聖女マチルダがこの学園に転入した時だ。
マチルダ様は平民だったが、光の魔力だの癒しの力だの結界だの、よくわからんが、「聖女としての力をめっちゃ持ってる」ことが判明したので、貴族に養女として迎え入れられ、この学園に転入してきたのだ。
最初は「平民上がりが」という目で見られていたマチルダ様だが、1日で「聖女様すげえ」になった。
聖女マチルダの人気度の上がりっぷりが、半端じゃなくすごいのだ。
常にまぶしい。姿を見ただけでぽーっとなってしまう。
にこっと微笑まれたりしたらもう、腰砕けになってあうあうしか言えない。
男も女も老人も子供も。うっかりすると動物も魔物も。
そういう私も、マチルダ様の魅力にぽーっとなった。
こりゃ王太子様もぽーっとなって当然だわ。
婚約破棄やむなし。
そしてここまでの文章を読んでおかわりのことと思うが、私は頭がよくない。
王太子や聖女に冤罪を突きつけられても、うまく言い逃れたり、対策を考えたりができるとは思えない。
このゲームはたしか、断罪されても「悪役令嬢は黙って去っていった」ぐらいの扱いで、処刑だの追放だの牢獄入りだのの厳しい処分はなかった。
だから「婚約破棄されるだけならまいっか」と思って、何の対策もしなかった。
生きてりゃなんとかなるもんね。うん。たぶん。
◇◇◇
そういうわけで、婚約破棄を言い渡された現実に戻る。
破棄の理由は、聖女と結婚したいからだとは思うけども、一応聞くだけ聞いてみる。
「理由をお伺いしても?」
マチルダ様をいじめてたとか言うつもりかなあ。
でも私はマチルダ様を見るだけでぽーっとなってたから、何もしてないんだよなあ。
マチルダ様は入学前に独自で礼儀作法を学んでらしたそうで、マナーは完璧。
したがって無作法を注意することもない。
睨んだりつきとばしたりとか、尊い聖女様にできるわけない。
どうなんだろ。単純に心変わり? 王族と公爵の婚約がそれでいいのかな?
と疑問に思っていると、王太子が声を大にして言った。
「私をないがしろにしたからだ! おまえは、いつも!マチルダを見ると、ぽーっとなっていた! 私に対しては! ただの一度も! あんな表情でぽーっとなったりしなかったのに!」
わあ。
それはその通り。王子見てるより聖女見てるほうが眼福だったのは確かだし…。
そっかあ、それじゃしょうがないかあ。なるほど納得。
納得したけど、ここで引き下がって領地に帰ったら、もう聖女様に会えないのかあ、と思ったら寂しくなったので、もうちょっと粘ろうかなあと言葉を探していると、王太子がさらに宣言する。
「そしてクラウディアのかわりにマチルダを、新しく私の婚約者とする!」
聖女マチルダが驚愕している。「な、な、な…!? 何を…!?」
そんな聖女の手をがっしと握り、王太子が叫ぶ。
「王妃にふさわしいのは君だ。これからは私が、誰よりも君にぽーっとなる!」
どんなプロポーズなんだよと思うが、気持ちはわかる。
私も、許されるなら一生聖女様を見つめていたい。
いいなあ、王太子様はそういうわがままが言えるんだなあ、と羨んでいたら
「ちょっと待ったあ!!!」
横から第二王子が飛び出てきた。
「聖女に一番ぽーっとなってるのは僕だ! ぽー度の強さなら負けない!!! どうか僕と婚約を!!!」
それを聞いた上流貴族の面々が次々に
「ちょっと待ったあ!」
「ぽー度なら俺だろう!」
「俺以上に聖女様を想う人間がいるわけがない!」
と名乗りをあげ、場は騒然となった。
そこにダーン!と床を杖で叩く音。
一瞬でホールがしん、となった後、重々しく口を開いたのが国王陛下。
「静まれ」
ホールにいた全員が国王陛下を見る。
その面々をゆっくりと見回して、
「マチルダは私の側室にする」
・・・・・・・・・・
え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!
騒然アゲイン。
「父上!それはないでしょう!いい年して!!」
「母上!母上からもなんとか言ってください!」
全員が王妃に注目する。
「えー、マチルダちゃんが近くにいたら、私もぽーっとできるし…側室でも息子の嫁でも、家にきてくれるならなんでもいいわ~(ぽっ)」
恐るべし聖女マチルダ。好かれすぎてて逆に怖い。
しかしここで大事なことは、やっぱり…
「マチルダの気持ちはどうなのだ!」
国王陛下が言った。言っちゃった。
ですよねえ。こうなったらマチルダ様に決めてもらうしかない。
誰が一番好きなのか。でも…
「わ、わたくしは…」
もう目に見えてぶるぶる震えているマチルダ様。
こんな状況で誰かひとりを指名するのはあまりにも酷。
だからといって「一生神に忠誠を」ってのはあまりにももったいない。
なんとか遺伝子残してほしい。
国王陛下が叫ぶ。
「わしが風邪をひいたとき『陛下のご健康を守れるよう尽くします』って言ったよな!あれプロポーズだよな!」
いやそれ普通に癒やし手の挨拶でしょ…。
王太子が叫ぶ。
「君が本を落とした時に、拾ったら『ありがとう』と笑ってくれたよな! あんな笑顔を見せるのは愛があるからだよな!」
いや誰にでも見せるから誰もがぽーっとなるんでしょうに…。
その他大勢が口々に叫ぶ。
「俺と同じ時間に登校した!」
「目が合った!」
「好きな歌手が同じだ!」
「私の前だけ顔つきが明るい!」
「俺と目が合ったら目をそらした!」
「白い猫が横切った!」
だからなんなんだ。
なにを主張してるのか本人もわかってないんじゃないだろうか。
しかしみんなの言い分を聞いて、改めて「聖女すげえ」と思った。
だって誰の主張にも、特別なことはない。
私の記憶にある限り、上位貴族に気安く話しかけたり、触ったり、腕を組んだり、家名でなく名前で呼んだりをしていない。
個人的に親しいと思われるような行動を、聖女は一切してない。
それでもこんなにもみんなに好かれている。
世の中には「人気者が嫌い」という人種も一定数いるはずなので、100%の人間に好かれることはないはずなのに、好かれている。
これは異常だ。
集団催眠? クスリ?
でもどっちも効かない人もいるはずなのに…
いまだ騒然としているホールの中を、ひとすじの光が差し込んだ。
その光はまっすぐに聖女マチルダを照らし、マチルダ様はふわりと浮き上がった。
あわててそばにいた王太子や側近がマチルダ様をつかまえようとするが、誰もその体に触れられないまま、マチルダ様はするすると天井にのぼってゆき、月に帰ってしまいましたとさ。めでたしめでたし。
思い付きで書いただけなんで、収集つけられませんでした。えへ。




