【真の支配者】「消えるか、俺の魂へ飛ぶか」――数千人の命を背負った俺のステータスは、運営(神)すら平伏させる――
新世界、『エターナル・レジェンド』の未実装エリアに突如現れた白亜の街。
かつてレインが「箱庭」と呼んだその場所には、今や数千人の住人たちが、何事もなかったかのように平穏な朝を迎えていた。
広場では子供たちが駆け回り、職人たちは槌音を響かせる。
データの塵として消える運命にあったはずの命が、今、確かにこの新世界の陽光を浴びていた。
「……賑やかになったわね、レイン」
エルナが、街を望むテラスでコーヒーを飲むレインの隣に腰を下ろした。
門番として強制再雇用された運営(GM)たちが、初期装備のまま必死に地面を掃いている滑稽な光景を、彼女は穏やかな目で見つめる。
「ああ。……あの日、サーバーを焼く直前。
俺はこいつらに『消えるか、俺の魂の中に飛び込むか』を選ばせたんだ。
……どいつもこいつも、迷わず後者を選びやがった」
レインは自身の胸にそっと手を当てる。
現実世界の肉体を捨て、魂を電子化したレインにとって、この体は膨大な情報の器そのものだ。
「俺は、こいつらの人格をすべて自身の意識下にバックアップした。
……数千人分の人生を背負って次元を超えるのは、流石に脳が焼き切れるかと思ったがな」
レインが淡く笑う。
彼がこの世界で「ERROR」と表示されるほどの異常なステータスを持つ理由。
それは、彼一人の力ではなく、彼を信じて魂を預けた「街一つ分の全リソース」が、レインという個体に集約されているからに他ならない。
「新天地へ辿り着いた瞬間、俺の意識下にいた彼らのデータが、この世界の未実装エリア――つまり『空き容量』を認識して、勝手に再構築を始めたんだ。
住む場所がなければ、自分たちで土を耕し、家を建てる。
……その生命力には、管理者である俺すら驚かされたよ」
彼らは単なるプログラムではない。
レインの愛を受け、自らの意志で「生」を選んだ新しい種族なのだ。
「運営からすれば、管理外の寄生虫に見えるだろう。
……だが、俺はこいつらから、もう一度生きるチャンスを貰ったんだ。
今度は俺が、この命を懸けて守る番だ」
レインが指を弾くと、街全体を覆う不可視の多重結界が、さらにその密度を増した。
遠く、森の境界線。
そこには、掲示板の噂を聞きつけて集まった無数のプレイヤーたちが、黒い雲のように押し寄せていた。
さらにその上空には、運営が放ったとされる「緊急排除用」の巨大な浮遊機兵が、冷たいセンサーを光らせてこちらを狙っている。
「……さて。邪魔者が増えてきたな」
レインは立ち上がり、静かにコンソールを展開した。
その瞳に、もはや震えはない。
背負った命の重さが、運営(神)すら平伏させる『真の支配者』へと変えていた。
「アリス、エルナ、リヴィア。
……俺たちの『家』に土足で踏み込もうとする客人たちに、この世界の新しいルールを教えてやれ」
『――御意、主様(レイン様)!』
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