【悲報】王国最強の装備、デバッグ・ロッド一振りで消滅する
王国騎士団長ガイアスは、驚愕に震えていた。 つい先ほどまで、この森は「神の拒絶」とも思える圧倒的な魔圧に包まれ、一歩も立ち入ることができなかったのだ。しかし――。
「……団長! 霧が晴れました! 結界が……消えたのか?」
「いや、違う。……道が開いたのだ」
彼らは知らなかった。 その時、座標NULLのテラスで、レインが管理ウィンドウを操作していたことを。
「……アリス。ゴミ捨て場にポイ捨てした『リンゴの芯』のせいで、外の生態系がバグり始めてるな。一箇所に魔力が溜まりすぎて、このままだと森全体がパンク(崩壊)する。一旦、境界線の外側に溜まった魔力の外圧を逃がすぞ」
レインが管理ウィンドウを操作し、不可視の障壁を一時的に解除する。 すると、モニターの端に小さな光点が映り込んだ。
「……お、ちょうど入り口付近にいた連中が、フィルターを解いた瞬間に滑り込んできたな。俺が昔作った首飾りの反応がある……。あれを頼りに、ずっと境界の外側でウロウロしてたらしい」
「レイン様がメンテナンスのために開けてくださった道を、自分の力でこじ開けたと勘違いしているようですね。……なんて浅ましい」
アリスの瞳に、ゴミを見るような冷ややかな光が宿る。
「ちょうどいい。アリス、あいつらを使って『手動でのクリーンアップ』のテストをしてくれないか? 境界線の外まで、一気に掃き出してくれ」
「はい、喜んで。レイン様のお手を汚すまでもありません!」
騎士団がたどり着いた先。そこには禍々しい魔王の城などなく、穏やかな花園と、テラスハウスがあった。
「……そこの方々。ここから先は『レイン様の聖域』です。殺気を持った方の立ち入りは、固く禁じられています」
庭の入り口に、一人の少女、アリスが立っていた。 騎士たちは、自分たちが今ここに立てている理由が、レインが「システムの排熱」のために一時的に窓を開けたからだとは夢にも思わず、剣を引き抜く。
「……娘、貴様が魔王の使いか! 我らは王国騎士団! 勇者アルディス様を害した大罪人を排除しに来た!」
騎士団長ガイアスが剣を向け、精鋭たちが一斉に踏み込む。だが、アリスは一歩も動かない。ただ冷たく、彼らの胸元で光る「レインの過去の遺物」を見つめた。
「……その首飾り。レイン様がかつて、真心を込めて作ったものです。あなたたちのような『ゴミ』が触れていいものではありません。――返してください」
アリスが静かに、だが拒絶を許さないトーンで告げる。 その瞬間、騎士たちの胸元で輝いていた首飾りが、主を拒むように激しい光を放ち、音を立てて粉々に砕け散った。
「なっ……!? 守りが……砕けただと!?」
「もう、あなたたちを守るものは何もありません」
アリスがデバッグ・ロッド(白い枝)を、まるで指揮棒のように軽く振る。
「――お掃除の時間です」
瞬間、騎士たちが構えた剣も、身に纏った王国自慢の魔法銀の鎧も、まるで最初から存在しなかったかのように空気に溶けて消滅した。
「馬鹿な……! 装備が、消えた……!?」
パンツ一丁の無様な姿で、精鋭たちが地面に這いつくばる。 聖域の圧倒的な魔圧が直接肌を焼き、彼らは呼吸することすらままならない。
「仕上げです。不法侵入者は、元の場所へお返しします」
アリスがロッドで空を叩くと、巨大な空間の歪みが発生した。絶叫する騎士団を飲み込んだ。それは、時速300キロを超える勢いで、彼らを「森の入り口」――勇者のもとへと射出した。
一方、テラス。
「……ふぅ。作業完了だ。アリス、お疲れ様。ハーブティーの二杯目が入ったぞ」
「はい、レイン様! 今戻りますね!」
空に向かって可愛らしく手を振るアリス。レインは、回収した首飾りの残骸データを眺めながら、それを「新しい農具の補強材」へと変換し、過去との決別を終えるのだった。
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