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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第2章:管理者の箱庭と、捨てられた予備聖女の覚醒
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拾った聖女の髪を整えていたら、外で勇者が勝手に自爆していた件

「……ふー、ふー。……はふっ、もぐ。……っ、おいひいです、レイン様!」


 アリスがほほを赤く染めながら、焼きたてのステーキを口いっぱいに詰め込んでいる。 昨日までは死んだ魚のような目をしていた彼女が、今は一口ごとに光の翼をパタつかせて喜んでいる。その様子は、実に微笑ましい。


「そんなに慌てなくても、逃げやしないぞ。ほら、口の横にソースがついてる」


「ふぇ? ……あうっ」


 俺が指先でソースをぬぐってやると、アリスは耳まで真っ赤にして固まってしまった。 ……そういえば、彼女にとっては「優しく触れられる」こと自体が、生まれて初めての経験だったのかもしれない。


「……あ、あの、レイン様。私、本当に……ここにいていいのでしょうか。私はただの予備で、ゴミ箱で……」


「アリス」


 俺は彼女の頭にそっと手を置いた。管理者権限で生成した『神銀ミスリルくし』で、まだ少し傷んでいた彼女の銀髪を優しく整えてやる。


「ここでは、君をそんな風に呼ぶ奴はいない。君は、俺の大事な……」


 俺が「居候いそうろう」と言いかけたその時、庭の端にある『外郭境界センサー』が激しく点滅した。誰かが、俺のテリトリーに土足で踏み込もうとしている。


「……チッ、飯の邪魔が入ったか」



 同じ頃。 森の奥、木々が不自然に歪み、空間そのものが「欠落」している境界線。


「……ハァ、ハァ……なんだ、この森は! 魔物もいないくせに、歩くだけで体力が削り取られやがる!」


 勇者アルディスは、肩で息をしながら聖剣を杖代わりにしていた。彼らは知らない。ここから先はレインが設定した「管理者専用領域」。権限を持たない一般人が踏み込めば、【環境ダメージ:過負荷】によって立っているだけでHPが削れる仕様になっている。


「アルディス様、見て! 何か立っているわ!」


 聖女セシリアが指差した先には、不釣り合いなほど質素な、木の立て札があった。


【警告:この先、致命的なバグにつき立ち入り禁止】 (※無理に侵入した場合、データの整合性は保証しません)


「……バグ? データ? 何をふざけたことを……。この俺を、こんな安っぽい木の板で止められると思っているのか!」


 アルディスは激昂げきこうし、その立て札を思い切り蹴り飛ばした。


 だが、その瞬間。 パキィィィィン!!


「ぎゃあああああああああ!?」


 凄まじい衝撃波がアルディスの足を襲った。立て札に書き込まれていたのは、レインが無意識に付与した【絶対不可侵コード】。 権限なき者が悪意を持って触れた瞬間、その攻撃を10,000倍にして反射する「最強のセキュリティ」だ。


「アルディス様! 足が、足の骨が変な方向に曲がってるわ!」


「クソッ、ふざけるな! 誰だ! 誰がこんなわなを仕掛けやがった!!」


 勇者の絶叫が、静かな森に虚しく響き渡る。そのわずか数百メートル先で、レインがアリスに「デザートのリンゴ」をいてやっているとは、今の彼らには想像もつかなかった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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