時速300キロの再会 ~空から降ってきたアブラムシ(騎士団)~
ゼノスの街からほど近い、森の境界線。そこには勇者アルディスと、その仲間である魔導師や僧侶、そして事の顛末を見届けようと集まった野次馬や一部の有力者たちが陣取っていた。
「ふん、そろそろガイアスたちが『魔王の首』を持って戻ってくる頃だな」
アルディスは豪華な椅子にふんぞり返り、ワインを口にする。泥まみれで逃げ帰った醜態を、「魔王軍の奇襲」という嘘で塗り潰した彼は、今や「正義の軍を動かした英雄」気取りだった。
「アルディス様、あそこに見えるのは……王国の騎士団では?」
魔導師の仲間が空を指さす。 遥か彼方、聖域の方向から、何か「黒い塊」が猛烈な勢いでこちらへ飛来してくる。
「おお、凱旋か! ずいぶんと威勢のいい戻り方ではないか!」
アルディスが立ち上がり、両手を広げて迎え入れようとした。 だが、近づいてくる「塊」から聞こえてくるのは、勝利の咆哮ではなく――。
「ぎゃあああああああああああああああッ!!」
「止まれ! 止まってくれええええええええッ!!」
それは、鼓膜を震わせるほどの絶叫だった。
「……ん? なんだ、あのアブラムシみたいな格好をした男たちは――」
ドガガガガガガガガッ!!!
凄まじい衝撃音と共に、アルディスの本陣へ「人間の弾丸」が降り注いだ。 時速300キロで射出された騎士たちが、アルディスを巻き込みながら地面を転がり、土煙を巻き上げる。
「ぐはっ!? な、なんだ!? 何が起きたッ!?」
土煙の中から這い出したアルディスが見たのは、王国最強と謳われた精鋭たちが、鎧も武器も失い、見るも無惨なパンツ一丁姿で重なり合っている地獄絵図だった。
「が、ガイアス! 貴様、その格好はなんだ! 魔王はどうしたッ!?」
「……あ、アルディス様……。無理です……あそこは……あの方は……」
騎士団長ガイアスが、白目を剥きながらアルディスの足を掴む。
「あそこには、魔王なんていません……。いたのは……ただの『お掃除係』の女の子と……レインという神様だけだ……」
「何を言っている! 狂ったかガイアス!」
アルディスが叫ぶが、周囲の野次馬たちはざわつき始めていた。
「おい、あれ……王国騎士団だよな? なんで全員裸なんだ?」
「勇者様が貸した『最強の護符』はどうしたんだよ……」
アルディスは、自分に向けられる疑念の視線に耐えられず、ついに腰の剣を引き抜いた。
「ええい、役立たず共め! 結局、俺様が行くしかないというわけか! 見ていろ、本物の勇者の力を見せてくれる!」
引くに引けなくなったアルディスは、顔を真っ赤にして一人、再び森の奥へと走り出した。 その後ろ姿が、「二度と戻れない地獄」へ向かっているとも知らずに。
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