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勇者は、過去を切り捨てる
アルディスは言った。
「弱い者は、守れない」
かつての仲間を、
切り捨てる判断。
正義ではない。
だが、彼にとっては選択だった。
俺は、それを止められない。
止める権限が、ない。
胸の奥で、焦燥と無力感が渦巻く。
どんなに願っても、手は届かない。
夜。
街の灯りが静かに瞬く。
その光のひとつひとつが、俺の手を離れて独りで輝いている。
見下ろす視界は、かつて自分が作った世界の一部。
でも、もう俺の管理下ではない。
《管理者権限:制限中──介入は僅かに留まる》
《世界自律度:上昇──動きは、もはや俺の手に届かない》
完璧じゃない。
だから、世界は続いていく。
小さな決定、偶発的な事件、勇者や市民たちの選択。
すべてが絡み合い、予測不能の未来を紡ぎ出していく。
――ここからが、本番だ。
胸に残る重さを抱えながら、大きく息を吐く。
世界は、俺なしで動き出した。
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