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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第2章:管理者の箱庭と、捨てられた予備聖女の覚醒
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規格外の再設定(デバッグ)――ただの枝でも、俺が望めば概念武装だ

「……アリス。正直に言う。パーティにいた頃の俺は、君を『人間』として正しく認識できていなかった」


 俺の言葉に、アリスは伏せがちだった瞳をゆっくりと上げた。


「アルディスが、君に強力な【認識阻害】をかけていたんだ。君を人間ではなく、ただの『自律型魔力ポーション』だと、俺たちの脳に誤認させていた……」


 だから、当時の俺は、アルディスの後ろでボロ布を被ってうつむく彼女を、ただの重い『荷物』だとしか思わなかった。自分の権限がロックされていたとはいえ、見抜けなかったことが悔やまれる。


「いいんです、レイン様。……私はただの『予備』。誰の記憶にも残らないのが、私の仕様しごとでしたから」


 アリスが自嘲気味に微笑む。その「仕様」という言葉が、俺の胸を刺した。


「そんな悲しい仕様、俺が今ここでデリートしてやる」


 俺はアリスの前に立ち、空中に管理ウィンドウを展開した。アリスのステータスは、勇者たちの身勝手な負荷によって真っ赤なエラーを吐き出している。


《管理者権限:リミッター解除》

《個体名:アリス――全デバフを消去し、最適化を実行》


 俺がウィンドウをスワイプした瞬間、アリスを縛っていた黒い呪いのようなオーラが霧散した。代わりに、彼女の体内からあふれ出したのは、神々しいまでの純白の魔力だ。


「……あ、あったかい。レイン様、私……体が、すごく軽いです……!」


「仕上げだ。アリス、これを持て」


 俺は足元に落ちていた、何の変哲もない「ただの木の枝」を拾い上げ、即興でコードを書き換える。


【アイテム:デバッグ・ロッド(仮)】

【ランク:測定不能(世界理外)】

【効果:触れた対象のバグ(敵対判定)を物理的に消去(消滅)させる】


「レイン様、これは……?」


「試しに、そこの『バグで暴走した岩』を叩いてみてくれ」


 アリスがおずおずと、木の枝で巨大な岩に触れる。 ――直後。 爆音も衝撃もなく、数トンはあろうかという岩が、まるで最初から存在しなかったかのように、サラサラの光のデータとなって消滅した。


「……えっ? あ、あの……消え、ました……?」


「ああ。今の君なら、世界を滅ぼす魔王だろうが、その枝一本で『修正(削除)』できる」


 アリスのボロボロだった法衣が、俺の権限譲渡によって白銀のドレスへと変化した。背中には、かつて引きがされた傷跡を覆うように、透明な光の翼が羽ばたいている。


 アリスは、杖を胸に抱きしめ、深く、深く頭を下げた。


「……レイン様。私を……『アリス』にしてくれて、ありがとうございます」



 一方、その頃。勇者アルディスは、街道で顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていた。


「おい、セシリア! 回復が遅いぞ! 何をもたもたしている!」


「な、何よ! 私のせいじゃないわ! 魔力が……全然足りないのよ! いつもなら勝手に補充されるはずなのに!」


 メイン聖女のセシリアが、必死の形相で叫び返す。 アルディスたちはまだ気づいていない。


 自分たちの「無敵」を支えていたのは、自分たちの才能などではなく、レインが裏で行っていた『環境調整』と、アリスから搾取していた『無限の魔力』だったということに。


 そして今、その両方が、彼らの手の届かない【座標:NULL】へと消えたことを。


「クソッ……! あの予備の女、どこへ行きやがった! 探し出せ! 捕まえて、また馬車につなぎ止めてやる!」


 アルディスの怒号が森に響くが、その体は、自分でも気づかぬうちに、ただの「レベルの高い一般人」程度まで弱体化していた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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