表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第2章:管理者の箱庭と、捨てられた予備聖女の覚醒
31/37

勇者の暴走と、聖女の鼻歌 ~土壌整理の時間です~

「消せ……っ! 今すぐその映像を消せッ! こんなものはデタラメだ、卑劣ひれつな魔王の幻術だッ!!」


 アルディスは一人、何もない空中に向かって聖剣を振り回していた。砕けた首飾りの破片が映し出す「真実の中継」。そこに映る自分の醜態しゅうたいを消そうと躍起やっきになればなるほど、聖剣の輝きは失われ、逆にアルディスの形相は獣のようにひどく歪んでいく。


 一方、ゼノスの街。 巨大な投影を見上げる民衆の間に、冷ややかな、そして恐ろしい沈黙が広がっていた。


「……おい、見たかよ。勇者様、自分のことを『主役』だってさ」

「『どいつもこいつも俺の踏み台になれ』って、本気で言ってたぞ……」

「それに、レインのやつ……。楽園みたいな場所で、聖女様を侍らせて何してやがるんだ?」


 民衆の視線が、憧憬からさげすみへと変わる。だが、森の奥へ一人で突き進んだアルディスには、もうその声すら届かない。


「……はは、そうだ。俺を誰だと思っている……。勇者だぞ……! 俺が黒と言えば、白だって黒になるんだッ!」


 アルディスは懐から、禁忌きんきとされる『魔力ブースト剤』を取り出し、一気に飲み干した。 血管が浮き上がり、どす黒い魔力が聖剣を包む。


「レイン……ッ! 貴様さえ、貴様さえいなければ、俺はまた輝けるんだッ!!」


 狂乱したアルディスは、もはや王国騎士団のことすら忘れ、ただ憎悪に突き動かされて境界線の「壁」を殴り、蹴り、無理やりその身をねじ込もうとしていた。



一方、座標NULL(レインの庭)。


「……レイン様。あちらの勇者様、ずいぶんと顔を真っ赤にしてこちらに向かってきています。一人で、随分ずいぶんと必死なご様子ですね」


 膝枕ひざまくらをしていたアリスが、管理ウィンドウの端を指さしてクスクスと笑う。


「一人か……。まあ、あんな映像を見せられた後じゃ、誰もついてこないだろうな」


 レインはリンゴをかじり終えると、ふう、と小さく息を吐いた。


「せっかく庭が綺麗きれいに整ってきたんだ。あんな『バグの塊』に踏み荒らされたら、せっかく植えた花が台無しになるな」


「そうですね。……では、レイン様。先ほど調整してくださった『新しい農具』、さっそく試させていただいてもよろしいでしょうか?」


 アリスが立ち上がり、庭の隅に置かれていた一本のくわを手に取る。 見た目は、どこにでもある古びた農具だ。


「ああ。……アリス、ちょうどそこらへんの土が固くなってる。あいつが境界線を越えた瞬間に、軽く『耕して』やってくれ」


「はい、レイン様。……不法侵入者は、土壌の肥やしにもなりませんから」


 アリスが鼻歌を歌いながら、庭の入り口へと歩いていく。その手にある『土壌整理用デリート・プラウ』が、黄金色の管理魔力を帯びて静かに脈動を始めた。


 その時、森の深部。


「殺してやる……殺してやるぞレインッ!」


  血走った目で叫びながら、アルディスがついに座標NULLの境界を突破し、レインの庭へと転がり込んだ。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ