管理者流クリーンアップ――不法侵入者は『ゴミ』として処理されました
「……ギギ、ギギギ……ッ!」
境界線の看板を蹴り飛ばし、反射ダメージで右足を変な方向に曲げたアルディスが、地面を這いながら呻いていた。 勇者のプライドはズタズタだ。
「アルディス様、早く戻りましょう! ここは異常よ、私の治癒魔法が……霧のように消えていくわ!」
聖女セシリアが青ざめた顔で叫ぶ。 無理もない。この領域はレインによって『許可なきリソース消費の禁止』が設定されている。レインの承認がない魔法は、発動した瞬間に「無効なデータ」としてシステムに没収されるのだ。
「うるせぇ! この先に……あのお宝さえ手に入れば、こんな足……っ!」
アルディスが執念で境界線を越え、庭の芝生に指をかけた、その時。
ログハウスの窓から外を眺めていたレインが、面倒くさそうに指を動かした。
「……アリス、悪い。庭の端に『有害な不純物』が混入したみたいだ。デバッグついでに掃除しておくよ」
「はい、レイン様」
レインが空中に浮かぶ半透明のウィンドウを軽くタップする。
《環境維持コマンド:クリーンアップ実行》
《対象:座標内の未認証オブジェクト(ゴミ)》
「な、なんだ!? 地面が……揺れて……!?」
アルディスたちの目の前から、半透明で巨大な「掃除用スライム(自動デバッグ・プログラム)」がヌルリと現れる。 それは戦う意志など微塵もなく、ただ「散らかったゴミを片付ける」という事務的な動作で、アルディスたちを包み込む。
「離せ! 離せぇ! 俺は勇者だぞ! 聖剣で切り刻んで……えっ」
自信満々に振り下ろした聖剣は、スライムの表面で「プニッ」と弾き返された。 攻撃力すら判定されない。ただの「ゴミの抵抗」として処理されたのだ。
「……あ」
次の瞬間、スライムの核が激しく発光した。
《処理:領域外への強制排出》
「うわあああああああああああああ!!!」
凄まじい圧力と共に、アルディス、セシリア、そして他のメンバーたちは、まるでピンボールの玉のように空高く弾き飛ばされた。 時速200キロを超える速度で、彼らは「消失領域」の外……遥か遠くの泥沼へとシュートされた。
「……ふぅ。これで静かになったな。さて、アリス。デザートのリンゴ、もう一個 剥こうか」
「はい! ありがとうございます、レイン様!」
外で勇者たちが空の星になったことなど露知らず、レインは平和な午後のティータイムを再開した。
一方、泥沼に真っ逆さまに突き落とされたアルディスは、泥を吐き出しながら空を見上げて絶叫した。
「覚えてろ……! 次は、軍を引き連れてでも、あの場所を焼き払ってやる……!!」
彼が怒りに燃えるほど、レインの仕掛けた「自動防衛システム」が牙を剥くことになるとも知らずに。
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