第六話:全艦、集結
海を越え、太平洋の水平線が広がる中、護衛艦は真珠湾へと進む。
港が近づくにつれ、雄介たち四人の目は次第に大きく見開かれた。
「……なんだ、あれは……」雄介の声が思わず漏れた。
眼前には、想像を超える規模の艦船群が整然と停泊していた。
米国の空母二隻、フリゲート艦四隻。
英国も空母一隻、中国も空母一隻。
さらに護衛艦が多数、総勢十五隻の艦隊がまるで鋼鉄の都市のように湾内を埋め尽くしている。
釜生が口をぽかんと開け、声が震えた。
「……これが……本当に同盟艦隊かよ。港が全部埋まってるぞ……」
伊丹は双眼鏡を取り出し、艦名や艦型を確認する。
「米国のニミッツ級か……フリゲートも最新型。英国も中国も……こいつらが一堂に会するなんて……」
亜弓は唇を噛み、胸を高鳴らせながら呟く。
「……こんな艦隊に混ざるんだ。私たち、ほんとうに……行くのね」
雄介は艦隊を見渡し、鼓動が速くなるのを感じた。
「……凄すぎる……でも、負けてたまるか」
釜生が雄介の肩を叩き、笑顔を見せる。
「おう、俺たちの”たいほう”もいるしな。負けてる場合じゃない。俺たちはここで何かを掴むんだ」
伊丹も拳を軽く握り、決意を固める。
「戦力の桁は違うが、俺たちの任務は確実にやり遂げる。それだけだ」
亜弓は小さく頷き、凛とした表情で空を見上げる。
「未知の南極……私たちの心も、試されるのね」
雄介は深く息を吸い込み、胸の内で闘志を燃やした。
(よし……俺たちの出番だ。父さん、俺たちが答えを見つけてくる)
四人の背後で《たいほう》の旗が風にはためき、太陽に反射する鋼鉄の甲板が輝いていた。
その光景は、彼らの決意をさらに固くする――まさに、歴史的な多国籍艦隊に挑む若き魂たちの序章であった。
多国籍艦隊の編成・隊列
朝靄の残る真珠湾。
港内を埋め尽くす鋼鉄の巨艦群。艦隊は完璧な戦闘編成を取って停泊していた。
米国艦隊は中心に空母二隻――ニミッツ級の《USSカール・ヴィンソン》《USSロナルド・レーガン》が並び、その左右をフリゲート艦四隻が取り囲む。
レーダーや戦闘システムが湾内の空気を切り裂くように配置され、まるで海面に浮かぶ要塞都市のようだ。
英国艦隊は空母を中心に、護衛艦数隻が護衛し、遠巻きに停泊。
中国艦隊も空母一隻を中心に護衛艦で固められている。
総勢十五隻という前代未聞の規模に、湾内の水面がまるで鋼鉄の大河のように見える。
各艦は、陸上基地からの支援無しで即応戦闘が可能な態勢にあり、その威圧感は雄介たちの胸を圧し潰すほどだった。
他国艦長との初対面・緊張感
港に上陸すると、各国の艦長が迎えに現れた。
米国空母艦長は、白髪混じりの眼光鋭い中佐で、こちらをじっと観察する視線に雄介は息を飲む。
英国空母艦長は背筋の伸びた中年紳士で、礼儀正しくも鋭い眼光を投げかける。
中国艦長もまた、無表情ながら威圧的なオーラを放っていた。
出原艦長が四人を紹介する。
「こちらが、風見雄介、釜生人徳、蒲池亜弓、伊丹啓介――本艦の特別任務参加者だ」
各国艦長は一瞥し、無言で頷く。
四人にはその目線が、評価と同時に試練の宣告のように感じられた。
雄介は釜生の肩を軽く叩き、心の中で覚悟を固める。
(ここから先は、俺たち次第だ……)
出発前夜の士気高揚
夜、艦内の宿泊区画。
四人は甲板の隅に並び、星空を仰ぐ。
釜生が胸を叩き、興奮気味に言った。
「明日だぞ……南極だ、未知の渦だ、誰も知らない海域だ! 俺たちが最初の証人になるんだ!」
亜弓も笑顔を見せ、拳を握る。
「怖いけど……胸が高鳴るわね。こんな任務、滅多にない」
伊丹は双眼鏡を肩に掛け、甲板を見渡しながら言った。
「鋼鉄の島に乗って、世界の最前線に立つ……考えただけで燃える」
雄介は静かに頷き、夜空の星々を見上げる。
(よし……俺たちの力を、信じる。父さん、俺たちが答えを見つけてくる)
甲板の風が四人の髪を揺らし、波の音が低く響く。
未知の任務への緊張と興奮、そして仲間との絆が、彼らの胸に強く燃え上がっていた。
南極という未知の大地へ向かう、若き魂たちの航海は、まさに今始まろうとしていた。




