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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第2章:管理者の箱庭と、捨てられた予備聖女の覚醒
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神の果実を「食べカス」として捨てたら、周囲の生態系が書き換わった件

 アリスの再設定を終えた俺は、猛烈な空腹を感じていた。 管理権限をフル稼働させたせいか、消費リソースが激しかったらしい。


「アリス、朝飯にしよう。……といっても、まだ何も植えてなかったな」


 俺は庭の適当な土壌に指を触れる。


《環境設定:土壌ランクを「神域」へ変更》

《オブジェクト生成:世界樹の苗(食用・低糖質カスタム)》

《プロセス:成育時間を9999倍に加速》


 一瞬で、俺たちの目の前に黄金の果実を実らせた巨大な樹が出現した。


「レイン様……これ、伝説の『天界の黄金リンゴ』に似ていますが……それよりずっと、神々しい光を放っています」


「ああ、ちょっと設定を盛りすぎたかもしれない。まあ、ただの朝飯だ。食べてみな」


 もぎたての果実をアリスに渡す。 彼女が一口かじると、ぱぁぁ……と背中の光の翼が一段と強く輝いた。


「おいしい……! レイン様、一口ごとに、魂の形が書き換わっていくような……そんな感覚がします!」


「大げさだな。……うん、まあ、確かに勇者パーティ時代に食ってたカビ臭い保存食よりは100倍マシか」


 俺はリンゴを半分ほど食べ、芯を「ポイッ」と庭の境界線……つまり、通常の森との境目あたりに放り投げた。 管理者領域(NULL)の外では、それがどれほどの影響を及ぼすか、その時の俺は深く考えていなかった。



 一方その頃、森の中。 王国でも指折りの実力を持つAランク冒険者パーティ「森の静寂」は、戦慄せんりつしていた。


「……リーダー、見ろ。なんだ、これは」


 彼らが発見したのは、森の地面に転がっていた、「食べかけのリンゴの芯」だ。


「おい、冗談だろ……。この食べカスから放たれる魔力量、うちの国が保管している聖遺物を軽く超えてるぞ」


「リーダー! 周りを見て! この芯が落ちた場所を中心に、枯れていた大樹が次々と精霊樹に進化してるわ! ありえない、生態系が上書きされてる!」


 冒険者たちは、震える手でその「芯」を布に包んだ。 彼らにとって、それは一国の運命を左右するほどの超高純度魔力源。 それを「食べカス」として捨て去るなど、神か、あるいはそれ以上の存在の仕業に他ならない。


「……すぐにギルドへ報告だ。この森には、とんでもない『何か』が住み着いているぞ」



 同じ頃。 森の反対側で野営していた勇者アルディスは、吐き出しそうになっていた。


「……っ、なんだこの肉は! 腐ってやがるぞ!」


「仕方ないじゃない! レインがいなくなってから、アイテムボックスの中の『時間停止パッチ』が切れたみたいなのよ!」


 聖女セシリアが、空腹と苛立ちでヒステリックに叫ぶ。かつてレインが、自身の持つ『鑑定』や『工作』スキルを限界まで酷使し、保存食の劣化を防ぎ、武器の磨耗まもうを深夜にこっそり手入れしていたことなど、彼らは夢にも思っていない。


「クソッ、水も泥臭いし……! 腹が減って力が出ねえ……!」


 アルディスは、石のように硬くなったパンを無理やり口に押し込む。 そのすぐ側で、自分たちが捨てた「スペア」と「荷物持ち」が、神の果実を頬張ほおばって優雅なティータイムを楽しんでいることなど、今の彼らには想像すらできなかった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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