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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第2章:管理者の箱庭と、捨てられた予備聖女の覚醒
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【悲報】勇者の本性、バグのせいで世界中に生配信される

「……はぁ、はぁ……っ! 出てこい! 俺様をコケにし、王国騎士団を辱めた卑怯者め! 姿を見せろッ!」


 アルディスは一人で、何もない境界線の壁を殴り続けていた。だが、どれだけ聖剣を振るっても、そこには「世界の断絶」があるだけだ。今のレインがいる場所は、この世界の地図には存在しない座標NULL(レインの庭)。ログイン権限を持たないアルディスには、触れることすら叶わない。


「くそっ! なぜだ! 俺は勇者だぞ! 世界に選ばれた主役なんだぞ!」


 アルディスは足元の泥を蹴り飛ばした。 その時、彼の足元には、先ほどアリスが破壊した『防護の首飾り』の残骸ざんがいが転がっていた。


 かつてレインが、工作スキルと魔力を注ぎ込んで作り上げた傑作けっさく。 それは、アリスの手によって「破壊デリート」された際、レインの管理魔力と干渉し、砕けた衝撃で座標NULLのログを外部へ漏洩ろうえいさせる「バグの穴」と化していた。



 一方、座標NULL。


「……レイン様。あの方が持っていた『首飾りの残骸ざんがい』……どうやら異常な共鳴を起こしているようです。私が壊した際の衝撃が強すぎたのか、こちらの光景が外へ漏れ出していますね」


 アリスが管理ウィンドウを見ながら、困ったように、けれど楽しそうに微笑む。


「……ああ。俺の権限を持つお前が干渉して壊したからな。管理領域ここと現世をつなぐ『ログ出力エラー』が起きたんだろう」


 レインはテラスで、アリスに膝枕ひざまくらをされながら黄金リンゴをかじっていた。 世界に見捨てられ、隔離されたレインに、外へ干渉する権限などない。 だが、「アリスが首飾りを壊した」というアクションが、意図せず世界への「窓」をこじ開けてしまったのだ。


「……まあ、いいさ。俺はここから出られないし、外の連中にどう見られようと知ったことじゃない」


「そうですね。……ですがレイン様。あちら側(世界)では、今ごろ大変なことになっているようですよ?」



 その頃、森の外。アルディスを待っていた野次馬や、残された仲間たちは、驚愕きょうがくの光景を目にしていた。


 空中に浮かぶ、砕けた首飾りの破片。 そこからあふれ出した魔力が、巨大なスクリーンのように「真実」を映し出していたのだ。


 そこには、何もない空間に向かって狂ったように剣を振るい、「ひざまずけ! この俺様が世界を救ってやるんだ! どいつもこいつも俺の踏み台になれ!」と本性をき出しにして叫ぶアルディスの姿。


 そして、その背後の空間がエラーで透けて見えた先には――。 見たこともないほど美しい楽園で、聖女アリスをはべらせ、神のごとき余裕でリンゴをかじるレインの姿。


「……おい、勇者様。一人で何やってんだ?」


「あれが本性か……? それより、あそこにいるの……追い出された荷物持ちのレインだよな? なんであんなに優雅なんだよ……」


 世界は、勇者の「嘘」を許さなかった。 アリスが壊した首飾りの破片が、皮肉にもアルディスの栄光を粉々に砕く中継器となったのだ。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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