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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第2章:管理者の箱庭と、捨てられた予備聖女の覚醒
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神の果実を献上させたい勇者と、オリハルコンの包丁でステーキを焼く俺

 交易都市ゼノスのギルド酒場。 そこでは、冒険者たちが顔を寄せ合い、不気味なうわさに興じていた。


「……おい、聞いたか。森の奥に『神隠しの穴』が開いたらしいぜ」


「ああ、地図が真っ白になっちまうっていうあの場所だろ? ギルドからは『絶対に近づくな』って厳命が出てるらしいが……」


「なんでも、そこに住む化け物は『神様のリンゴ』をバリバリ食い散らかしてるんだとよ。とんでもねぇ魔力が漏れ出して、周りの木が勝手に進化し始めてるらしい」


 その噂を、酒場の隅で苦虫をつぶしたような顔で聞いている集団がいた。 勇者アルディス一行だ。


「……神の果実だと? くだらん。どうせ無能な鑑定士が、珍しいだけの果物を大げさに騒いでいるだけだろう」


 アルディスは苛立いらだちまぎれに、卓を叩いた。 今の彼に必要なのは、低下し続けるステータスを補う「劇薬」だ。


「アルディス、でも本当なら……。もしその果実が手に入れば、私たちの不調も治るかもしれないわ」


 聖女セシリアがすがるように言う。 彼女の魔力回復速度は、アリスという「予備」を失ってから全盛期の十分の一以下まで落ち込んでいた。


「フン、主が怪物だろうが神だろうが関係ない。俺は選ばれし『勇者』だぞ。正義のために、その果実を献上させる権利がある」


 アルディスは、腰の聖剣を握りしめた。 レインがいなくなり、適切な『メンテナンス(デバッグ)』が行われなくなった聖剣は、その輝きを曇らせている。だが、傲慢ごうまんな勇者はそれに気づかない。



 一方、その頃。 世界の境界、座標NULLの「庭」。


「よし、アリス。今日はこの包丁で、美味いもんを作ってやるからな」


 俺の手元にあるのは、先ほど石ころから生成した『オリハルコン製の包丁』だ。 適当に設定を盛ったせいで、空気を切るだけで「空間そのものが裂ける」ような異音がしている。


「レイン様……その包丁、見ているだけで吸い込まれそうです。アルディス様の聖剣よりも、ずっと……」


「これか? まあ、ちょっと『鮮度維持』と『概念切断』を最大値にしすぎたかもしれないな。でも、包丁なんて切れてナンボだろ」


 俺は庭で収穫した、魔力が凝縮された肉の塊をまな板に乗せた。 包丁を軽く当てる。 力を入れるまでもなく、刃は肉の分子構造を無視して、滑らかに吸い込まれていった。


「……よし、完璧だ。これでアリスに、世界一のステーキを食べさせてやれる」


 俺が数秒で叩き出したこの「包丁」は、表層世界の常識では「神の盾さえ一撃で粉砕する究極の魔剣」に分類されるものだ。それをただの調理器具として、俺は当たり前のように火にかけた。


「……レイン様のお料理、私、一生ついていきます!」


「はは、大げさだな。ほら、焼けたぞ」


 香ばしい匂いが庭を満たす。それは、自分たちこそが世界の中心だと信じている勇者たちが、暗い酒場で強奪の計画を立てている場所から、わずか数キロ先の出来事だった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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