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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第2章:管理者の箱庭と、捨てられた予備聖女の覚醒
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王国至宝の聖剣(ナマクラ)と、管理者の農具

「見つけたぞ……レインッ!!」


 境界線を突き破り、楽園の庭へと転がり込んだアルディスは、狂気に満ちた叫びを上げた。 魔力ブースト剤の副作用で血管がどす黒く浮き上がり、その姿はもはや勇者というより魔物に等しい。


 だが、視界の先にいたレインは、立ち上がりさえしなかった。テラスの椅子に深く腰掛け、手にした黄金リンゴを優雅にもてあそんでいる。


「……随分と騒がしいな。せっかくのティータイムが台無しだ」


「貴様ぁぁッ! その余裕、今すぐ切り刻んでくれるわ!  死ねッ!」


 アルディスは地面を蹴った。どす黒い魔力をまとった聖剣が、大気を引き裂く。かつては数々の魔物を葬ってきた「世界最強」の一撃。それがレインの首を狙って振り下ろされる――。


 キィィィィィィィンッ!!


 耳をつんざくような金属音が響いた。だが、それはレインの肉体を断つ音ではない。


「……え?」


 アルディスの動きが止まる。彼の渾身こんしんの一撃を止めたのは、レインですらなかった。 いつの間にか前に立ちふさがっていた少女――アリスが、片手で持った「一本のくわ」で、聖剣を軽々と受け止めていたのだ。


「……レイン様のお庭で、そんな物騒なものを振らないでいただけますか? 芝生が痛みます」


 アリスは冷ややかな、ゴミを見るような視線でアルディスを射抜く。


「なっ……!? なぜだ、なぜ止まる! これは聖剣だぞ! 世界最強の武器なんだぞッ!!」


「聖剣? ……ああ、これのことですか?」


 アリスがふん、と鍬に力を込める。その瞬間、黄金の魔力が鍬からあふれ出し、アルディスの聖剣を「侵食」し始めた。


管理メンテナンスを放棄された装備品は、システム上『ジャンクデータ』として処理されます。――さようなら」


 パキィィィィィンッ!!!


 乾いた音と共に、王国至宝の聖剣が、まるで飴細工あめざいくのように粉々に砕け散った。 それだけではない。砕けた破片は地面に落ちる前に粒子となって消滅し、アルディスの手元には、びついた「つか」だけが残された。


「あ……あ……聖剣が……俺の、聖剣が……ッ!?」


「次は、あなたの番です。不法侵入者は『土壌の整理』対象ですので」


 アリスが鼻歌を歌いながら、鍬を高く振り上げる。それは剣術でも何でもない。ただ、硬い土を耕すための、慣れた動作。


「よいしょ、っと」


 アリスが鍬を地面に叩きつけた瞬間――。


 ドォォォォォォンッ!!


 アルディスの足元の空間が、文字通り「消滅」した。衝撃波ではない。鍬が触れた地点の座標データが、まるごと削除デリートされたのだ。


「ぎゃあああああああああああああッ!!?」


 地面ごと「整理」されたアルディスは、すさまじい斥力せきりょくによって、空の彼方へと弾き飛ばされた。先日、騎士団たちが射出されたのと同じ軌道。しかしその威力は、アリスの怒りの分だけ増大しており、彼は時速500キロを超える「人間の弾丸」となって、自分たちが陣取っていた本陣へと真っ逆さまに突き刺さっていった。



 静寂が戻った庭で、アリスはパッパッと手を払い、レインの方を向いて可愛らしく首をかしげる。


「レイン様、お掃除完了です! ついでに、入り口付近の土もふかふかになりましたよ」


「お疲れ、アリス。……さあ、温かいハーブティーでもれ直そうか」


 遠くの空に浮かぶ「勇者の残骸ざんがい」など目に入らぬかのように、レインは再び穏やかな日常へと身を投じた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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