オーバーフローする好感度と、世界消滅級の『お世話』
『いいね』に高評価、そしてブックマークありがとうございます!
王都へ向かう勇者の伝令が馬を飛ばしている頃、座標NULL(レインの庭)には、穏やかで甘い香りが漂っていた。 新しく生成した「魔力循環式・露天風呂」から立ち上る湯気だ。
「……レイン様。お背中、流させていただきます」
脱衣所で待っていたのは、薄い布一枚を纏ったアリスだった。 湯気に濡れた銀髪が肌に張り付き、普段の法衣姿では隠されていた、聖女らしいしなやかな曲線が露わになっている。
「アリス、自分でできるから大丈夫だぞ」
「……ダメ、です。私はレイン様の守護騎士。そして、レイン様に拾われた『命』ですから。……私に、レイン様のお世話をさせてください」
アリスの瞳は、冗談を言っているようには見えなかった。 彼女は俺の前に跪くと、震える手で俺の指先を取り、まるで祈るように自分の頬に寄せた。
「レイン様が望むなら、私は何にでもなります。……お風呂のお世話も、夜のお相手も。……私には、レイン様しかいないんです。……私を、使ってください」
その言葉は、かつての勇者パーティが彼女を「予備バッテリー」として消費していたのとは、正反対の意味を持っていた。 彼女は自分の意志で、すべてを捧げようとしている。
「……わかった。じゃあ、背中だけ頼もうかな」
「っ……はい! よろこんで!」
ぱぁっと顔を輝かせたアリスは、慣れない手つきながらも一生懸命に俺の背を流し始める。 その指先から伝わってくるのは、オーバーフローした好感度が物理的な熱を持ったかのような、圧倒的な「愛」の重さだった。
(……あの頃の俺は、認識阻害のせいで彼女のこんな顔を知らずにいた。……いや、権限がなかったとはいえ、知ろうとしていなかったのかもしれない。もう二度と、この表情を曇らせたりはしない)
俺は湯船に浸かりながら、空中に管理ウィンドウを浮かべた。 そこには、王都へ向かう「勇者の伝令」のドットが、必死に動いているのが見える。
「……アリス。明日は少し、騒がしくなるかもしれない」
「何が起きても、お守りします。レイン様が、私に『心』をくださったんですから。……邪魔者は、私がこの枝で消し飛ばします」
アリスの可愛らしい微笑みと、手に握られた「世界消滅級の杖」。 そのギャップに苦笑しながら、俺は彼女が淹れてくれた最高級のハーブティーを口にした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




